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微量の汗から体内のコンディションを可視化。生体分子分析サービスによる新市場開拓を目指すPITTAN

スタートアップスタジオ発のディープテック創出

連載
研究開発型イノベーション創出のケーススタディ

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スタートアップスタジオ発のプロジェクトとしてPITTANを創業

― まず起業の経緯からお聞かせください。

辻本:大学ではMEMS(微小電子機械システム)を研究し、さまざまな機器を小型化する技術を社会実装していきたいと考えていました。大学卒業後は、大手メーカー2社で研究開発から製品の量産まで担当しました。エンジニアとしてのやりがいは感じていましたが、もともとイノベーション創出に強い想いがあったので、大企業のリソースをより効率的に社会実装するため外から大企業を変革することを動機にコンサルファームに転職。その後、京都のMonozukuri VenturesというVCに入社して、キャピタリストとしてスタートアップの世界に飛び込みました。昨年、ディープテックに軸足を置いたスタートアップを作るためにスタートアップスタジオ(注1)を設立し、そのパイロットプロジェクトとしてPITTANを創業しました。

※注1 スタートアップなど新しい事業を創出するための人材、資金、ビジネスモデルの磨き上げなどを自ら行う組織。

― 汗分析サービスについて、既存の検査サービスに対する優位性についてお聞かせください。

辻本:我々の微量の体液による分析技術は、おそらく他のプレイヤーには真似できません。唾液による遺伝子検査などはすでにありますが、あくまで先天的な傾向を知るためのもの。日々の生活習慣の結果として改善または悪化しているのかどうかがわからないので、健康管理のための検査サービスとしては、我々の汗分析は有用な手法だと考えています。

 また、我々が重視しているのが簡便さです。超小型装置の開発も、簡便さを目的としたものです。今の検査方法はサンプルをラボに送り、検体分析にも1時間ほどかかります。小型デバイスが完成すれば、測定から10分~15分後には結果がでるので、数年後にはドラッグストアやスポーツクラブ、エステサロンでオンサイトで測定して生体分析を習慣化させていきたいです。

― 東京大学の角田先生や児山氏との出会いは?

辻本:児山さんとはMEMSの研究者として以前から交流があり、具体的にスタートアップを立ち上げるために相談したところ、東大の角田先生を紹介してもらいました。私自身、大学のころから小型化の技術をヘルスケアや医療に活用したいと考えていたので「これだ!」と。ただ、児山さんも角田先生もいきなり兼業はできないので、2022年度は私ひとりで会社を立ち上げ、2023年4月からメンバーを増強して本格稼働していく計画です。

 角田先生は4月から取締役に就任いただく予定で東京大学に兼業申請をしており、児山さんにもできれば出向起業(注2)で関わっていただきたく、(出向起業スピンアウトキャピタルの)奥山さんにアドバイスをいただきながら、児山さん自身も島津製作所の社内でご相談いただいている状況です。

※注2
大企業内では育てにくい新事業について、当該大企業社員が、辞職せずに外部からの資金調達や個人資産の投下を経て起業し、起業した新会社に自ら出向等によりフルタイムで経営者として新事業を開発すること。また、子会社・関連会社ではないこと(起業するスタートアップの株式のうち、当該出 向者の出向元大企業の保有率が20%未満であること)が条件。

― スタートアップスタジオとして、大学のシーズをもとに創業する形は、海外の事例を参考にされたのでしょうか。

辻本:参考にしたのは、COVID-19のワクチンで世界的な有名企業になったモデルナです。最終的には日本でモデルナ級の企業を創出するのが目標ですが、もちろん米国のスタイルをそのまま日本に持ってきてもうまくいきません。日本は大企業側に優秀な人が集まっており、数十年の歴史で培われた技術を持っています。そこから一部を出島として出していただくことで、より大きな産業を創っていけるのではないでしょうか。個のプレーヤーに寄ったものよりも、大企業のリソースを持ち寄るような、日本独自のスタートアップスタジオが必要だと考えています。

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