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ロボット、マイクロモビリティ、環境テックで社会課題を解決 北九州市合同デモデイ

北九州市が初の大規模スタートアップイベント「WORK AND ROLE 2023」レポート 2日目

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提供: 北九州市

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パネルセッション「H/Wスタートアップの未来戦略」

 本イベント3本目のパネルセッションは「H/Wスタートアップの未来戦略」がテーマ。パネラーは、Maker's Projectのメンターである株式会社マクアケ 共同創業者/取締役 木内文昭氏、株式会社Shiftall 代表取締役CEO 岩佐琢磨氏、株式会社ABBALab 代表取締役 小笠原治氏、モデレーターとして株式会社マクアケ 九州拠点責任者 セールス局マネージャー 宮田紗良氏が参加した。

(左から)株式会社マクアケ 九州拠点責任者 セールス局マネージャー 宮田紗良氏、株式会社マクアケ 共同創業者/取締役 木内文昭氏、株式会社Shiftall 代表取締役CEO 岩佐琢磨氏、株式会社ABBALab 代表取締役 小笠原治氏

 まず、今期のMaker's Projectの感想として、岩佐氏は「学生から熟練起業家まで幅広く採択されているのがよかった。層が厚くなった証拠であり、6年続けてきた成果」と評価。木内氏は「各チームもニーズが明確。誰かのために役に立ちたい、という顔が見えているのが素敵だと思いました」とコメント。小笠原氏は、「生駒さんは良い意味でずるい。『TATAMEL BIKE』がCESで評価されたように、これからの日本のハードウェアは、スペックよりもコンテンツとしての魅力が大事になる。この取り組みが北九州の製造業と福岡のソフトウェアと組み合わせるきっかけになればいい」と期待を寄せた。

株式会社マクアケ 共同創業者/取締役 木内文昭氏

 続いて、昨今のスタートアップを取り巻く環境の変化として感じていることとして、岩佐氏は、資金調達の難しさを挙げる。シード期は潤沢だが、シリーズAあたりが苦しいという。小笠原氏はこの時期を乗り越える方法として、日本政策金融公庫のスタートアップ支援資金(最大14億4千万円を無担保で融資する制度)など金融機関の融資の活用を提案した。また、シード期の調達は、東京は案件が多く競争が激しいため、ハードウェアスタートアップは地域のほうが有利とのこと。

 近年の環境変化として、半導体不足とドル高にハードウェア業界は苦しめられたが、悪い面ばかりではないようだ。岩佐氏は「日本の人件費が相対的に安くなったので、ハードウェアは海外には売りやすい。海外には日本の何十倍もの人がいるので、多少荒削りでも意外と買ってくれる。もっと外に目を向けるといい」と海外展開を勧める。実際にShiftallも海外向けの売上のほうが伸びているという。

 また、コロナ後の消費者意識の変化は、ハードウェアスタートアップには追い風ともいえる。木内氏は「強いプロダクトアウト型が以前よりも広がっているように感じる。キャンセル不可で半年待って先払いでも成立するのは大きな変化」と分析。岩佐氏も「今は新車を注文しても半年や数年待ちは当たり前。在庫が潤沢にある時代ではなくなり、ほしいものを発注して待つことが受けいれられるようになった。クラウドファンディングで納品1年先の商品を予約購入してくれると、先にお金が入るのでそれを資金に製造できる」と同意する。

株式会社Shiftall 代表取締役CEO 岩佐琢磨氏

 スタートアップを支援する際には、対企業というよりも人として向き合うようにしているそうだ。岩佐氏は、「ハードウェアスタートアップはよくつぶれますが、会社がなくなってもみんな元気で、次また一緒にやろう、とつながる。最後に残るのは人。ハードウェアスタートアップの技術やノウハウが人を媒介して継承されていき、その結果、地域や国に人が集まっていくといい」と話す。木内氏も「うまくいかなければ会社を早くたたんで次に行ける環境があると、心のエネルギーの減り方が違う。また、次にチャレンジするとき、地域のほうが顔を見知った人とやりやすい」と人や地域とのつながりの重要性を強調した。

 販売で気を付けてほしい点として、「買ったあとに顧客との関係性をうまく継続している企業は成長している。正直さ、誠実さが大事」と木内氏。継続的な関係を築くためのポイントとして、岩佐氏は「将来使うかもしれないセンサーやメモリーを入れておくなど、アップデート可能にしておくと効果的」とアドバイス。小笠原氏も「設計のコストダウンは大量に安く売るため。スタートアップは最初からたくさん売るわけではないから、そこまでコストを考えなくてもいい。次にチャレンジできるだけ売上を立てて、また次の製品を作ればいいと思うし、そのほうがお客さんとの関係も良くなる」とのこと。

 支援する側としては、マーケティング理論などはひとまずおいて、自分が本当にほしいものを作ってほしい、と口をそろえる。多少マニアックでも世界に目を向ければ同じ感性を持つ誰かが買ってくれる。そのほうが情熱を持って作り続けられるし、共感してくれる仲間やお客さんともいい関係を築ける。

株式会社ABBALab 代表取締役 小笠原治氏

 最後に、北九州市のハードウェアスタートアップに一言。

 木内氏「ものづくりは辛いこともありますが、自分がやりたいからやっている、という強い思いを持てるように、我々も支援していきたい。北九州から日本を変えていくスタートアップが生まれることを期待しています」

 岩佐氏「スタートアップにとって大事なのは地の利よりも人。スタートアップに関わる人材が地域に集まってくることで価値が生まれます。北九州市は特にハードウェアスタートアップの人材が集まっているという実感しているので、ぜひ10年続けて、北九州はハードウェアスタートアップを支援するまちだよね、と言われるようになってほしいです」

 小笠原氏「自分たちだけでやろうとしないでください。また誰かと組む時は自分のためだけに組もうとしないこと。お互いがいい形にならないといけない。日本ではネガティブな気持ちにさえならなければ生きていけます。失敗を恐れずに始めていただければうれしいです」

株式会社マクアケ 九州拠点責任者 セールス局マネージャー 宮田紗良氏

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