起業家支援、イノベーション創出 関係者が語る堺市事業の現在地点と未来
堺市イノベーション創出の支援者が集結
提供: NAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアム、堺市
内閣官房が「スタートアップ育成5か年計画」を策定するなど、日本国内のスタートアップを大幅に増やすための戦略とロードマップが示される中、継続的に事業を進める堺市では、めざす都市像として「未来を創るイノベーション都市」を市の基本計画として掲げ、その創出につながる事業を2021年から2022年度の間に30件以上生み出してきた。また、2025年までに100件の事業創出を目標に掲げており、その後押しをする複数の支援プログラムやイベントが計画されている。2023年8月1日にはそれらの運営に携わる関係者が集まるラウンドテーブル・ミーティングを開催し、それぞれの活動について情報共有し、堺のイノベーションの未来について議論を深めた。ここではミーティングの様子から堺市の各取組を紹介する。
アイデアの実装から事業化へ進める具体的な支援策を用意
堺市では変化する社会経済情勢にあわせた持続可能な都市経営を将来にわたって推進するため、2021年度から2025年度にかけて取り組むべき方向性を「堺市基本計画2025」として示している。その中でめざすべき都市像として「未来を作るイノベーション都市」を掲げ、4つの基本姿勢と5つの重点戦略を設けている。
さらに成長ゾーンとして、堺商工会議所やインキュベーション施設のさかい新事業創造センターS-Cube(以下、S-Cube)があり、大阪公立大学や産業支援機関が集中する中百舌鳥駅を中心としたエリアを中百舌鳥イノベーション創出拠点に位置付けている。
堺市は古くから製造を手がける中小企業が集積していることから技術職が強い印象がある。だが、それ以外の分野にも幅広く注力しており、イノベーションの方向性も地域や社会課題の解決から新たな価値を創造し、住民が求めるサービス、プロダクトなどを提供することに力を入れようとしている。
具体的なKPIとして、2021年から2025年の間にイノベーション創出につながる事業数を100件に増やすことを目標としており、2022年までに34件の実績を出している。対象としては事業規模や分野にこだわらず、IPOをめざす事業者だけでなく、他地域からのイノベーターを呼び込み、学生起業家から街のパン屋さんまで社会課題を解決するプロジェクトの創出に取り組む人たちまで幅を広げる。
堺市産業振興局産業戦略部長の橋本隆之氏は「KPIは着実に積み上がっており、今後さらにイノベーションに取り組もうとしている人たちを増やしていきたい」と意気込みを述べた。
司会進行役を務める堺市の中百舌鳥イノベーション創出拠点担当課長の西浦伸雄氏は、「これまで新規事業の創出は売上や利益に重点を置いた支援を行ってきたが、今回のイノベーション創出については、地域に何を起こしていくかというところに重点を置いている」と語る。そうした活動ができるのは、堺市はビジネスインテグレーションで20年近く歴史があり、S-Cubeでは実証実装に向けて手堅く事業を育てることを元々メインの事業としてきたことから、支援ノウハウが蓄積されているというのがありそうだ。
例えば支援の内容だが、社会課題解決型の事業をちゃんとビジネスとして成り立つようにするプログラムの実施から、急成長する事業者の資金調達や事業成長を見据えて支援する本格的なものまで用意されている。また、堺市では創業者の資金融資を支援する制度や堺市内にオフィスを設ける場合の家賃補助もある。