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帆船ドローンが自由に海上を行き来する持続可能な社会を目指して

次世代の省エネルギー輸送手段に挑戦するエバーブルーテクノロジーズ

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用途によって帆船型と電動型を使い分ける

 海上で長期間にわたって自動航行できる動力船はないが、ヨットであれば可能になると野間氏。推進力は風で賄い、電力は太陽光で賄う。さらには、水中にスクリューを付ければ、風を受けて移動することで水力発電も行える。

 研究機関関係者などからも期待されているそうだ。例えば、気象状態を知るために衛星写真でしか見ることができないような事象を「もっと間近で長時間、頻繁にデータ取得したい。帆船使えば可能かもしれない」といったような要望だ。動力船を使う場合、電池が切れたらそれでおしまいだからだ。

 もちろん、帆船は風次第で速度が変わるので、急ぎの用途であれば動力船のほうが向いている。エバーブルーテクノロジーズでは、帆船型と同時に電動型の水上ドローンも開発している。「簡単に言うと、帆船は長時間、低速で、電動型は短時間、高速といったイメージです。電動型のバッテリーも意外と持ち、最高速度35kmを出し続けると20分くらいですが、通常の航行であれば6時間以上の稼働が可能です。帆船型の場合だと10日間以上継続稼働できるので、うまく、使い分けてもらえればと思っています」

エバーブルーテクノロジーズ株式会社 代表取締役CEO 野間恒毅氏

 ドローンだからこそのニーズに監視もある。例えば、密漁監視だ。勝手にサザエなどを獲ったりしている人を見つけ、注意する業務があるのだが、いちいち人手をかけてガソリン代をかけていては割に合わない。そんな時こそ、海上ドローンが活躍する。また、ある企業からは施設周辺の海上警戒業務で使えないかという引き合いが来ているそうだ。さらに海洋資源の調査も、ドローンに水中カメラを付けて、遠隔から自動航行させることで手軽に行える。

 災害時には、例えばダムや川で土砂崩れが起きたとき、ドローンに水中ソナーを付けて水深をリアルタイムで計測し、浅くなっているところがあれば掘るという対策が取れる。実際に、こうした話もいくつか来ているそうだ。

 ちなみに、帆船が遅いという点は解決される可能性もあると野間氏。「半分ロマンなのですが、ヨットを水面から浮かせて走らせる『フォイリング』をやりたいと思っています。海の上に浮いていると接触抵抗があるのですが、その抵抗が意外と大きいのです。水中に翼を入れて進むと、船が浮上し、抵抗が10分の1ぐらいになります。今、人が乗ってフォイリングできるヨットの最高速度は時速100キロ。度肝を抜かれますよね。それをやりたいので、いろいろと準備をしています」

 帆船型と電動型のドローンは、動力は異なるものの、制御ユニットと操作するアプリケーションは共通となっている。既存のドローンの中には細かい設定項目が用意されており、練習が必要になるものもある。しかし、一般ユーザーのニーズはシンプルなので、活用方法はなるべくわかりやすくしなければならないと考えている。「“ここに行って”とGOボタンを押すだけ」というくらい簡単なインターフェースをあえて開発しているという。

 また、海上ドローンだけでなく、現在は陸上用のドローンの開発も行っている。あえて、陸のドローンにまで手を広げるのはなぜだろうか?

「実は、海上ドローンの開発すべてを海で実験するのは大変なので、陸でも行っています。そのため陸上でのノウハウもあるのです。陸上ドローンの商用化として、自動芝刈り機を考えていたのですが、アイデアを豪雪地帯である山形県の人に話したところ、それができるなら雪かきの負担を何とかしてほしいと言われました。確かに芝刈りより雪かきのほうが利用頻度が高く、日本は世界有数の豪雪国なので需要もあります。そこで、2023年の2月からPoC(概念実証)を行っており、良い結果が見えてきているので製品化に向けて開発を続けていきます」

everblue 除雪ロボ(プロトタイプイメージモデル)(画像提供:エバーブルーテクノロジーズ)

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