ZEROCO、食材の独自鮮度保持技術で日本のおいしさを世界へ「日本は食業界のGAFAになれる」
低温高湿で食材の鮮度を保持し、独自技術で日本の食業界への貢献を図る
試食して驚いた「ZEROCO」の実力、長期保存後の方がおいしい!?
実際、「ZEROCO」で長期間保存した食品を試食した。まずは、アボカド。保存期間が短い果物のひとつだが、冷蔵庫で9日間保存したものと、「ZEROCO」で62日間保存したものを並べて食べてみた。冷凍せず2カ月寝かせたアボガドだったが、鮮度はまったく問題なし。ほのかに通常保存のものより甘味が感じられ、「ZEROCO」アボカドの方がおいしかった。
続いてはジャガイモのメイクイーン。もともとジャガイモは長期保存が可能だが、冷蔵庫で30日間保存したものと、「ZEROCO」でなんと142日間保存したものを蒸して、食べ比べた。こちらも、鮮度は問題ないうえ、「ZEROCO」でメイクイーンの方がうまみを感じた。
「『ZEROCO』仕込みのアボカドをサラダに使ったり、『ZEROCO』仕込みのジャガイモでカレーを作れば、まったく味が違います。うまみが増しているので、おいしくなるのです」(楠本氏)
その後も、「ZEROCO」で2カ月保存したスナップエンドウとレタス、サニーレタス、パプリカや、「ZEROCO」で半年保存したビーツ、7カ月保存したニンジンなどを食べたが、すべて新鮮で歯ごたえもシャキシャキ。パプリカの甘味は明らかに増しており、みずみずしいのに驚いた。
「ZEROCO」で予備冷却した材料で料理を作り、そのまま冷凍したものもいただいた。ご飯を冷凍すると白く固まった状態になるものだが、巻き寿司はなんとコメが半透明のままだった。ノリの感触もぱりぱりで、もちろん味もおいしい。
もっとも驚いたのは、刺身。シマアジとヒラメを10日間「ZEROCO」で保存し、冷凍したものを解凍して提供していただいたのだが、昆布締めしたのかというくらいうまみが増していた。魚は寝かせるとおいしくなるとはいわれているが、長期間冷凍しているのにこのインパクトは凄い。理由は「ZEROCO」だからこその保存方法にあった。
「魚を獲ったら、はらわたを取るのが一般的です。魚の胆のうは苦玉というのですが、すぐに細胞膜が壊れてしまいます。すると、苦味が全身に広がってしまい食べられなくなるのです。このリスクを避けるためにはらわたを取るのですが、『ZEROCO』を使えば冷凍しても細胞が壊れないので苦玉がつぶれません」(楠本氏)
実際にとてもおいしいうえ、はらわたを取る必要がないなら漁師にとっても手間が省ける。また、漁船が漁に出るときには魚を冷却するために大量の冷水と氷を積んで海に出るが、昨今はエネルギーコストの高騰が問題になっている。それであれば、漁船に「ZEROCO」を搭載すればコストの削減も狙えるだろうという。
「日本の食は世界から見ると、とてもおいしく健康的で、サステナブルだと高く評価されています。そんな日本の食文化が発展し、労働人口が減っても経済に貢献し、文化的なプライドを保つためには、儲からなければいけません。今、地方での仕事や農業・漁業の仕事に従事したいという若い人たちがとても多いです。テクノロジーがその起爆剤になることはなんとなくわかってはいるものの、実践的なプラットフォームやソリューションがありません。そこを育てていく必要があるのです」(楠本氏)
ビジネスという点でいえば、「ZEROCO」を使うことで、在庫をより長期間持てるようになることもポイントだ。例えば、レタスの収穫期には台風が起きることが多く、作物に被害が出る前に収穫を早めるケースがある。しかし、収穫するとすぐに売るしかなく、そのときマーケットに需要がなければ捨てることになってしまう。そうした際に「ZEROCO」を利用して保存できれば、そのままの鮮度で長持ちさせることができる。試食したレタスは6カ月長期保存したものだったが、1~2か月保存できるだけでも大きな利益貢献になるという。
リンゴなら甘くするために摘果といって、7~8割の果実を切り落とし、廃棄している。これも「ZEROCO」に入れて保存すれば、甘くなり、出荷できるようになるという。そうなれば、フードロスの削減に寄与するうえ、ビジネスチャンスにもつながる。
サプライチェーンとしては、出荷調整ができるのでオペレーションが楽になる。これまでは、収穫時点からどんどん鮮度が落ちるので、急いで配送しなければならなかったが、「ZEROCO」に保存しておいて、無理のないタイミングで運べるようになるのだ。我々消費者としても、旬の時期でなくても旬の味を楽しめるようになるというメリットもある。
「シェフはレストランというひとつの場所に留まるのが仕事だと思われていますが、『ZEROCO』がある施設に行き、おいしいものを作って冷凍し、世界中に売りにいけばいいんです。日本の寿司がそのままのクオリティで海外輸出品になることもできるでしょう。在庫を持つことができれば、農業・漁業ももっと儲かるといえるようになります」(楠本氏)