アウトドア新市場を開拓 レンタルに特化したECモール・在庫管理ツールを提供するTENT
新たなアウトドアファンの開拓を目指すTENT代表に話を聞いた
株式会社TENTは、キャンプ用品レンタルサービス「TENTAL」の自社運営およびアウトドア用品中心のレンタルモール「カウリル」の運営、在庫管理システム「ZAIKA」を開発・提供するスタートアップ。アウトドアブームのなか、アウトドア用品やDIYグッズなど趣味領域にターゲットに、レンタル後に購入できるサービスとして、メーカーへの新たな市場の提供、消費者の購入体験を刺激することで新しいアウトドアファンの開拓を目指している。代表取締役 松田 基臣氏に、サービスを始めたきっかけと特徴を伺った。
借りて試してそのまま買えるレンタルモール「カウリル」
カウリルは、レンタルと販売を組み合わせたストア出店型のレンタルモールだ。フリマアプリでのモノのシェアリング、サブスクが一般化し、消費者の志向は所有から利用へと移ってきている。しかし、既存のアウトドアメーカーにとっては、いきなり自社で新たにレンタル事業を立ち上げるのはリスクが高い。カウリルへのモール出店であれば、既存のアセットを有効活用でき、自社商品がサブスクにマッチするかどうかを手軽に試せるのがメリットだ。
消費者側も、キャンプやBBQをするのはせいぜい年に数回。専用のグッズを揃えたいけれど、使わない期間は収納場所も必要で購入はハードルが高い。カウリルでは、商品をレンタルした後に返却するか、差額を払って購入するかを選べるのがうれしい。
株式会社TENTは2017年7月に設立。もともとアウトドア好きだった松田氏がキャンプメディア「CAMPIC」の運営を始めたのがはじまりだ。
「子供が生まれてしばらくはキャンプに行けなかったのですが、子供が大きくなり、いざ一緒に行こうと調べてみたら、かなり状況が変わっていたのです。今どきのキャンプの情報がまだ少なかったので、自分でメディアを立ち上げました」
メディアを運営し情報収集するなかで、アウトドアメーカーやキャンプ好き仲間とのつながりが生まれ、これを仕事にしたいと考えるようになったという。2017年9月にキャンプ用品のレンタルサービス「TENTAL」の自社運営をスタート。蓄積したレンタルのノウハウをプラットフォーム化したのが「カウリル」だ。
趣味用品は、所有欲を掻き立てられるものだ。一度レンタルして使えばモノの良さもわかるため、家族からの同意も得やすい。また価格も中古相場を参考に設定されており、支払うのは、商品代金からレンタル費用を引いた差額だけなのでムダがなく合理的だという。
レンタルサービスに特化した在庫管理システム「ZAIKA」
さらに同社では、初めてレンタルを始める企業に対して、運用管理サービスも提供している。とくにアウトドア用品の需要は、オンシーズンの週末に偏る。学校やサークルのイベントなどでは数百個単位で注文が発生する場合もあり、発送や返却が集中するという。代行費用は利益の50%で、商品を倉庫で預かり、発送・返却、検品、メンテナンスなどを請け負っているそうだ。
利益率の低いレンタル業にとって、オペレーションの効率化/最適化や在庫データの管理は非常に重要な要素だ。しかし、既存の実店舗型レンタルサービスは、発送や検品は手作業によるアナログな管理がほとんどで、梱包もれのミスが起こりやすく、検品や在庫管理にもコストがかかっている。
この問題を解決するために開発したのが、RFIDを活用した在庫管理システム「ZAIKA」だ。ZAIKAは、1つ1つのレンタル商品にRFIDタグを取り付けてアプリで管理するシステムで、発送/返送時の検品チェックをリーダーで一括して行える。梱包もれや商品の間違いが防げるうえ、注文/返却数からKPIが自動的に算出され、在庫単位の稼働率や収益率を可視化できる。
近年RFIDタグの単価は下がっており、またレンタル商品ならタグを使い捨てないため仕組みとして非常に相性がいい。レンタル事業におけるデータ可視化が容易にできるため、収益性向上も見込みやすい。
ZAIKAは、同社とパートナー企業のレンタルサービスでの運用を開始しており、8月からはカウリルとのAPI連携を開始する予定。またZAIKA単体で、他社のレンタルサービス向けへの提供も進めている。
いまのところカウリルの出店者は、キャンプや登山用品などアウトドア系のストアが中心だが、家電製品やアパレル、楽器など趣味領域への拡大を進めている。直販チャネルを持たないメーカーにとって、自社でECサイトを立ち上げ、オペレーションを構築するには時間がかかるが、運用代行とZAIKAによる在庫管理システムをセットで提供できるのが同社の強みだ。今後は、大手メーカーと組んで、メーカー公認のレンタルストアを増やし、日本最大のレンタルプラットフォームへと成長させるのが目標だ。
さらに、アウトドアのすそ野を広げるため、メディアの運営、企業向けのキャンプ研修プログラムも展開。新型コロナの影響でしばらく休止状態だが、リモートワークが進むなか、オフラインでのイベントやチームビルディングとして一層需要は高まりそうだ。