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海外展開に向けたスタートアップと知財戦略

スタートアップ×知財コミュニティイベント by IP BASE in 大阪レポート

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スタートアップはどう訴訟に備えるべきか

菊地:海外における訴訟対応について、スタートアップはどう準備すべきだろうか。現実問題として権利行使は可能なのか。あるいはパテントトロールから訴えられたらどうすべきか。海外での現状を教えて欲しい。

佐田:すでにコピー商品が出回ってはいるが、完成度の低さやデザイン・素材等の面で作りこみが甘いといったところがあり、我々のお客様には届いておらず、まだ訴訟には至っていない。ただ、構造や意匠は非常に大事なものなので、けん制効果も含めて知財の取得を進めている。

金野:1件2件の特許では戦えないので、ポートフォリオを組む必要がある。必要があれば外部から資金調達を行う。そして海外特許訴訟で勝訴判決や差し止め請求を得た経験を持つ投資家や専門家を味方につければ、抑止効果も期待できる。

菊地:特許庁も海外出願の資金的な支援をしており、そういうことももっとアピールしていかなくてはいけないと感じた。

長野氏:日本国内のベンチャー市況はかなり活発で、上場件数も金額ベースも増えている。日本独自の技術を取り込む海外企業も増えてきている。そのようなM&Aが行われるときにはまず知財が大事になる。知財を基盤とした事業計画で買収をしてくるケースが多いので、事前に言っていたストーリーと合致しないパテントだったりすると、買収完了後に問題になったりもする。

井関氏:知財は訴訟や権利行使をやってこそ意味が出てくる。スタートアップには難しいと思うが、いかに良いパートナーを見つけるかというのは大事である。シリコンバレーの特許事務所には、スタートアップ向けに入居スペースを用意しているなど、スタートアップへの支援体制を用意している事務所もある。

 自分が進出する国であったり、逆にライバル企業が日本に進出してくる場合でも相手の国の特徴、訴訟に対するスタンス、その企業のスタンスを理解しておくことは大事。米国にはパテントトロール専門の弁護士がおり、彼らは成功報酬で巻き上げた金の50%を受け取る。逆に攻める側ならそういうところを使う手もあるかもしれない。

菊地:最後にパネラーから海外進出に向けて気を付けるべきことや期待することなどがあれば聞かせていただければ。

長野:慎重になるべきと言う話が主体となりましたが、一方で海外で事業を伸ばすのは大事なことでもあるから、諸先輩方の知見を確認してもらって、同じ失敗をしないようにしてもらいたい。

金野:今日このイベントに参加した時点で、皆様は志を高く持っていると思う。海外に行こうという志は非常に大事。ぜひ今後もその高い志を維持して欲しい。

井関:今日は主に特許の話をしたが、ブランド、商標、自社のものでなくても他社の有名なブランドに乗って自社のブランドを伸ばすということもできる。デザインを活用している海外のスタートアップもある。特許以外のことも考えて欲しい。

佐田:当社はいろんな支援を有効に使わせていただいて、社内にないリソースを活用しながら展開している。ぜひそういう制度を研究して積極的に海外に展開してもらいたい。

 今回のイベントでは、海外進出企業すべてが恐れる訴訟問題にフォーカスして事例紹介や議論が行われた。海外からのニュースなどで、訴訟に際して過去のメールが証拠となった事例を見聞きする機会はあったが、そういった紛争に巻き込まれるのは大きなビジネスをしている大企業が中心であるというイメージがあった。

 しかし、実際には数多くのベンチャーが知財訴訟に巻き込まれているという現実があり、スタートアップだからと安穏としていられないことが分かった。特にクオンタム社の本蔵氏による対策紹介は、その準備にかかる手間やコストの面で、極めて重要な参考事例となったのではないだろうか。

 本イベントは、今後も日本各地での開催が予定されている。ASCII STARTUPでもイベント開催の前には告知を行うので、グローバル展開を志しているスタートアップの方々は、世界で戦う武器を手に入れるためにも、ぜひ参加して欲しい。

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