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ロボット、マイクロモビリティ、環境テックで社会課題を解決 北九州市合同デモデイ

北九州市が初の大規模スタートアップイベント「WORK AND ROLE 2023」レポート 2日目

特集
ASCII STARTUP イベントピックアップ

提供: 北九州市

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Maker’s Project採択4チームの成果発表

 Maker's Projectは、IoTやロボットなどハードウェアに関するビジネスアイデアをプロトタイプ製作まで支援するプロジェクトだ。採択チームには共創企業からの開発資金、メンタリング、実証フィールドの提供が受けられる。過去5年間で累計24チームを採択し、今期は4チームが採択された。

建設作業員の健康と安全を守るDX保護帽管理システム

 株式会社ケントクは、建設作業員の命を守る保護帽デバイスと健康と安全管理システムの開発に取り組んでいる。同社はソーラーパネルの設置を中心とした土木、建築業を営んでおり、作業員の健康管理や安全管理をシステム化し、労災事故を減らすことがプロジェクトの目的だ。健康や安全対策のための既存の緊急通報ボタンやバイタルデータの計測器は高額で中小企業には導入が難しい。

 そこで、建設現場の事故で最も多い熱中症対策にしぼり、緊急通報ボタンとGPS、温度計を搭載したヘルメット装着型のデバイスを開発。血圧測定と体温計については既製品を使用し、これらのデータを一元管理するシステムを構築した。子機からは位置情報と温度計が取得データとして転送され、親機の通信ボックスを介してPCで作業員の環境を確認できる仕組みだ。試作品は2024年2月の完成を目指しており、自社現場で活用しながら導入を希望する企業を募集し、製品化後はサブスクで販売していく計画だ。

株式会社ケントク 麻生大将氏

子機を装着したヘルメットと親機

排水溝プロジェクトがカンボジアのカシューナッツ加工活動へと展開

 九州工業大学大学院の山手健矢氏と株式会社ウエルビー代表取締役の赤尾拓哉氏のチームは、油水分離装置の試作と応用について発表した。油水分離装置の開発を始めたのは、山手氏が学食でアルバイトをしていた当時、排水溝の汚れを化学技術で解決できないか、と職員に提案されたのがきっかけだそう。厨房に設置されているグリストラップ(油脂分離阻集器)は、3層構造になっており、1層目で残飯や生ごみを取り除き、2層目で水と油脂を分離させる仕組みだが、こまめな清掃が必要でメンテナンスを怠ると悪臭の原因になる。

 山手氏は4年間にわたり、薬品や触媒を使った研究を続けてきたが、根本的な問題解決には至らなかったという。そこで1年半前から赤尾氏とともに物理的な装置を作ることに方向転換し、Maker’s Projectに応募。株式会社ドーワテクノスとの共創で、小型で安価な油水分離装置の開発に取り組んでいる。

 現在は、ベルト式の回収装置、ディスポーザー、フロート式の装置を組み合わせて試作をしている。実験を繰り返していたところ、COMPASS小倉のイベントでカンボジア産カシューナッツの廃棄物処理の課題を知り、カシューナッツ残渣物の加工に油水分離装置が使えるのでは、と発案。カンボジアのカシューナッツ農園と契約し、現地に工場を建設して、北九州市でカシューナッツや加工品を販売する、といった計画が進んでいるそうだ。

九州工業大学大学院 山手健矢氏

油水分離装置の試作機

ピーマンの大きさを自動選別する装置「せんかちゃん」

 宮崎県立都城工業高等専門学校 機械電気工学専攻1年の大前逸晟氏は、地元のピーマン農家向けに小型のピーマン自動選別装置「せんかちゃん」を開発。ピーマンの仕分けには手間がかかるが、既存の選別装置は大型で高価なため、中小規模のピーマン農家は導入が難しい。農家の希望する仕様は、幅/奥行き/高さ各100ミリ以内、選別速度1個当たり約1秒以下、許容誤差プラスマイナス1.0グラム未満、防水性能IPX5、S/M/Lの3段階の選別機能を有し、販売価格は1万5千円以内。

 2018年から開発に取り組んできたが仕様条件をクリアできず、Maker's Projectに応募。株式会社REIZとの共創のもとに小型化、耐久性の向上、プログラムの改良を行ない、試作機では防水性と価格以外の目標仕様が達成された。現在は材料費に6万円かかっているので低コスト化が課題だ。4月からは農家での実証評価を行ない、引き続き改良を行っていくとのこと。

都城工業高等専門学校 機械電気工学専攻1年 大前逸晟氏

「せんかちゃん」の試作機

液晶ディスプレイ搭載の折りたたみ電動バイク「TATAMEL BIKE」

 株式会社ICOMAの折りたたみ電動バイク「TATAMEL BIKE」は、箱型に変形するデザイン性の高さから「CES 2023 Innovation Awards」を受賞するなど、多数のメディアでも取り上げられている注目のモビリティだ。Maker's Projectでは株式会社ラックの共創でボディにインターネットにつながる液晶パネルを搭載したコネクテッドモビリティを制作。スマホのカメラ映像を液晶パネルに表示するデモを紹介した。北九州市のスーパーシティ構想のなかで走るスマートモビリティとして引き続き共創していく予定だ。

「TATAMEL BIKE」は、個人が所有してカスタマイズして楽しむことを重視しており、ファッションに合わせたパネルの付け替えや、ソーラーパネルを搭載するといった使い方も想定している。箱型に折りたためば、駐車場のない集合住宅に住んでいる人でも室内に収納でき、またポータブル電源としても使えるなど、多様なニーズに対応できるのが特徴だ。現在は事業者向けに販売価格は66万円で販売を開始しており、3月には鹿児島大学に納品したばかり。また、4月末には12分の1スケールのガチャで販売が決定しているそうで、コンテンツと絡めた展開も期待できそうだ。

株式会社ICOMA 代表取締役 生駒崇光氏

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