ミュージックビデオから怪獣迎撃まで多種多様過ぎる3D都市モデルの活用。夏のLT祭りで花開いた注目の10作品
「3D都市モデル PLATEAU LT 04」 レポート
PLATEAUのCityGMLをAPI化(ソウ)
続いて登場したソウ氏は、2023年度に入ってすでにPLATEAU関連イベントに2回登場しており、今回のLTで3回目だ。ソウ氏がこの日のLTで発表したのはPLATEAUの「CityGML」をAPI化したプロジェクトだ。
「CityGML」というPLATEAUが採用する国際標準規格のデータ形式を容易に使えるように、ウェブアプリに機能をまとめている。たとえばPLATEAUの3D都市モデルのダウンロードについては、G空間情報センターから自由にダウンロードできるようになっているが、「その手順が面倒」なのと「ダウンロードしたファイルの管理」が思う以上に煩雑だという。
その点、Web APIという形でダウンロード済みのデータを配信するという形にすることで使う際の利便性をぐっと高めることができる。さらに、アプリ上で必要な処理をノーコードで行えるようにする。たとえば、PLATEAUのデータをフィルタリングしてジオコーディングし、保存するといった処理をノーコードでプログラミングできる。
また、このプラットフォームは、開発したプログラムを共有し再利用できるようになっている。久田氏はコラボレーションツールとしての可能性について言及した。昨年のPLATEAU AWARD 2022に出した「情報加算器」をエンハンスしていった結果だとソウ氏は言うが、今度もさまざまな拡張を続けていくという。目下、ベータテスターや一緒に作ってくれる仲間を募集中とのこと。
PLATEAUを用いた熊本市中心市街地におけるバリアフリー情報の可視化(がちもと)
熊本を活動拠点にした技術コミュニティ「KumaMCN」の運営や崇城大学の古賀都市計画研究室の技術顧問として活動しているがちもと氏が発表したのは、まちづくりの研究におけるPLATEAUの活用だ。
その方法は、①熊本市中心市街地(59.48ha)を対象にバリアフリー整備状況を現地調査し、②調査対象となる建物・業種を選定、③現地調査を実施しGISデータに整理、④PLATEAUを用いて可視化する、というもの。現地調査は調査員9名で2022年11月11日〜13日に行い、対象は940棟のテナントビル、対象店舗数は4094件。次の調査項目に関して調べた。
・建物の入口の段差
・建物内のエレベーターの有無
・店舗の入口の段差の有無
・店舗内の多目的トイレの有無
・店舗内の授乳室の有無
・交通弱者が店舗を利用することができるか
PLATEAUによる可視化は、「建物内のエレベーターの有無」や「段差の情報」などを切り替えて表示できるようになっている。今後の展望として「現状のフェーズ1では建物単位での可視化だが、フェーズ2としてフロアの情報を追加し、フェーズ3として店舗内のすべてに拡大し、車椅子が通行できる通路幅があるかといった情報を詳細を調べてPLATEAU上に載せていく」などを考えているという。
調査結果のビジュアル化の効果は言わずもがなだが、3Dモデルによる可視化はより直感的で誰にでもわかりやすくなる。フェーズ2でフロアの情報が付加できれば、より有益な情報提示が可能だろう。
久田氏は、こうした情報を属性情報に戻せたら面白いのではないか、そのためにソウ氏の仕組みが使えるのではないかと述べた。「CityGML」にスキーマを作れたら、他の都市でもそれを使って情報を入れ、同様に表現することが可能になるだろう。
PLATEAUとモバイル端末によるスキャン等を活用した地域づくりの可能性(藤井友也)
兵庫県職員の藤井氏は個人の取組としてiPhone LiDARを使って地域情報の3D化を行っているという。きっかけは、誰でも地域の情報を容易に3D化できるというiPhone LiDARのおもしろさ。PLATEAUの3D都市モデルをiPhone LiDARで補完することで仮想世界の中に現実世界を持っていくことができるわけで、そのプロセスを含めて地域づくりに使えないかと考えたのだ。
たとえば、LOD2のデータにiPhone LiDARでスキャンしたデータを組み合わせる(上図、京都市のデータの活用例)。さらにiPhoneの動画から生成したフォトグラメトリのデータで少しテクスチャを付けてイメージを変える(下図、加古川市のデータの活用例)、VRプラットフォームにアップしてどうなるかを見る、などさまざまなことを試している。
今後の展開として藤井氏は、地域の人や大学生など若者を巻き込んで、デジタルを活用したまちづくりのワークショップに生かしていく、中高生への出前講座(地域学習)の学習ツールとして活用する、また再開発で変化していく街の風景を仮想空間に残していく(逆に仮想空間に新しい現実世界の街の情報を入れていくことで、地域の情報をアップデートしていく)、などを考えているという。
久田氏は自分がやりたいと思っていることを、丁寧に未来も含めて整理してもらったようだと大きく共感を示した。菅原氏も、一般の人がみんなで参画できるプロジェクトだとコメントした。