化学産業の省エネからゲノム編集、藻類活用まで カーボンニュートラルスタートアップ5社
NEDOドリームピッチ in 関西「カーボンニュートラル ―カーボンクレジットを生み出す社会へ―」レポート
藻類の活用で地球課題を解決する
株式会社アルガルバイオ
株式会社アルガルバイオは東京大学発の研究開発型ベンチャー企業で、藻類の可能性を解き放つ独自のビジネスモデルと、藻類バイオファウンダリーの活用により、世界No.1のクリーンテック企業を目指す。
藻類活用の可能性は大きく3つの分野にある。1つ目は藻類が持つ機能性成分による、健康食品や化粧品などの「レッドバイオ領域」。2つ目はタンパク素材、天然色素など食品原料や畜水産業向けの飼料原料、農業資材などの「グリーンバイオ領域」。3つ目は藻類が燃料になったり炭素固定をしたりすることによる素材、エネルギーなどの「ホワイトバイオ領域」だ。これら3つの領域に、アルガルバイオは藻類の研究開発で寄与していく。
またアルガルバイオはニーズに合わせたソリューションを提供するマーケットイン型のビジネスモデルで、藻類の活用を目指す。地球上に約30万種ある藻類のうち、産業活用されているのはわずか30種類だという。藻類産業においてプロダクトアウト型が主流であることに起因する。アルガルバイオは東京大学での20年以上の研究成果である藻類ライブラリーと蓄積されたデータやスクリーニング、育種と培養技術を掛け合わせることにより、カーボンニュートラルを目指す企業や社会のニーズに合ったソリューションを提供していく。
ナノセラミック分離膜で化学産業の省エネを実現する
イーセップ株式会社
イーセップ株式会社はナノセラミック分離膜の開発、販売により、化学産業の省エネやエネルギーの生成を通じて、地球課題の解決を目指す。イーセップが開発する分離膜は「脱水」を得意技術の一つとしており、ニーズに合わせて分離膜の種類を増やすことで適用範囲を広げている。
イーセップの分離膜を用いたカーボンニュートラルの取り組みは主に3つだ。1つ目は化学溶剤の回収。化学産業では欠かせない、混合物を分離するための巨大な蒸留塔を分離膜技術を用いて小型化し、オンサイトで利用可能にすることで、化学産業全体の省エネを推進する。
2つ目は水素キャリア。脱炭素に向けた水素社会では水素の運搬が必須だ。ガスである水素は運びにくいため、別の化合物に水素を結合して運搬する。運搬された水素を利用する際は水素と化合物を分離する必要があるため、イーセップの分離膜が有効利用される。
3つ目はメンブレンリアクターによる高効率e-fuel合成。二酸化炭素と水素を原料とし人工的にガソリンを作る技術だ。この技術は半世紀以上に渡り研究が進められているが、生成過程で水が発生することにより、ガソリンに至らないことが技術の進歩を妨げてきた。イーセップは自社の強みである脱水が得意な分離膜を活用することで、ガソリンの生成に成功した。今後は原料からの変換効率の向上や分離膜の量産化により、2025年の「大阪・関西万博」に合わせたe-fuelの社会実装を目指す。
また、2023年3月までに、イーセップ本社がある京都府の「けいはんなオープンイノベーションセンター」の敷地内に、e-fuelの合成を見学できる小規模実験設備をオープンし、分離膜の技術に関する情報発信や信頼性の向上を進める。