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知財で読み解くITビジネス by IPTech第7回

NIKEの特許に見る、ブロックチェーン技術の事業展開動向

2020年01月08日 07時00分更新

文● IPTech特許業務法人

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スタートアップと知財の距離を近づける取り組みを特許庁とコラボしているASCIIと、Tech企業をIP(知的財産)で支援するIPTech特許業務法人による本連載では、Techビジネスプレーヤーが知るべき知財のポイントをお届けします。

ナイキがブロックチェーンに関する特許を取得

 12月10日、NIKE(以下、ナイキ)が出願した「ブロックチェーンによるシューズのトークン化」に関する特許が米国で登録になりました。

 参考:ナイキ、靴のトークン化で特許を取得 イーサリアム規格でデジタル資産として売買も

 今回は、ナイキが取得した特許の内容を紹介しながら、ブロックチェーンの今後の実用化・事業展開の方向性について考えてみたいと思います。

ナイキが取得した特許の概要とその背景

 初めにナイキが取得した特許の概要を説明します。

 デジタルデータは不正な販売や複製の対象となりやすく、ブランド価値や、収集の対象となりえるデジタルオブジェクトの価値を損なうおそれがある。デジタルオブジェクトの供給量を制御することで、希少性を維持する。
 このようなデジタルオブジェクト(デジタルシューズ)の供給量を制御するために、デジタルオブジェクトが取引された履歴をブロックチェーン技術により管理する。

 ナイキは今年5月に人気ゲーム『フォートナイト』とのコラボ企画を実施、ゲーム内の限定スキン(キャラの見た目を変更させるアイテム)としてナイキのロゴが描かれたシューズや服を登場させています。

 現実世界だけでなく、ゲームやSNSなどデジタル空間においてもファッションアイテムを提供していくにあたり、靴に関するデジタルオブジェクトの取引履歴をブロックチェーンを用いて管理する技術を開発した、というのが大まかな内容となります。


フォートナイト X Jumpman(ナイキ×フォートナイト)

現実世界とデジタル空間の連動

 デジタルオブジェクトの管理と言っても、今回の特許で提案されているのはデジタル空間に限定した内容ではありません。むしろ、「現実世界の製品や体験をデジタルオブジェクトと連動」させる事例が複数書かれています。

 一例として「現実世界でシューズを購入すると、それに対応したデジタルシューズが配布される」といった使い方ができます。

 ブロックチェーンを活用して物品の所有権管理を行う手法は過去にも提案されていますが、単なるデータではなくデジタルシューズという別の資産として管理することで、ユーザーに様々な体験を提供することが可能になります。

 特許中には「プロスポーツチームが、開幕戦の来場者に限定デザインのデジタルシューズを配布する」といった例や、「外部のゲーム(『フォートナイト』など)に対して、デジタルシューズをインポートしてゲーム中のキャラに身に着けさせる」といった例が挙げられています。

デジタルシューズの交配による新たなユーザー体験

 また、デジタル資産ならではのアイデアとして「デジタルシューズ同士の交配」が挙げられています。

 ブロックチェーンに実装されたゲームでは、ユーザーが保有する仮想子猫同士が交配することで、新たな仮想子猫(デジタル資産)を得るといった事例が既に存在しています。

CryptoKitties

 参考:Ethereumブロックチェーン上で仮想仔猫の売買が流行、わずか数日で100万ドル以上の取引が行われた

 ナイキの特許では、子猫ではなくデジタルシューズを交配させることで新しいデジタルシューズを得るといった事例が挙げられています。

 さらに、「2人のユーザーが物理的に近くにいる場合のみ、シューズを交配可能とする」ことでユーザー間の交流を促したり、「ランニングすることで、シューズを交配可能とする(シューズの年齢を設定して、運動量に応じて育つ)」ことで運動を促したり、あるいは「特定の場所に行くことで、交配時に有利になる特性が発現する」ことでマーケティングに活用するなど、こちらでも現実世界とのリンクを意識した記載が多数見られます。

今後のブロックチェーンの活用事例予想

 最後に、これまで説明してきたナイキの特許の内容を元に、今後のブロックチェーンの活用事例について予測してみようと思います。

 1つ目は、「現実世界で流通する商品への付加価値付与」です。

 スニーカー等のファッションアイテムが投資対象として取引されるケースが増える中、商品が本物であることを保証するだけでなく、その商品に対応したデジタルシューズを紐づけ、デジタルシューズに様々な形で付加価値を付けることで、商品自体の価値をさらに高めるといった活用方法が考えられます。

 参考:バブル再び? 中国で高級スニーカー投資が過熱

 2つ目は「現実世界とデジタル空間での体験の連動」です。

 記事前半で「プロスポーツチームが開幕戦参加者に限定デジタルシューズを配布」「デジタルシューズをゲーム内にインポートして使用」という特許内の記載を紹介しましたが、この2つを組み合わせると、例えば「開幕戦に参加した熱狂的ファンが、ゲーム内でオフ会を開く」といった使い方が可能になります。

 現実世界でのユーザー体験とデジタル空間でのユーザー体験がデジタルシューズの価値に上乗せされていき、それが紐づいた現実世界の商品(シューズ)の価値向上にもつながっていく。ナイキの特許からはそんな未来が見えてくるように思います。

特許庁の知財とスタートアップに関するコミュニティサイト「IP BASE」では、必ず知るべき各種基礎知識やお得な制度情報などの各種情報を発信している

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著者紹介:IPTech特許業務法人

2018年設立。IT系/スタートアップに特化した新しい特許事務所。
(執筆:佐竹星爾)

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