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非効率な営業を自動化するリードジェネレーションシステムを開発運営するベンチャーなど5社登壇

TIS主催「第13回スタートアップソリューション紹介オンラインイベント」レポート

特集
ASCII STARTUP イベントピックアップ

 TISインキュベーションセンター主催の「第13回スタートアップソリューション紹介イベント」が、2021年3月24日にオンライン開催された。前回10月のオンライン開催に続いて3回目となったが、今回もスタートアップ5社のサービス、ソリューションのピッチが行なわれた。その模様をお届けする。

TISインキュベーションセンターから「TISインテックグループイノベーションハブ」および「XR Campus」について紹介

 2021年4月、豊洲にてオープンした「TISインテックグループイノベーションハブ」(以降、TIH)は、TISインテックグループ社員と、各研究機関・企業様等とのコラボレーションを促進する場だ。

 「XR Campus」は、さまざまな事情によって集まることが難しかった場所や体験、人に対して、XR技術を使って空間を創造し、新しい生活様式のなかで新たなコミュニケーションを実現する各種サービスを提供するというもの。TIHもXRサービスのショールームとして活用していく予定で、現在オープン前にも関わらず、すでに10社程度から問い合わせがきている。

「XR Campus」のビジョン

XR技術でさまざまな空間を創造する XR Campusシリーズ

 なかも「XR Campusツアーサービス」は、360度動画をベースにした空間上にアバターで集まり、移動や、音声・チャットでコミュニケーションできるサービス。iPhoneアプリ「XR Campusツアーサービス」のツアー動画を用いてTIHを紹介し、イメージを共有した。

XR Campusツアーサービス

非効率な業務を自動化するセールスオートメーションプラットフォーム「APOLLO SALES」

株式会社Onion
URL:https://www.onion.co.jp/

株式会社Onion 代表取締役社長 川村亮介氏

 株式会社Onionは、営業活動のデジタル化を大きなテーマとし、サービス・事業を展開する企業。2017年より、営業改善RPAツール「APOLLO SALES」(アポロセールス)を提供開始し、およそ500~600社の導入実績がある。代表取締役の川村亮介氏と取締役の伊藤信敬氏を中心に、アドテクバックグラウンドの経営陣でリードジェネレーション=アドテクノロジー×セールス領域に取り組んでいる。

APOLLO SALES

 APOLLO SALESは、新規のアポイントを獲得するためのリードジェネレーションシステムだ。アタックしたい企業の条件を指定すると、インターネット上にある企業情報から営業アタックリストを作成してくれる。「業種」「所在地」「資本金」「従業員数」などを絞りこんで、自動で企業リストの収集を行なうことが可能だ。

 従来の営業であれば、その後1件1件電話をかけるという作業が必要だが、APOLLO SALESでは、まずメールと問い合わせフォームからアプローチを行なう。次にレスポンスのあった見込み客を抽出し、効率よくアポイントメント獲得まで進めることができるというもの。たとえば、資料を読んでくれたお客様には、その後「くわしく営業からご説明します」というフォローすることができる。

データの力で営業DXを実現する

 現在は、社員数100名以下位の中小企業をターゲットとし、月額約10万円程度のサービスを提供している。ツールを提供しながら、「どの企業が、いつ、どの資料に、どのような反応を示したのか」をデータとして蓄積することにより、「半年前にこの商材に興味を持った会社が今何を必要としているか」「この商材に興味を持った会社と、同じようなジャンルの会社なら、反応がいいかもしれない」など、日本の企業がどのようなBtoBの商材に興味があるのかを分析。データのチカラで効率の良い営業活動を実現することが可能になる。

TISとの事業提携

 セールスDXプラットフォームを一緒に作っていこうと、TISとの事業提携も行なっている。第1弾として、「Sales Lab」と組んで、営業現場のヒアリングから見込み顧客とのコミュニケーションプランの作成、実行、そしてレポーティングや次へのアクションプランの策定までを一気通貫で実施するという準備を進めている。新規のサービスや機能の洗い出しなどを行なっており、順次エンタープライズ向けの機能も追加していきたいと考えている。

 「ターゲットリストの元となるデータソースは何になるのか?」という質問に対しては、ウェブで公開されている情報に加え、4月以降は企業情報をお持ちのベンダー様との提携し、肉付けを行っていくので精度も上がっていくという回答があった。

データ読み取りを通じて企業、消費者、モノとの関わりに変革をもたらす、次世代のコンピュータビジョンソフトウェア

スキャンディット合同会社
URL:https://www.scandit.com/jp/

スキャンディット合同会社 日本法人における事業責任者 関根正浩氏

 Scandit(スキャンディット)は、エンタープライズ向けモバイル・コンピュータービジョンのリーディングカンパニー。「画像認識システム」と言われ、コンピューターが人の目に代わりデジタルな画像、または動画を識別するコンピュータービジョンという研究分野で、モバイルに特化した独自のコンピュータビジョンの開発販売を展開している。

 もともとスイス・チューリッヒの発祥なので、ヨーロッパに拠点が多く、北米にもビジネスを展開、2020年11月19日に、日本法人であるスキャンディット合同会社を設立した。企業向け「Scandit Barcode Scanner SDK(ソフトウェア開発キット)」を全世界に提供しておりアメリカやヨーロッパの1000社以上の企業に採用されている。

日本でもイオンリテール株式会社など、20社以上の導入実績がある

 同サービスは、倉庫など照明の暗い環境に置かれたラベルや破損したバーコードなど、悪条件下における読み取りをスマホで実現。迅速かつ正確なスキャンを可能としている。また、マトリックススキャンと呼ばれる、複数のバーコードを一括して読み取ることもできる。

マトリックススキャン(複数バーコード一括+AR)

 高価な専用端末が不要なので、コスト削減や業務効率化などに貢献。バーコードの読み取りに企業リソースのすべてを費やしているので、エンタープライズレベルのサポートやメンテナンスを提供でき、iOSやAndroidのバージョンアップにも確実に対応していることが大きな強みだとしている。

 「POSシステムとの連動実績はありますか?」という質問に対しては、「もちろん、あります」、誤読率に関しては、「環境に依存するが、チューニング前の状態でもほぼ100%の精度を用意している」と回答があった。

バーチャル空間を活用した次世代事業の創出拠点、VRイノベーションタワー「NEUTRANS」

株式会社Synamon
URL:https://synamon.jp/

株式会社Synamon 執行役員 武井勇樹氏

 株式会社Synamonは、2016年8月8日に設立したスタートアップで、VR、AR、MRプロダクトの企画開発、XR技術の研究開発を手がけている。ミッションは「XRが当たり前の世界をつくる」。スマートフォンと同じように、VRやARが当たり前に使われる世界を作っていくことを目指している。

 同社の執行役員 武井勇樹氏は、「この1年はコロナ禍における課題と解決策に取り組んできた」と語る。Synamonは、テレワークの普及により求められている「さまざまなビジネス活動ができる場」として「バーチャル上のビジネス空間」を提供するという。

バーチャル空間でさまざまなビジネス活動が実現できる次世代事業の創出拠点

「NEUTRANS」(ニュートランス)のユースケース

 VRイノベーションタワー「NEUTRANS」とは、世界中どこからでも働けるオフィス。リモートでもリアルな体験を可能にするトレーニングや、開発予定の未来都市を見学できるプロモーションなどに活用可能。すでに、バーチャル会議やバーチャルセミナー、遠方にある工場見学、複数名が登壇するトークセッションなどで利用されており、PCモード画面で操作できるため、VRゴーグルを持っていなくても利用できるという。

KDDIや三井不動産、日本総研などが導入

 特定分野の企業ではなく、通信業や不動産業、コンサル業、製造業など、多様な業界の企業が導入している。それぞれ、実際のオフィスや現実にはない世界など、要望に応じて、独自のバーチャル空間を作成することも可能となっている。

KDDIの導入事例

 KDDIの場合、コロナ以前は遠方の人に向け、施設を案内する目的での導入だったが、コロナ禍ではリアルで実施されていたオフィスツアーや打ち合わせをバーチャル上で行なっている。また、三井住友海上火災保険では、バーチャル上に事故車の査定研修所を再現し、メジャーやカメラ機能を活用。リモート下でリアルさながらの研修を実現した。

 さらに、NEUTRANSを軸とした技術と、業界ならではの特性やノウハウにより、共同で新しい事業をやサービスを創出していきたいとも語った。事業パートナーとしては、「VRトレーニングのプログラムを新たに構築したい研修会社」「バーチャル技術を活用したプロモーションを提案したい広告代理店」などをイメージ。現在は、クリークアンドリバー社やNECネッツエスアイなど、5社の企業がプログラムに参加している。

直近の注力テーマは、「XR活用でより大きな価値を出せる領域の検討」

 さらに、建設業や製造業という3次元のものを扱うマーケットで実務に活用できるユースケースを検討中。マネタイズに関しては「2つの柱があり、1つはNEUTRANS というシステムを使うライセンス使用料、もう1つはCGを作るなどのカスタマイズ部分は別途開発費をいただいている」という回答があった。TISインキュベーションセンター「XR Campus」とも、何か一緒にやれることがあれば…… というコメントもあった。

会社を超えたコラボレーションが楽しくなるツールキット

株式会社パルケ
URL:https://parque.io/

株式会社パルケ 代表取締役CEO 鎌田大輔氏

 2020年6月19日に設立した株式会社パルケは、会社を超えたコラボレーションが楽しくなるツールキット「パルケ」をローンチすることを計画している。現在は、オープンβテストという位置づけで、2月19日から招待制でプロダクトの改善を繰り返しており、5月ごろに正式リリースとなる予定だ。

会社を超えたコラボレーションが楽しくなるツールキット「Parque(パルケ)」

 パルケは、会社を超えたコラボレーションが楽しくなるツールキット。コミュニケーション系の機能はチャットやボイスチャット、マルチ画面共有、コラボレーション系の機能はメモやファイルのストレージ、ホワイトボードなどがある。それぞれシンプルで使い勝手がいいものをワンパッケージで提供。チャットはSlackを使ったり、メモはConfluenceを使ったり、ファイルのストレージはDropboxを使ったりして、バラけてしまいがちなところを、ワンパッケージにすることを目的としている。

どこでファイルをやりとりしたか分からなくなる状況

 パルケでやりたいことはビジネスのコラボレーションをアップデートすること。特に会社をまたいだコラボレーションをアップデートしたいと考えている。以前はメール中心だった社内のコミュニケーションがコロナ禍でDXが進展。しかし、会社間はEメールやSNSなどが入り乱れた状態が続いている。連絡手段だけではなく、オールインワンのプロダクトでリプレイスすることが狙いだ。

 ニューノーマルを見据えた設計になっており、社外のゲストを無料で簡単に招待することができる点や、リモートワークにおけるマネジメントが可能になるところが特徴。業務を引き継ぐ際などは、過去のメールをすべて転送するといった作業は必要なく、後任をパルケに招待するだけで社外とのチャットやファイルをすべて共有できる。また、従来のビジネスアカウントは転職すると解約されてしまい、社名変更時もアドレスの変更が面倒といった問題があったが、パルケなら個人アカウントはずっと有効なので、パルケユーザー同士はずっとつながっていることが可能となる。

2021年5月に正式リリース予定

 すでに英語化も進めており、日本で働く英語圏の方、次に海外という展開を考えている。セキュリティーに関しては「本番に向けて少しずつ準備を進めている段階。サブドメインで入り口を分け、IPアドレスの制限をかけてセキュリティを担保していこうと思っている」という回答があった。

東京都からの受託事業「5G技術活用型開発等促進事業(Tokyo 5G Boosters Project)」に関する活動の紹介

「Tokyo 5G Boosters Project」に関する活動のご紹介

 TIS株式会社ビジネスイノベーション第一部マネージャー 水船 慎介氏から、「5G技術活用型開発等促進事業(Tokyo 5G Boosters Project)」に関する活動の紹介があった。ビジネスイノベーション事業部では、コンサルティングサービスの提供のほか、事業企画を起点とした、会社の事業構造改革の企画・推進などを行っており、その一環で5Gに関する取り組みを推進している。

東京都「5G技術活用型開発等促進事業」について

 東京都の「5G技術活用型開発等促進事業」では、5Gを使った事業を始めたいスタートアップ企業に対して、さまざまな支援を実施するというもの。活動は、2020年~2023年の3年間で最低5社のスタートアップを選定して事業化まで導いていくことを目指している。通信キャリアや、5G機器を開発しているベンダ、事業会社・大学研究機関などと一体になって進めていくプロジェクトとなっている。

本事業でのステークホルダーとの連携体制

 事業化の具体的な活用テーマは、「暮らす」「楽しむ」「健康」の3つ。TISでは、「Tokyo 5G Boosters Project」はあくまできっかけであり、施策終了後も中長期でサポートを継続し、5G技術を社会インフラとして浸透させるための理想の都市実現、社会実装を目指している。

支援先スタートアップ企業

 スタートアップの技術・ソリューションを活用したい事業会社や、5Gを活用した新たなビジネスを創出したいスタートアップ事業も募集している。

グローバルなオンライン会議での多言語コミュニケーションとAI通訳ソリューション

株式会社オルツ
URL:https://alt.ai/

株式会社オルツ 副社長 米倉豪志氏

 2014年11月に設立した株式会社オルツは、デジタルクローンという技術を世界で初めて実用化した企業。デジタルクローン技術によるP.A.I.(パーソナル人工知能)「Alt」(オルツ)の開発、提供、および人工知能・人工知能関連技術の研究・開発、これらサービスに関するコンサルティング・企画・開発・運営などをしている。

デジタルクローン技術を使ったサービス「AI通訳」

 デジタルクローン技術を使ったサービスのひとつが「AI通訳」である。オルツのデジタルクローン技術と超高速演算技術を活用し、ビデオ会議での音声と映像をリアルタイムに書き換えることで、あたかも当人が多言語を話せるかのような状態を作り出すことが可能となった。現時点で約30言語に対応。変更したい言語をクリックするだけで、話し手の映像のまま、言語を切り替えることもできる。

 回線スピードによる誤差に関しては「現状はWi-Fi環境や有線環境で行なっているが、5Gになってくるとベストな環境に近くなると期待している」と回答。デジタルクローンの学習期間については「先ほどの映像にあった、当社社長のデジタルクローンは、過去5年分の個人のメールやチャットやSNSなどすべてのデータを元にしている。しかし、アンケートシステムNulltitudeであれば、SNSの投稿データ3ヵ月分くらいあればクローンが出来上がる」、通訳の精度に関しては「通訳エンジンじたいは外部のものを使用している。実際に実験している感触では、AIの翻訳の精度はかなり高いものになっていると思っている。音声認識が翻訳に追いついていないという印象」というコメントもあった。

 最後に、次回は5月、6月の開催を検討しているというお知らせがあり、終了となった。

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