脱炭素社会をリードする革新技術のバッテリーが期待のスタートアップ5社
第42回NEDOピッチ「次世代バッテリーTech ver.」レポート
世界初の交流蓄電池で日欧市場に挑む
AC Biode株式会社
既存の蓄電池には容量不足と安全性に関する課題を抱えている。一方で新たな素材などの開発には大きな時間とコストがかかる。そこでAC Biodeは既存の電池及び製造ラインを活用したモビリティ及び蓄電向けの交流蓄電池とそれに付随する回路の開発を行っている。
AC Biodeの交流蓄電池の構造は下図のようになっている。Biode(負極:Anodeと正極:Cathodeの間を意味する)という両性電極を開発し、電池単体で交流電気を発生させることに成功した。既に日本で特許を取得済み、欧州でも出願を完了している。
この交流電池の特徴としては、まず正極と負極の間に両性電極を挟んでいるため、電極間の電位が通常の半分になっている。このため安全性が高まり、歩留まりの向上に貢献している。また、ライフタイムが2倍程度伸びることもメリットの一つとなっている。
AC Biode社は電池単体でなく周辺回路も開発しており、シンプルでコンパクトな回路とすることにより全体ロスとエレクトロニクスコストを削減し、同時に昇圧回路を採用することによって15%程度の容量増加を実現した。加えて、現在はリチウムイオン電池をベースにしているが、それ以外の電池にも応用可能という点も同社の交流電池のメリットとなっている。電動自転車で実証実験を実施しているところである。
「これまで電池は中国が世界一の市場だったが、最近欧州はEVや蓄電に力を入れており、2025年前後には中国を抜いて世界1の市場になる。補助金なども充実しており、日本だけでなく欧州も視野に入れたビジネス展開を狙っている」(AC Biode 代表取締役社長 久保直嗣氏)
日本以外にルクセンブルグとイギリスに拠点を持ち、欧州バッテリー連合のトップを務めるEU傘下EIT InnoEnergyから出資を受けているつAC Biode社は、近い将来、蓄電池産業における台風の目になるかもしれない。