若者が働きたくなる町工場 日本ツクリダスがリードする製造業のDXとブランディング強化
堺市発のイノベーションを創出するスタートアップ起業家連続インタビュー第4回
提供: NAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアム、堺市
大阪府堺市は社会課題の解決に向けて、イノベーション創出エコシステムを構築するための様々な施策を展開している。その中核を担う新規事業に取り組むスタートアップの中から日本ツクリダス株式会社にインタビューを行い、彼らの事業に対する思いや地域中小企業の成長に向けた取組などを伺った。
日本ツクリダス株式会社(以下、ツクリダス)は町工場としての金属加工事業を核に、自社開発した生産管理システムの外販や中小企業のマーケティング・ブランディングを行うデザイン事業を展開している。町工場としての自社の知見を活用したユニークな事業の拡大が同社の大きな特徴となっている。
日本の部品産業の要である町工場はまだまだ業務の属人性が強く、DXの推進とそれによる効率化が求められている。また、深刻な人材不足の解消に向けて、町工場の持つネガティブなイメージを払拭していくためには、ネット時代に対応したマーケティング施策が不可欠となる。
ツクリダスはいち早く自社のDX推進やブランディング強化を実現するとともにそれを新たな事業として展開している。同社代表取締役である角野嘉一氏(以下、角野氏)にツクリダスの事業を通じて得た知見や町工場の成長にかける想いについて伺ったので紹介する。
町工場の課題
町工場を効率化しなくてはならないとはよく言われることだが、実情を知るとそれほど簡単ではないことが分かる。まず多くの現場でいまだに図面など紙ベースの管理が行われており、トラブル発生時点で誰がどの仕事を抱えているのか、本社の管理側で把握することができない。
加えて生産の中止や順序の入れ替えが頻繁に発生するが、それらを実施するための現状把握には現場に行かなくてはならず、素早い対応の妨げとなっている。さらに社外に一部工程を委託している場合もあり、イレギュラーな事態が発生したときには乱れた生産工程を整えるためにさらに時間を要することになる。
「町工場では1人の職人さんが何でもやっているなど、とにかく臨機応変に動いている。どれからやるのかを柔軟に対応と言えば聞こえはいいが、今日はこの仕事が入ってきたからとか、この予定だったけど先にこちらをやらないといけないとか、計画そのものがないと言っていい。
そうするとやらなくていいものを先にやってしまうとか、やらないといけないものが隠れてしまうとか、誰も気づかなくて結局やってなかったとか、そういうことが起こる。結局メリットよりトラブルの方が多くなる」(角野氏)
そこでツクリダスでは生産管理システムの導入を検討したが、計画ありきで生産を管理する既存のシステムは、図面や職人が起点となり現場主導で物事が進んでいる町工場の現状とマッチせず、自社開発に踏み切ることとなった。
「計画がないということは生産管理業界からするとあり得ない。計画もないのにどうやって管理するんだと。でも現実問題としてありうる。その「ありえる」を「ある」にしたのが我々の生産管理システム“エムネットくらうど”です」(角野氏)
そうして出来上がった「エムネットくらうど」は既存の生産管理システムとは重心のかけ方の異なるものとなっている。一般の生産管理システムは1)計画、2)進捗管理、3)分析の3つのパートから構成されており、特に計画と分析に強みを持つシステムが多い。それに対して「エムネットくらうど」は進捗管理に力点を置いている。つまり今何がどうなっているのかの見える化に特化することにより、町工場の長所である臨機応変さを維持しながら、イレギュラーな事態での無駄を減らしていくことを目指したものとなっている。
「いくら計画を上手く立てていても、町工場ではその計画通りにはほぼいかない。だから現場を見える化して、現場がうまく動けるようにする。(管理側から)現場が見えるようになると軌道修正ができるようになる。これこそが一番の最短距離で最初にやるべきこと、と私は考えている」(角野氏)