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京都KRP、大阪OIH、福岡FGN 地域ハブが仕掛けるスタートアップ支援の形

JAPAN INNOVATION DAY 2022セッション「地域発イノベーション! 地元企業とスタートアップ共創の秘訣」

連載
JAPAN INNOVATION DAY 2022

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スタートアップと大企業、地域企業がうまく共創する方法とは?

 3者の自己紹介が終わったところで、後半は実際にスタートアップと地域企業との共創事業をどのように作っていくのか、その秘訣について自由に対談していただいた。

KRP田畑「コロナ前は年間1500回、8万人以上と、KRPのコンベンション施設では本当に色んなイベントをやっていました。HVC KYOTOなど、民間が費用負担し行政の目配りのもと大学が技術評価を担う持続可能でフレキシブルな産官学連携が実現しています」

FGN仕田原「長い年度でできるのはいいですよね。スタートアップに対しては、急成長をベースにして、 2年以内に大きくなっていきましょう、って話になります。しかし実態としてはやはり2年以上はかかる。3年ぐらいでシリーズAに行けるといいかなって時間感覚なので、そこに支援サイドの年度の縛りが入ってきてしまうと、それはスタートアップのためにはならないことですよね。年度の縛りがないって素敵なことだと思います」

KRP田畑「公的インキュベーターは、コストは低く抑えられるのですが、公正・公平の原則に則り長くて7年といった入居年限があります。ヘルスケアやモノづくりは、すごく足が長いので、そこを補う形でご支援できればと思っています」

FGN仕田原「スタートアップのシンプルな事例であれば 2、3 年で勝負をするのもいいと思うのですけど、これから先の世界のトレンドを考えて、SDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)などの切り口をいれていくともう、ビジネスマターだけの話だけではなくなるので時間がたりませんよね」

KRP田畑「なので、我々のような民間業者が間に入ることを、京都の行政さんもうまく使ってくださっていると思っています」

FGN仕田原「行政が得意な部分と民間が得意な部分って全然違うと思っていて、このところをしっかりと連携をしつつも、餅は餅屋みたいな形で渡し合うことが大事なのでしょうね」

OIH石飛「その部分では、私たち大阪市としては、スタートアップの皆様や企業様に最初に集まる場所として機能しています。企業様には万博とかスマートシティの動きの中でお声がけを頂いて、そこに私たちがうまくお繋ぎしていくことを考えています。そのためにも先ほどおっしゃったように年度で終わるのではなく、もうちょっと長く関係を作って行きたいですね。OIHも8年やっていますので、長期になってきたなと感じています」

FGN仕田原「行政が入ることで特定の、しきい値が下がるというか、色がつきづらいというのはあると思います。どうしてもその事業会社 ごとに役割やそれぞれに繋がりがありますが、逆に繋がりにくい方もそういうときにFGNやOIHが間に入ることによって繋がりやすくなるのはその通りだなと思います。FGNにも『もっとハブとしての機能を!』というお声をたくさんいただくんですよね、そこも共通していますね」

OIH石飛「 私たちもハブとしてFGHさんやKRPさんなど横のつながりをもっとコミュニケーションしていきたいですね。福岡では地場の企業さんとどのように関係づくりをされているのでしょうか?」

FGN仕田原「関係性作りにおいては、基本的にいかに密にコミュニケーションを取ったかがベースになってくると思っています。少なくとも2ヶ月には1回、できれば2週間に1回ぐらいの頻度でコミュニケーションを取るようにしています。急速に成長していくような状況では支援サイドに求められるニーズも変化していくので、それを見逃さないように、ニーズが発生した場合には自分たちが持っている支援策のポートフォリオの中から、紹介できるところをすぐに繋げていく。このスピード感の部分はとても大事かなと思っています。深度とスピードですね」

KRP田畑「深度とスピードの部分ですが、コロナでなかなかリアルに会えないのは、ハブ機能としてお困りでは? 特に初対面の方と、継続的な関係を構築するまでの手間がオンラインでは本当に大変で。そこをどのようにクリアされているのか伺いたいです」

OIH石飛「そうですね。そこがオンラインの課題かなと。ネットワーキングがオンライン上ではしにくい。オンラインにシフトした後は、そこがずっと課題ですね。密度と頻度という部分では、オンラインでもあまり長くせずに、短いコミュニケーションで進捗をキャッチアップしながら、なるべくオンラインのミーティングを活用しながら、あの個別にやっています。イベントにたくさんのスタートアップが来て終わり、よりも、もしかしたら質の部分では上がっているかもしれません。メールもチャットももっと身近になりましたし、雑談レベルでのコミュニケーションもなるべくするようにしています」

FGN仕田原「FGNの中ではオンラインでだけでもなんとかなるんじゃないか? みたいな思考から、やっぱりオンラインだけだと難しいよね、って変化しています。現状はたくさんの人を集めてイベントを打つことはやっぱり難しい社会状況ですので、小さく、細くに分けて、マッチングの機会を高めた状態で適切に設定することを何回も繰り返しています。オフラインの機会の密度を高める事業の進捗につながるので、よいマッチングが行われるように4、5人ぐらいのグループにして、且つ、そこにニーズのマッチの確度が高い人を優先してアサインするような感じで進めています。小さくたくさんで精度を上げるのは、オンラインでもオフラインでも基本的には同じなのかなと思っています」

KRP田畑「私もそういう意味ではテーマをどんどん絞っていくことにフォーカスしています。広くあまねく『やる気がある起業家さん集めました』、ではなくて『この分野でちょっと尖がっていると思われる人たちを選びました』を起点に事業会社を集める方式に変えました。それから無料はやめました。マッチングの確度上げるために有償化することにしました」

FGN仕田原「なるほど。民間としての取り組みとしては、それが正しいのだろうなって気がします。僕らの施設は、逆に無料化している方が多くて。これは多分施設の立ち位置の違いから生じているところかなとは思っています。福岡市は人口が160万人ぐらいで、起業の裾野を広くするためには、FGNの周辺に来てくれる人が中に入ってこられるように、入り口を作ってあげる必要があるので、各種の講座やアクセラレーション、メンタリングの内容については無料で提供しているものが多い状況です」

KRP田畑「私達も行政とご一緒に進めているため、起業家と一般参加者は無料です。ただ、コロナ禍でハイブリッド型にしてから、リアルに来ていただけるのは、関係者限り、と切り分けできるようになったのは非常によかったと思っています」

ASCII鈴木「最後にこの先3年先を見渡してこれからやって行くことや、課題の解決、その先にあるものなどお聞きできますでしょうか」

KRP田畑「これだけ大学が集まっている京都ですが、もう何十年も学生さんは人口減が続いていて、卒業後、定着してもらえてないところが課題です。京都で学んで、京都で会社を興し、職を作っていただく、そういった動きを加速できるように、我々も機会提供していきたいと思いますし、そのとき漠然と『起業してください』ではなく、大学からシームレスに事業化に繋がるような研究のバックグラウンドが必要な分野にフォーカスしていきたいと思っています」

OIH石飛「3年後と言うと、2025年の大阪万博が控えておりますので、それに向けて関西の方からも情報発信をしていきたいと考えています。また、スタートアップの皆様だけでなく、スタートアップ支援機関の皆様、大企業の皆様が私たちのネットワークの中に入っていただくと、よりお繋ぎやすくなってまいります。『大阪実証実験都市』も謳っておりますし、横の連携もさせていただきながら、3年後の万博と、その後の発展も目指して、皆様のゲートウェイになる機能をどんどん果たしていきたいなと思っております」

FGN仕田原「福岡市が2012年に『スタートアップ都市ふくおか』を宣言して、そこから10年が経過します。その中でFGN以外にも創業を支援するコミュニティもできてはきていますが、一番大切なことはプレイヤーを増やすこと。新規の創業をめざす起業家たちはもちろん、スタートアップと組んでオープイノベーションを加速させる事業会社だったり、あるいは行政を含めて支援を行う人たちも中から変わっていく姿勢を見せていく必要があるのかなと思っています。

 スタートアップ支援を通じてアジアナンバーワンの都市・福岡になる。そんな成長を見据えていきたいですね。そのなかで、FGNが成長の中継地点となれればいいなと思っています」

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