堺市は、地元スタートアップの成長フェーズに応じて経営、技術開発支援やアクセラレーションプログラム、ビジネスアイデアの実証実験など、イノベーション創出のための様々な支援を実施している。「中百舌鳥イノベーション 地域社会未来創出プロジェクト」はそのひとつで、経済的社会的価値につながるビジネスを創り上げようとする事業者を発掘し支援するプロジェクトとなっている。
このプロジェクトはスタートアップ企業や第2創業企業、大学、地域などをつなぐことにより、社会課題の解決や経済的インパクトの創出を目指すもので、「堺市基本計画2025」で設定された「イノベーション創出につながる事業数100件」の実現に向けた取組として始動した。
2022年8月3日にはプロジェクトのキックオフイベントが開催、パネルディスカッションの模様とプログラムの概要を紹介しよう。
大阪市の南に隣接する堺市は、大阪中心部まで30分という立地や、日本最大の古墳である仁徳天皇陵古墳を持つなど良好な文化、環境面があることから、関西でも中心的な役割を担ってきた。一方で国内の大きな課題でもある高齢化や人口減少はここでも緩やかながら進んでおり、厳しい都市経営が予想されている。そこで堺市が将来においても持続的に発展し、暮らしやすい都市であるためにイノベーションを産み続ける場として「未来を創るイノベーティブ都市」をビジョンに掲げ、各種施策を策定し、実施している。
堺市には大阪公立大学中百舌鳥キャンパス(旧大阪府立大学)があるなど関西アカデミアの分野でも大きな存在感を持っており、スタートアップの成長に好適な環境が揃っている。そこで、インキュベーション施設「さかい新事業創造センター(S-Cube)」が設置されている中百舌鳥エリアをイノベーション創出拠点と位置づけ、最先端のイノベーションと活力を創出するクリエイティブエリアへと成長させようとしている。
堺市で急成長中、3名の若き起業家が登壇
キックオフイベントでは社会課題を事業に結びつけている具体例として、堺市で生まれて現在も成長を続けている3名の若い起業家とモデレータのりそな総合研究所 リーナルビジネス部長 藤原明氏によるパネルディスカッションが行なわれた。
はじめに紹介されたのは日本ツクリダス株式会社の代表取締役 角野嘉一氏で、同社は金属加工、機械部品製造というモノづくりど真ん中の事業から生産管理システムの開発販売、企業のブランディングや販促支援事業へと拡大を続けている。
「機械加工部品の商社として起業し、自社内で製造を始めた。生産管理のためのツールが欲しいと思ったが、たいていエクセルとかホワイトボードになっていた。もしくは脳内にとどまっていて、結果として納期忘れなどが発生していた。それを救うために生産管理システムを開発した」(角野氏)
「『仕事を楽しむ、苦手なことをしたくない』が私の人生観。今は町工場にいるので、町工場を変えていくことを楽しんでいる。販促が苦手なモノづくり事業者、管理が苦手なモノづくり事業者、デザインが苦手なモノづくり事業者は少なくない。我々も創業間もない頃に納期に関して大きな失敗をしたことがある。同じような課題を持つ町工場に向けて、自社でやってきた管理の手法、デザインの手法などを提供する事業を始めた」(角野氏)
「生産管理システムの販売を開始してもまったく売れなかった。ソフトの販売だからとスーツで町工場に乗り込んだためではないかと思う。(販売先の)町工場と同じ目線に立ち、作業着で行くようにしたら売れ始めた。自分自身で心理的なでハードルを上げていたのではないかと思う」(角野氏)
続いてプレゼンテーションに登壇したのは「とびばこパン」で有名なパン屋さん「パン ド サンジュ」を経営する店主 門田充氏。もともとはインテリアデザイナーを目指していたが、生み出したものを通じてコミュニケーションを生む過程はデザインの仕事と同じとの思いからパン作りの修業を始め、そこから独立してパン ド サンジュをオープンした。
「コロナの前には『働き方改革』というキーワードをしきりに聞いた。パン業界でも製造現場が朝早くからの重労働を強いられるというところがある。目をキラキラさせながら働きに来てくれた若い人が1年半ほどで目の輝きを失い、辞めていくということがあった。時を止める技術(冷凍技術)を使って改革していきたい。うどんがそうであるように、パンも将来的には冷凍が主流になると思っている」(門田氏)
「ベーグルやピザなどで突出したクオリティーの商品をつくっている方がいる。そういった方々の間では、限られた職人しかつくれないとか、後継者を含めて今後どうしていくのかといった課題が共通している。うちは無理のない形で量産技術を確立するというところに強みがあると思う」(門田氏)
「冷凍パンと聞くとパサパサではないかとあまり良いイメージがわかない。うちの冷凍パンはしっとりしている。我々はこれを『明日のパン』と呼んでいる」(門田氏)
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