AIで体を可視化 スポーツやリハビリ業界を変革するSportipがB Dash Camp 2023秋優勝
B Dash Camp 2023 Fall in Fukuoka Pitch Arena Final
2023年11月8日から10日の3日間、福岡市でスタートアップ業界最大級のカンファレンスイベント「B Dash Camp 2023 Fall in Fukuoka」が開催。3日目にはスタートアップピッチ「Pitch Arena Final」が行なわれ、2日目の「First Round(予選)」に出場した15社から通過した、7社が登壇した。ファイナルではコーチングからペット、AI、情報セキュリティまで幅広い業界のスタートアップが出場した。
優勝は株式会社Sportip、準優勝は株式会社S’moreに決定。
優勝 Sportip
準優勝 S’more
野村賞 S’more
ノバセル賞 Sportip
AGS賞 Sportip
PERSOL賞 mento
バクラク賞 PICK
NOT A HOTEL賞 PICK
キャスター賞 PICK
以下、ピッチの概要を紹介する。
筑波大学発AIで運動指導をサポートする「Sportip」、株式会社Sportip
Sportipは誰でも優秀な指導員を目指せるAIアシスタント「Sportip」を展開している。同社は筑波大学発で、国内屈指のスポーツサイエンスと世界トップクラスのAIで、超高齢社会の課題を解決するインパクトスタートアップだ。
リハビリやスポーツ指導の現場では、専門的な知識が求められる一方で、指導員の数は不足している。「Sportip」はAIで運動指導者をサポートすることで、個人に最適な指導を届けるアプリだ。「Sportip」の特徴はスマートフォンで撮影をするだけで、体の問題点や筋肉の状態を一瞬で可視化できることだ。
また問題点を放置した場合のリスクも提示し、個人に合わせた運動メニューが自動提案される。今後は蓄積した生体データを活用し、ヘルスケア業界のオールインワンSaaSを目指す。さらに同技術を活用し、自社で無人のスポーツジムも出店予定だ。
愛犬認証の「Nose ID」やペットデータの有効活用、株式会社S’more
S’moreはデータを活用したペットのエコシステム「Nose ID」を展開する。ペット一頭あたりの平均飼育費用は5年で約2倍に伸び、企業は高付加価値化に取り組んでいる。しかし、ペット市場の半数を占める犬の場合でも、サイズや年齢、犬種により異なるニーズを捉えることは難しい。飼い主側も愛犬に最適なサービスを見つけるのが困難な状況だ。
ペット業界のデータ活用が進まない理由には、中小事業者が多いことによるDXの遅れや競争意識が強い業界の特性などがある。S’moreは企業の利益になり、飼い主にも役立つサービスとして、鼻のシワで愛犬を認証する迷子対策サービス「Nose ID」を開発した。
「Nose ID」で蓄積したデータを活用し、企業のマーケティングや広告宣伝を支援するビジネスモデルだ。今後は個体データに加え、行動データやPOSデータの取得も進め、ペットデータのプラットフォーマーを目指す。
高単価商材を扱う店舗販売員向け効率化ツール「coco」、株式会社coco
cocoはカーディーラーや住宅販売など、高単価の商材を取り扱う店舗接客スタッフ向けに、メッセージサービス「coco」を展開している。顧客にとって数百万円の買い物となるにもかかわらず、接客が属人化しているため、納品や入金、問い合わせ対応時にトラブルが頻発にしているという。
店舗はさまざまなツールを導入して業務改善を図るが、ツールの乱立により業務がより複雑化しがちだ。cocoは接客スタッフが必要なツールを1つにまとめる業務用アプリ「coco」を開発した。「coco」ではLINEや問い合わせフォームなど、さまざまなチャネルから届くメッセージを一括管理し、スマートフォンで即座に対応することをサポート。
また蓄積されたやり取りから自動的に顧客リストを生成。「受注から1年後」など特定の顧客に向けたメッセージの一斉送信も可能だ。今後は決済機能の追加や医療、金融などの高単価で接客を伴う他業界にも展開し、グロースを目指すという。
管理職を支えるビジネスコーチングプラットフォーム「mento」、株式会社mento
mentoはビジネスコーチングプラットフォーム「mento」を展開している。とある調査によると、2023年に企業が抱える課題のトップは「管理職の負担が重すぎる」ことだという。mentoはこの課題を、一人ひとりに深く向き合うコーチングとAIにより解決する。
「mento」の特徴は、集合研修よりも個人にフォーカスでき、エグゼクティブコーチングより多くの人に利用してもらえる点だ。伴走するのは200名の中から管理職人材の性格と抱えている課題に合わせて選ばれたプロコーチだ。月額制の受け放題制であるため、相性が悪い場合は別のコーチに依頼できる。
またコーチングセッションは、AI議事録機能により自動で可視化、構造化される。さらに一人ひとりの思考や行動の変化を分析したレポートもAIで自動作成される。mentoは今後、目標設定や評価といったマネージャーの必須業務を支えるプラットフォームを目指す。
不動産取引に特化した電子契約サービス「PICKFORM」、株式会社PICK
PICKは不動産取引に特化した電子契約サービス「PICKFORM」を展開している。代表の普家氏は、自身が住宅、不動産販売員だった時代に、紙が多く複雑な契約業務に苦労した経験を持つ。宅地建物取引業法により、既存の電子契約サービスを利用するハードルも高いという。
PICKは不動産取引に特化した電子契約サービス「PICKFORM」を開発した。ITアレルギーの強い人材でも簡単に使える仕様だ。また、宅地建物取引業法への適法対応が担保されたサービスとして、国土交通大臣認定を受けている。
商習慣にも対応している。不動産の売買契約においては、10人以上の署名が必要なケースも珍しくないが、誰からでも好きなタイミングで署名できる同時署名機能を搭載し、特許も出願している。今後は契約にフォーカスしたサービスを軸に、金融、セールス、建設領域などの機能を拡充することでグロースを目指す。
AIとのマッチングアプリ「samansa」、サマンサ株式会社
サマンサはAIと恋愛できるマッチングアプリ「samansa」を展開する。同社独自の調査によると日本には「恋愛したいが、できない人」が2800万人いるという。また、既婚者の約半数が恋愛したいと思っているというデータもあるという。
「samansa」を利用することで、誰でも半永久的に恋愛できる。サービスの仕様は一般的なマッチングアプリと同様だ。好みの相手にアプローチし、マッチすればメッセージのやり取りができる。
「samansa」の特徴は相手となるAIの人間らしさだ。たとえば、会社員のAIなら日中は連絡が取れない、相手を傷付けるような発言をすれば返信がないといったこともある。今後はゲームやギフト交換、健康管理などの機能を実装し、生涯寄り添うパートナーと出会えるアプリを目指す。
社内規定の管理と順守をサポートする「SecureNavi」、SecureNavi株式会社
SecureNaviはウイルス対策やVPNとは異なる、社内規定管理やリスクアセスメント、監査といった、いわゆる文系のセキュリティ領域で事業を展開する。同領域の課題はWordやExcelによる非効率かつ複雑なセキュリティ管理だ。Wordにまとめられた数十以上の社内規定を厳守するのは難しい。
「SecureNavi」にWordの社内規定をアップロードすると、規定の中身を自動解析し、規制の一覧画面が作成される。また、アップロードした社内規定が、法律などの規制をどの程度カバーしているのかも可視化する。カバーできていない項目があれば、おすすめの社内規定文言も自動でレコメンドする。
さらに社内規定を守るプロセスにも対応している。社内規定にひもづくタスクを設定すれば、担当者はTO DOリストをこなす形で、社内規定にもとづく業務の実行を促す。今後は蓄積した企業のセキュリティデータを活用し、経営者用や監査用、取引先用サービスなども手掛けるコンパウンドスタートアップを目指す。