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温度制御でかゆみ解消、透明太陽光発電など 期待のベンチャー発先端素材

第50回NEDOピッチ「先端マテリアル ver.」レポート

特集
JOIC:オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会

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トポロジカル物質を応用したデバイスの社会実装を目指す

TopoLogic株式会社

 トポロジカル物質とは、2016年にノーベル物理学賞を受賞したトポロジカル物質の理論的原理説明から派生した物質で、絶縁体、導体、半導体のいずれにも属さない全く新しい物質である。トポロジカル物質は異常ネルンスト効果および異常ホール効果と呼ばれる物理効果を持っており、それぞれ熱流センサーや熱電発電デバイスおよび高速磁気メモリーへの応用が期待されている。TopoLogic株式会社はこのトポロジカル物質の社会実装を目指している。

TopoLogic株式会社 代表取締役社長 佐藤 太紀氏

 既存の熱流センサーは数万円~数十万円という高価格であったこと、形状に制約があること、個体差の大きさなどにより、(単独のセンサーとしての利用が主で)製品となる機器に組み込む形で利用するものではなかった。

 TopoLogicが現在試作中の熱流センサーは100nmの薄さであり、20mm四方程度の大きさですでに既存品と同等の性能を示します。時間応答性では数百倍早く、例えば製品に内蔵するバッテリーの発熱を検知、制御するために利用することができる。また、開発と設計、生産、製造、製品組み込みなどの各過程において、熱流の可視化やそこからのエネルギーの回収などに適用することにより、製品の安全性や製品開発の効率を向上させることが期待されている。

 トポロジカル物質を応用した磁性メモリーは、素材特性としてシリコンの限界であるナノセカンドオーダーより2~3桁速い動作速度が期待できる。さらに磁気メモリーであるが故の不揮発性を活かした低消費電力を実現した製品の開発に向けて基礎的な研究を行っており、ある程度の性能を持つ非常に簡素な試作デバイスを来年の上期中に実現できるよう取り組みを進めている。

 TopoLogicは自社によるデバイスの開発だけでなく、トポロジカル物質の開発と実用化を行うプラットフォーマーとして顧客と共同でのデバイスや材料の開発を志向している。例えば顧客の製品にトポロジカル物質デバイスをどのように組み込むか、その際の設計はどうするか、デバイスが用いるアルゴリズムはどのようなものかなどを顧客ニーズに合わせて開発していく。それにより、現在研究と開発中の熱流センサーや磁気メモリーだけでなく、更なるトポロジカル物質の応用デバイスを社会実装するリーディングカンパニーとなることを目指している。

温度制御技術を活用してヘルスケア分野で「かゆい所に手が届く」製品を開発する

大阪ヒートクール株式会社

 最近XRやメタバースなどの文脈でハプティクス(触覚技術)が注目されている。触覚は人が持つ五感のうちで技術による再現が最も遅れているとされているが、大阪ヒートクール株式会社は、ペルチェ素子による温冷触覚提示で触覚の完全再現を実現することに取り組んでいる。

大阪ヒートクール株式会社 代表取締役 伊庭野 健造氏

 触覚は皮膚から伝わる圧力と温度の情報で、例えば体に当たった水滴からの圧力と温度の情報によって、人は「水を浴びた」と認識することができる。これらの情報のうち圧力に関しては、ゲームのコントローラーやスマホでも振動によって圧力を再現できているように、技術の成熟に伴い産業化も進んできている。

 一方温度情報に関しては、人間の感情にリンクする重要な情報と認識されてはいるものの、技術が未成熟であり容易に利用できる段階に達していない。温度情報を再現するためにコアメンバーによる大学での研究成果を活用した製造技術(特許出願済み)と、それに基づく柔軟に変形可能なペルチェ素子を開発した。さらにそれを複数並べて同時に制御するIoT技術(特許出願済み)も開発しており、これらを用いた温冷触覚技術を活用したデバイスによって人が持つ様々なペインの解決を狙っている。

 現在同社が注目しているのはヘルスケア分野への応用であり、その第1弾としてかゆみを解消するデバイスの開発を行っている。

 かゆみという感覚にフォーカスを当てている。かゆみは皮膚にトラブルを抱えていない人にとっては大きな問題とはならない感覚ではあるが、アレルギーやアトピーを患っている方にとっては四六時中休みなく苦しんでいる問題となっている。特にかゆみを抑えるために掻いてしまうと皮膚を傷つけてしまい、さらに症状が悪化していくという非常に厄介な特徴を持っている。そのためステロイドなどの塗り薬を使う方も多いが、ステロイドには腎臓系に副作用も知られており、多用することには課題が多い。

 大阪ヒートクールは、サーマルグリル錯覚と呼ばれる皮膚上の近傍に温冷刺激を同時に提示した際に(温度ではなく)痛みを知覚(錯覚)する現象を利用したデバイスThermoScratchを開発し、この痛覚刺激をかゆみへの解決策として活用しようとしている。

アトピー性皮膚炎は裕福になるほどかかりやすいと言われており、世界でも欧米で非常に多く発症しているなど、市場の拡大が期待されている。既に試作品ができてきており、数十台レベルの出荷準備ができる段階に達している。そこで量産のためのパートナーやその管理を行うプロダクトマネージャーを探している。

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