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微量の汗から体内のコンディションを可視化。生体分子分析サービスによる新市場開拓を目指すPITTAN

スタートアップスタジオ発のディープテック創出

連載
研究開発型イノベーション創出のケーススタディ

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小型デバイスの早期実装へ向けて、出向起業や島津製作所とのコラボを模索

― 島津製作所として児山さんは、現在どのようにPITTAN関わられているのでしょうか。

児山:私は大学のころからどうすれば科学技術をもっと身近に、SFのような世界を実現できるのかをずっと考えてきました。島津製作所に入ったのもそのためですし、今もその実現に向けて研究開発に取り組んでいます。辻本さんとは、装置の小型化を含め、いかに分析サービスを民主化し、ラボから外に出して人の近くで使ってもらうかという部分で意気投合しました。副業として間接的にサポートする方法もありますが、課題を解決していける人材になるには、外に出る必要があると考えており、出向起業制度(注4)をうまく利用して参画できないか調整しているところです。

※注4
経済産業省 令和4年度「大企業人材等新規事業創造支援事業費補助金」に基づき、出向起業を活用して新規事業開発を行うにあたり、事業開発活動費用の一部を補助する制度。

― NEPの参加ではどのような成果がありましたか。

児山:角田先生と私が装置の小型化のノウハウを持っていたので、当初は装置をビジネスの中心に考えていました。NEPのメンタリングを受けてよかったのは、装置開発がビジネスの足かせになってしまうと気付けたことです。装置は原価が高く、開発期間もかかるため、完成を待っているとスタートアップは死んでしまう。サービスで稼ぐことから着手し、また承認が必要な医療系のサービスは数年後に見送り、ライトなビューティヘルスケアから始めることにしました。いかにお金を稼ぐかは、一企業の研究者である私の頭になかったので、この部分は事業開発経験のある辻本さんと前田さんがいたことが大きいです。

―そのような小型デバイスは二の矢になる事業とはいえ、すでに「S-booster2022」で受賞もされており、こちらも期待感があります。

辻本:S-booster2022は、宇宙という五の矢くらいの話のためスピンアウトプロジェクトという位置付けで、チーム名「SpaLCe」として参加しました。小型化により新しい市場を切り開ける可能性を高く評価いただき、ソニー賞とNEDO賞をダブル受賞させていただきました。開発中の超小型オンサイト分析装置は、ヘルスケアだけでなく、環境分析や宇宙でのオンサイト分析にも活用できる可能性を秘めています。新しい市場の広がりは我々の将来の成長にも影響するので、なんとかして開発を進めたいと考えています。ただ、小型デバイスの開発は児山さんの力にかかっていますので、その後の疾病スクリーニングを含めて、島津製作所との連携も検討しています。

経済産業省の出向起業事業(大企業等人材による新規事業創造促進事業)
https://co-hr-innovation.jp/

― 上記に関連して、島津製作所としてのスタートアップに関わる施策、出向起業についてのお考えについてお聞かせいただけますか。

稲垣:スタートアップとの連携の取り組みは、4年前に株式会社Monozukuri Venturesのファンドに出資したのが始まりです。そこから多くのスタートアップと弊社の事業部や研究所とマッチングをしましたが、うまくいった例はなく、なかなか難しいというのが現状です。

 社内の技術者と同じ領域のスタートアップとでは意見が合わないことも多く、うまくつなぐために来年度からはCVCの立ち上げを模索しています。

 児山さんが島津製作所の社員として出向する場合、当社の事業にとって長期的にメリットがあるかどうかを判断する必要があります。社内でも小型装置の事業戦略を議論していますので、PITTANとうまくコラボできれば、と考えています。

― 続いて奥山様にお伺いしますが、大企業から出向起業制度を利用してスタートアップを創業するケースは増えているのでしょうか。

奥山:私は2022年の夏まで経済産業省で出向起業制度を担当していました。出向起業は、大企業の技術者が自分で出向する制度です。まさに児山さんのように、技術者としての専門性をもって自ら起業、あるいは創業者の一人として経営に参画される方がこの制度を活用されています。

 例えば、株式会社ブライトヴォックスは、リコーで研究開発されていた3D映像をメガネなしで投影する技術を社会実装するために、エンジニアが出向起業制度を利用して設立した会社です。メーカーのアセットを活用しながら、大企業の方が会社を辞めずにスタートアップの創業者の一人として参画する事例がいくつか出てきています。

 これまで32例が出向起業制度を利用して起業していますが、大企業の社内規定に違反したというケースは今のところなく、通常の出向と変わらない契約で出向起業できています。児山さんもぜひこの制度を活用して創業者の一人として活躍していただきたいです。

― 最後に大企業からの出向起業、コラボをうまく進めていくためのアドバイスをお願いします。

稲垣:経営戦略を構築する立場としては、中長期的に私どもの会社にとってメリットがあるのかないのかで判断します。社内でも先の事業として考えていますから、PITTANと協業したほうが中長期的にメリットがあると考えれば、いいコラボができると思います。当社の関係部署との関係をうまく構築することがいちばんのキモになるでしょう。

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