ミュージックビデオから怪獣迎撃まで多種多様過ぎる3D都市モデルの活用。夏のLT祭りで花開いた注目の10作品
「3D都市モデル PLATEAU LT 04」 レポート
ニコニコ超会議2023で発表した仏説阿弥陀経remix(河野円)
「サイバー南無南無」というクリエイターグループ代表の河野氏が発表したのは「仏説阿弥陀経 サイバー南無南無remix」という映像作品。
そもそも「サイバー南無南無」は仏教美術とテクノロジーアートの融合を目指すクリエイター集団。仏教の教えをクリエイターとしての解釈で「現世をいかに楽しく、いい感じに生きるための哲学みたいな感じ」にとらえた作品だ。その中で、2023年のニコニコ超会議に向けてPLATEAUと仏教美術を組み合わせた作品を作ることにした。
いかにも宗教美術のようなものを作るよりも、今のこの現代がカッコよく見えるような、極楽浄土に見えるような映像演出ができないかと考え、その舞台としてPLATEAUを活用したという。この作品もぜひ映像を確認してほしいが、曼荼羅的な、しかも奥行きのある空間が描かれている。この奥行き感はPLATEAUならではのものだと河野氏は述べている。
久田氏は、音楽とその世界観を伝える何かを作ろうとしたとき、3D都市モデルを組み合わせるという使い方にピンとくる人がいる、そのあたりのナレッジはこれから生まれてくるのだろうと述べた。
PLATEAUモデルを用いた山梨県におけるリニアと空クルのある未来(LuvFan、リンゴップル)
山梨県で会社員をしているLuvFan氏、リンゴップル氏の二人が発表したのは、山梨県を盛り上げるコンテンツ。山梨県の観光を盛り上げるキーワードとして「リニア中央新幹線」と、大阪・関西万博で運航が推進されている「空飛ぶクルマ(空クル)」をバーチャルの世界で表現した。
リニア中央新幹線も空飛ぶクルマもいずれも近い将来に現れる"未来の乗り物"であり、山梨県で双方の誘致が実現したときにどのような未来が創造されるのかを描くことがテーマだ。加えて、山梨県には富士山がある。富士山を眺めながら甲府の中心街に空飛ぶクルマで着陸する、そんな未来の交通手段を描きたいと考えたという。
役割分担としてLuvFan氏が乗り物のモデルを担当。画像検索でリニア中央新幹線を探し、「Blender」で3Dモデルを作成した。一方で、リンゴップル氏は地上側のモデルを作った。
作品ではリニア中央新幹線のスピードが体感できる仕上がりになっている。残念ながら富士山のモデルは配置できていないが、今後、ブラッシュアップしていく予定だという。二人とも3Dコンテンツに取り組んだのはほぼ初めてという状態でここまで作成したということに、久田氏も菅原氏も感嘆。初心者であってもPLATEAUを使うための素材や環境がオープンソースで提供されていることで、個人でもやる気になればできるということを示しているとコメントした。
PLATEAU×Unityによる高品質グラフィックのコツ(大下岳志)
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社の大下氏は、これまでまとまった情報がなかった「シンプルに見た目をきれいにするという観点でUnityでPLATEAUのデータを扱う方法」を紹介。作例として、Twitter(現・X)で公開した動画の制作過程を振り返りながら、そのノウハウを解説した。
使っているのはUnityのHDレンダーパイプライン(HDRP)。HDRPはリアルな表現に特化したレンダリング機能だ。このHDRPの機能のひとつ、Volume Frameworkで空間に対して直接、環境や撮影の設定を付加していくことで、魅せる映像表現にしていく。
作例では、Unityの最初のシーンにPLATEAUを配置した後は、ほぼすべてVolume Frameworkだけで仕上げている。モデルを配置したシーンに空や雲、カメラの詳細な設定などを定義していく。それだけで映像のクオリティが変わっていくのがVolume Frameworkのすごいところだ。
見た目のクオリティはアウトプットの中でも非常に大きな要素だ。何かプレゼンするにしても話が伝わりやすくなったりもする。今回のLTでも何らかの世界観の表現にPLATEAUが使われるという作品が複数あったが、今後はよりきれいに見せたいという需要が増えてくるだろう。ナレッジとして、映像表現の素材としてPLATEAUのデータを活用するノウハウが出てくることが期待される。
作例の制作過程を解説した動画はYouTubeで公開されている。