シェアリングエコノミーから生まれる新しい社会と暮らし方
堺市「中百舌鳥イノベーションシンポジウム」レポート 前編
大阪府堺市は人口減少や高齢化など、地方自治体が悩む社会課題の解決に向け、イノベーション創出のためのさまざまな施策を展開している。市の中心にある中百舌鳥(なかもず)地域はそのリーディングエリアとして定義されており、インキュベーション施設である「さかい新事業創造センター(S-Cube)」や大阪公立大学を核として、地域、社会を変える新ビジネスを生み出す事業者を発掘し、支援するプロジェクトを推進している。
そのベースとなるのが大学や民間事業者、産業支援機関、行政などのステークホルダーを集結して設立された「NAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアム」である。2022年8月22日に、同コンソーシアムが堺市、さかい新事業創造センター(S-Cube)にて「中百舌鳥イノベーションシンポジウム~新たな価値を創造するエコシステム形成に向けて~」を開催した。
このシンポジウムは、多様な社会課題が山積する世の中で、社会課題解決型イノベーションを連続的に生み出していくためのエコシステムを、堺市内外で活躍する有識者や経営者とともに検討するものとなっている。2025年の「大阪・関西万博」に向けて各地でさまざまな取り組みが進められている関西圏の中でも、ひときわアグレッシブな施策を推進している堺市のイノベーション創出に向けた取り組みを紹介する。
堺市が進める新たな価値創造に向けた取組(永藤堺市長挨拶)
基調講演に先立ち、堺市長の永藤英機氏(以下、永藤市長)からシンポジウム開会の挨拶として、堺市が進めるイノベーション創出に向けた取組とその背景について、概要が紹介された。
堺市は世界遺産に登録された仁徳天皇陵古墳などがあるように、古代より関西における中心的な役割を果たす地域として知られていた。中世の時代には港を中心に経済的に飛躍的な発展を遂げた。また、千利休の生誕の地として知られるように、文化的側面においても中核的な役割を果たしていた。
しかしながら2012年以降、人口減少や超高齢社会が進行すると予測されており、安全安心で住みやすい持続可能な社会環境を整備するための取り組みが求められている。
「日本中を見渡しても類を見ない歴史と文化が詰まった都市、それが堺市。しかし一方で、いま堺市では人口が減少し続けており、歴史はあるけど未来はどうなるのか、という将来を示すことができていなかった」(永藤市長)
そこで2021年3月、堺市は「堺市基本計画2025」を策定し、持続的な発展と暮らしやすさを実現するためのイノベーションを生み出す場所として、堺市の将来像を「未来を創るイノベーティブ都市」と定義した。
「堺市の市政運営の大方針として『堺市基本計画2025』がありますが、そこで明記されているように、この中百舌鳥から新しいイノベーション、新しい創造がどんどん生まれてくる、そのような都市をめざしたいと考えています。そしてこの中百舌鳥で生み出されたイノベーションが、いま堺市でチャレンジをしている取組を飛躍させていくような好循環が生まれればと考えています」(永藤市長)
堺市には多くの社会課題とそれらの解決に向けたプロジェクトがある。例えば堺市には南北方向の移動は便利だが、東西方向の移動がしにくいという東西交通の問題がある。これを新しい技術を投入して解決しようという「堺・モビリティ・イノベーション(SMI)プロジェクト」が進められている。
また、堺市にある「泉北ニュータウン」は開発から50年以上が経ち、老朽化が進んでいる。これにもスマートシティとしての観点から新しい技術でさまざまな課題を解決すべく「SENBOKUスマートシティコンソーシアム」が100社以上の企業の参加で2022年6月に設立された。
永藤市長は、このシンポジウムをきっかけに、こうした動きをさらに加速したいと考えている。
「この中百舌鳥エリアは交通の結節点であり、また大学及び堺商工会議所や堺市産業振興センター、S-Cubeなど、さまざまな産業支援機関が集まっている。この中百舌鳥からイノベーションが生み出されていき、大阪そして日本中をも元気づけていく、そのような地域にしたいと考えています。そのためには皆様のご協力が欠かせません。今日この場にお集まりいただいた皆様、そしてオンラインでご覧いただいている皆様にはシンポジウムをきっかけとしていただきたい。皆様と一緒に堺市も頑張ります」(永藤市長)