ミュージックビデオから怪獣迎撃まで多種多様過ぎる3D都市モデルの活用。夏のLT祭りで花開いた注目の10作品
「3D都市モデル PLATEAU LT 04」 レポート
都市デザインとPLATEAU〜3D都市モデルを使ってみた〜(金城正紀)
大学の土木系学科でCADなどを教えているという金城氏は、「使う側の視点から見た3D都市モデル」について発表した。PLATEAUがリリースされる前にどんなことをしていたのか、そしてリリースされた後にどう便利になったのか、長年建築系の仕事に携わってきた金城氏だからこそ語ることができる内容だ。
PLATEAUがなかった時代のコンペ資料として金城氏が示したのは、地形図から少しずつCADで建物をトレースして作成したというもの。数年前ですら、地形から等高線をなぞってひたすら地形を起こし、建物も等高線に合わせてGoogle Earthで調べて作成していたという。以前はここまで労力をかけて3Dモデルを作成していたのだ。それを変えたのがPLATEAUの登場だ。たとえば、1000分の1の模型を制作するとなると数カ月の作業だが、PLATEAUを使えば模型を作らずにイメージを伝えることができる。
制作を容易にするだけではない。建築分野における3Dモデルが果たす役割も変化している。建築設計において3Dモデルは2Dの設計図に対してイメージを補完する役割だったが、PLATEAUの3D都市モデルで日照シミュレーションを行うなど、建築に伴う合意形成に有効な活用ができるようになったと金城氏は指摘する。あるいは、再開発における街のシミュレーションをVR空間に作成すれば、VR上で自分がその中を歩いて疑似体感をすることも可能だ。
金城氏は、PLATEAUデータは建築設計の分野での本格的な活用を進めていくため、ピロティ―や庇などのディティールを有したLOD3以上のデータの拡大に期待していると述べた。
保健師がPLATEAUを使ってみたら地域の健康課題が見えた(堀池諒)
もともと保健師だったという堀池氏は、現在は大学で公衆衛生看護学分野の助教をしている。堀池氏は「地域を分析して、それぞれの地域にどんな健康課題があるのかを抽出し、対人支援と政策立案も展開する、全ての住民が健康になることが目標の保健師にとって、PLATEAUはとても相性がいい」と語る。
例として堀池氏が提示したのは、災害対策として徒歩でどこまで避難できるかをQGISで解析したもの。この到達圏の線は建物の建築年や木造か非木造かといった情報を使うことでも変わっていく。これにPLATEAUを重ねると、津波に沈んでしまう建物と沈まない建物を明確にできる。人工呼吸器が必要な患者のデータを合わせて、避難計画を作ることもできる。
また、PLATEAUの建物用途を使って街の構造がつかめることは大きなメリットになる。たとえば商業系の施設が密集しているエリアにポツンと住宅がある。もしここに独居の高齢者がいたら十分な介護サービスを受けられていないかもしれないと想像できる。あるいはフロア別の用途から、医療施設はあるが2階ではコロナなど感染症対応には動線が分けられないといったことがわかる。
なお、堀池氏がいまPLATEAUのデータと重ねて活用しているのは人工衛星「しきさい」が観測した地表面温度のデータだという。これによって何がわかるかというと、たとえば熱中症対策をより危険度の高いエリアごとに呼びかけるなど、効率的な働きかけが可能になる。
以上、10組のLTがあったが、映像作品から現実社会での活用まで、PLATEAUがさまざまな領域で広く活用されていることがわかる。まさにLTの醍醐味というところだ。これからハッカソンイベントに参加する、PLATEAU AWARDへの応募を考えているという人には、ぜひアイデアの参考にしてほしい。