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微量の汗から体内のコンディションを可視化。生体分子分析サービスによる新市場開拓を目指すPITTAN

スタートアップスタジオ発のディープテック創出

連載
研究開発型イノベーション創出のケーススタディ

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 この記事は、国内産業のイノベーション創出及び競争力の強化に寄与する活動を推進する、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)に掲載されている記事の転載です。

 日本の優れた技術や人材は大企業に集中しており、グローバルで勝つ事業創出には大企業のリソース活用は有効な手法のひとつ。株式会社PITTANは、東京大学 角田誠氏の生体分子分析技術をコアに健康美のコンディショントラッキングサービス開発に取り組んでいる。2022年度はNEP事業に参加、2023年度は分析装置メーカーの島津製作所の児山浩崇氏も参加して、ヘルスケアサービスを本格稼働する予定だ。日本のディープテックスタートアップが研究開発に必要な資金、人材、設備を確保していくための支援や制度について、株式会社PITTAN CEOの辻本和也氏と児山浩崇氏、島津製作所 常務執行役員 稲垣 史則氏、出向起業スピンアウトキャピタル 奥山恵太氏らに話を伺った。

株式会社PITTAN 代表取締役CEO 辻本 和也氏
京都大学でMEMS分野を研究し、修士・博士課程を修了。機器の小型化技術を社会実装するため、東京エレクトロン株式会社の研究部門に入社後、京都の半導体メーカーであるローム株式会社に転職。その後、大企業のもつ技術をより効率的に社会実装してイノベーションを創出したいと考えるようになり、コンサルファーム、VCを経て、2022年にスタートアップスタジオを友人と設立。そのパイロットプロジェクトとして自身がEIR(entrepreneur in residence)としてPITTANを創業。東京大学の角田誠氏の協力のもとにヘルスケア分野での事業化を進めている。

微量の汗によるアミノ酸分析技術×超小型・高速分析装置で体内のコンディションを簡便に測定するヘルスケア市場を開拓

 PITTANは、東京大学准教授 角田誠氏の生体分子分析技術をもとに、ごく微量の汗から得られる情報から健康美に必要な栄養状態を見える化するヘルスケアサービスの事業化を目指している。

 汗には肌の健康美に重要なアミノ酸成分が多く含まれており、体調や年齢、性別によってアミノ酸プロファイルが変化するという。角田氏のごく微量の体液から簡便にアミノ酸を分析する技術を用いれば、肌から自然に蒸散される程度のわずかな汗で計測が可能だ。同社の汗分析サービスは、肌に5分間独自開発のパッチを貼って汗を採取し、同社のラボにて分析。機械学習で波形を解析した汗中のアミノ酸プロファイルからコンディションを見える化する仕組みだ。

 ウェアラブル型の活動量計など日々の健康状態を可視化するサービスは市場としても拡がっているが、これらの機器では体の中の栄養状態まではわからない。体液から取得できる情報量は多く、体の中のスクリーニングが可能となる。

 汗は採血などに比べて侵襲度が低く極微量であれば検査への抵抗感が少ないことから気軽に計測できる。将来的には薬局の店頭やスポーツジムで血圧を測るような感覚で気軽に健康チェックができるように、小型かつ簡便に使える超小型オンサイト分析装置の開発にも取り組んでいる。

 まずは健康美をテーマに、測定結果から生活習慣や食事、サプリメントの提案といったサービス展開を想定している。一方では、疾病、炎症のスクリーニングへの活用へ向けて、大学の医学部などと協力しながらデータ収集を進めていくそうだ。

汗分析サービスの流れ

測定結果のイメージ

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