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大阪・関西万博「XR観光」の先駆けに

「大阪・関西万博2025が提示する新しい『交通インフラ・コミュニティ・観光』の可能性」レポート

連載
JAPAN INNOVATION DAY 2022

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地方は「長尺XR」向け

玉置氏 有年さんに説明していただいた移動VRは、ぼくが提唱したメタ観光を、新しいテクノロジーで現実とバーチャルなものを重ね合わせて、しかも移動しながらできるというものだった。これを大阪万博や大阪という場所でやっていけそうな予感やアイデアはあるか。

有年氏 親会社のティアフォーという自動運転ベンチャーが、夢洲で駅から会場までの自動運転バスやタクシーなど、自動運転交通の実証を進めているところ。その中で、未来の大阪や新しい技術を見せることを目的に、移動中に体験できるVRシステムなどを開発している。これがまずは実証実験ということで、うまくいけば万博の後もそのまま実装されることになるのでは。

玉置氏 あまり東京VS.大阪ということを強調しても……と言うところもあるが、やりやすい、やりにくいなど、土地の個性等はあるか。

有年氏 地域柄ではないかもしれないが、大阪万博を目標に開発を進めるにあたってはゼロベースに近い形で土地開発が進められているので、どういう形で地域の観光資源を見せるかということは制約を考えずに進めていける。一方、東京の自治体はXRを何に使えばいいかというイメージができた上で事業が進められているが、大阪商工会議所でディスカッションしたとき、大阪地域はXRといっても東京と比較するとまだ進んでおらず、関心はあるものの、何に使えるかという議論から始めている。そういったところから進めていかなければいけないというところはある。

玉置氏 指出さんは人間ベースというか、テクノロジーも使いながら人を見てきた。有年さんの話を聞いて思われることはあるか。

指出氏 ローカルな話をすると、西日本エリアは東京とほぼ同じくらいの感覚。大阪があって、京都があって、兵庫があって……というふうに、それぞれの多様性が保たれている面白い街々だと思っている。一方、中山間地域に足を運ぶときはものすごく長い移動の時間が必要。4時間ぐらいかかったりする。途中の風景を眺めるのも大事とはいえ時間が長い。そこで何を楽しむかといえば、有年さんの技術などを使い、その土地にいる人たちの事前のレクチャーなどがあると街に入りやすいだろう。そこでまちに関わる2段階認証みたいなことが行なわれると事前知識として入って来やすいのではないか。地方で事業のコンペがあるとき、2時間半の移動時間をどう使うかということをいつも考えている。地域の歴史なのか、おいしいものなのか、それをARやXRなどの形で知れるようになると地域への密着度が深まるんじゃないか。

玉置氏 たしかに都市部だと移動時間はあまり長くない。結局せっかく面白いコンテンツを作ってもいかせない可能性はある。

指出氏 たとえば東京メトロには「メトロミニッツ」というメディアがあるが、あれは5分の移動の間に読めるコンテンツが集合している。長尺のものを楽しめるのがローカルな強みだ。Netflixでもいいが、もっと違うものを有年さんが考えられている。

有年氏 まさに弊社が考えているのは同じようなところ。最初に実証実験を始めたのは池袋だったが、去年12月から販売を始めた横浜京急のバスツアーに関して言えば、東京から首都圏を離れてもうちょっと移動するというものだった。まち全体で建物や敷地面積が広くて、10分や20分かけて移動する中で体験できるコンテンツはどういうものなんだろうと。横浜市は時間をかけて回遊できる。水陸両用バスやロープウェーなどなど様々なモビリティで。東京のように密集していないもうちょっとローカルなエリアでは、時間をかけて体験するコンテンツと言うものの需要が出てくるんじゃないかと思っている。

「寛容の都市」としての大阪

玉置氏 最後に一言ずつもらいたい。スマートシティという言い方を最近よくしているが、新たな中心を生んでしまうというのは違うなぁと言う気もする。これからの大阪は実験都市やスマートシティだが、今みんなが思っているイメージとは違うんじゃないかと思っている。

指出氏 まちづくり用語に「軸ずらし」と言うものがある。ある場所で地域づくりの目まぐるしい功績が起きた場所が10年後、20年後と続くかというと、変化がないとマンネリ化してくる。ある軸ができたときは、その軸を反駁しない形でもう一つ柔らかい軸を作るのがまちづくりの基本原則だ。東京も大阪も確固とした地位がある街だが、新しい軸として大阪がフィーチャーされるのはいいことだと思う。大阪でないとありえないコミュニケーションのようなものを常々感じている。社会的に弱い人たちに寄り添う姿勢がしっかりしているNPOがたくさんあるのが大阪だ。「いのち輝く」万博という言葉からそのことが伝えられることで、人に優しいことのお手本になっていくということでいいんじゃないか。東京2020で多様性や思いやりといったものが若い人たちの間にあらわれて発動したと思う。それを次に実装するのは間違いなく万博だ。ソトコトに出てくれている20代や30代のイケてるみんなは「愛・地球博」チルドレンだったりする。万博の時代にそういうものを学んでいる心優しい人たちだ。国がやっていることは自分たちのライフスタイルに作用している。万博チルドレンと言う人たちが大阪から生まれてくるだろうと思う。新たな軸としての大阪があって、そこから寛容なまちづくりが生まれてくるといいなぁと思う。

玉置氏 有年氏にも、「大阪でこんなことやりたいんや」と言うことがあれば。

有年氏 サービスに紐付いた話になるが、大阪万博の委員会が考えている「これぞ未来の大阪」というものだけではなく、コンシューマージェネレーテッドな形の大阪が提示されていくといいのではないか。移動中のXR技術のようなプラットフォームを提供しつつ、そこではもっと大阪市民の方々から提案される大阪像が表現できるといいのではないかと思う。

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