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量子コンピューティングの元祖をうたうNECが目指す超伝導回路を用いた量子アニーリングマシンの開発

連載
大河原克行の「2020年代の次世代コンピューティング最前線」

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本番環境でのシミュレーテッドアニーリングマシン活用事例

 NEC Vector Annealingサービスは、シミュレーテッドアニーリングマシンの特徴を活かして、人員スケジューリングの最適化のほか、配車スケジュール、配送ルート、荷積み、生産計画、金融ポートフォリオの最適化などへの応用が期待されている。これまでにも、SMBCグループや日本総合研究所とのパートナーシップにより、シミュレーテッドアニーリングマシンの実用化を模索してきた経緯がある。

 そうしたなか、2022年10月には、本番環境でシミュレーテッドアニーリングマシンを活用する事例が初めて生まれることになる。

 NECの100%子会社であるNECフィールディングが、NEC Vector Annealingサービスを活用して、保守部品の配送計画立案システムの本番稼働を予定しているからだ。

 NECフィールディングは、NEC製や他社製の法人向けICT機器のほか、医療機器や業務用洗濯機、業務用冷蔵庫などの非ICT機器などに故障が発生した場合に、CE(カスタマーエンジニア)が現場に出向いて保守、修理サービスを行っている。

 全国15か所にパーツセンター、全国44カ所にパーツブランチを配置しており、全国規模で8万5000種類、130万点の在庫を持ち、年間400万件、560万点の入出庫実績があるという。

 今回、配送計画立案システムを導入するのは、首都圏をカバーする東京パーツセンターであり、約6000平方メートルの倉庫に、約15万点の保守部品を保有している。24時間365日体制で稼働しており、東京23区の顧客を対象に、1日あたり数百件の保守作業が発生している。

 首都圏で保守および修理を行うCEは、公共交通機関を利用して顧客先を移動し、CEが顧客先に到着するタイミングにあわせて、車両などで部品を届けることになる。

 東京パーツセンターでは、30台の軽車両、8台のバイクで部品を配送。配送地域や配送時間、部品の違いや配送量、道路の混雑状況などの組み合わせから、最適な配送ルートと配送手段を導き出す。組み合わせは10の753乗にも達するという。

 これまではベテラン社員が、毎日2時間(120分)かけて、翌日分の保守部品の配送計画立案の作業を行っていたが、配送計画立案システムを利用することで、これを10分の1となる12分にまで短縮し、自動的に生成。配送車の削減や距離の短縮化などを実現することで配送効率を30%向上できるという。

 2022年2月から行ってきた実証実験では、ベテランの人手による計画と同等水準の計画が自動生成でき、さらに、ベテランでも気がつかないような計画提案が可能になったという。

 今後は、他のパーツセンターにも展開することを検討するほか、全体の5~6割を占める当日に発生する緊急対応にも対象範囲を広げ、短時間で最適な配送を行えるようにするという。また、この成果をソリューションパッケージとして製品化し、量子技術を幅広く活用してもらう環境を広げることも視野に入れている。

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