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月面でも農業を可能に 次世代のアグリテック技術をもつスタートアップ5社

第44回NEDOピッチ「アグリテック ver.」レポート

特集
JOIC:オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会

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ピンポイントに薬剤を利用し、農薬利用の安全性を高める
株式会社アグロデザイン・スタジオ

 株式会社アグロデザイン・スタジオの代表取締役社長、 西ヶ谷有輝氏からは「農薬を安心して使える世界」を実現するための提案が行われた。

 無農薬栽培の方が、農薬を使った栽培よりも優れている印象があるが、無農薬栽培では収穫量が大幅にダウンするというデータがある。一方で、人口増加が見込まれている中で、無農薬が推進されると食料供給に問題が生じることが予想される。

 アグロデザイン・スタジオでは、「分子標的農薬」という手法で、使用しなければならない農薬の安全性を高めることを目指している。分子標的の医薬品なども最近増えてきており、ピンポイントで作用する薬剤を投与することで目的の効果だけを得るというものだ。農薬に応用すると、雑草や害虫だけを除去して作物には影響を与えないという効果が期待できる。

 一方で、医薬品の場合には作用させる薬剤を絞り込むのが容易だが、植物に対しては育てたい作物と除去したいものが多種多様なので効果を出したい農薬を作るのが難しい側面がある。そもそも医療と比較して農業の分野では構造解析を行う研究者が少なくデータが少ない状態だったので、研究リソースの大部分を解析に費やしているという。

 そもそも農薬の開発は、化学薬品を合成してその農薬を害虫や雑草などにかけて効果がある成分を探し当てるという方法が主流で、その成分が利く理由などが不明瞭だった。どの成分がどのように利くかがわからないため、安全性に関しても保障できないものとなっている。今後、同種の農薬の規制などは進むと予想されているなかで、同社の農薬開発は意義を持つものとなる。

 現在は6つの農薬開発を進めており、うち2つは実用の目処もでてきている。

 医薬の世界では、スタートアップ由来の製薬も増えており、創薬に関しては60%以上がスタートアップという例もあるが、農薬に関しては国内ではほぼ0なうえ、世界を見てもごくわずかしかない状態。同社はこの分野で成功することで、先鞭となりたいという。

 どのような企業とのマッチングを求めるかという質問には、農薬会社との連携を求めたいと回答があった。農薬開発には膨大な資金が必要なうえ、開発後の申請や許認可などの手続きなどに関しても煩雑でベンチャーには手に余る面もある。そういった部分で大手の強みとベンチャーの強みのシナジーを期待していると示された。

 現状の課題としては、資金面の課題が大きいとあった。資金調達は定期的に行なっているものの、メーカーや商社などとの提携によって安定した資金を得たいという。また、様々な補助金などに関しても一旦支払った後で要した金額が後日支給されるなどの仕組みにも言及。事後支給の場合資金繰りに難航することがあるので、柔軟な運用をお願いしたいと希望があった。

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