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松村太郎の「"it"トレンド」 第268回

誰でも手に入るDJI OSMO Pocketの使い方で見えた香川照之さんのスゴさ

2019年08月07日 10時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

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 昨今、個人が手に入れることができる映像製品の進化は、本当に進んでいると思います。放送などのプロの世界で使われる機材と、我々が手に入れ気軽に毎日持ち歩ける機材が同じになってきたと言うべきでしょうか。

約4万5000円で販売されている小型の小型4Kジンバルカメラ「DJI Osmo Pocket」

 たとえばスマートフォンに内蔵されているカメラは1000万画素をとうに超えており、2つ、3つのセンサーが機械学習処理を伴いながら写真を「作り上げる」仕組みが当たり前になりました。

 もちろん写真の善し悪しは、センサーの画素数だけでなく、レンズ、環境そのものの光、そして映像であれば、なおさら撮影者の意図など、数多くの変数が伴います。しかし、iPhoneで撮影したとしても、大判のプリントに耐える画質になりましたし、4Kテレビに映し出しても十分キレイな映像を、手元の機材で撮影できるようになったのです。

 日本のテレビ番組を見ていて、日本を離れた8年前と比べて非常に驚いたのは、我々の手元にあるデバイスが撮影に数多く活用されているという点です。

 特にロケの番組では、ドローンを飛ばした映像をよく目にするようになりましたし、ロケ中に映り込む様子を見ると、GoProだらけといっても過言ではありません。手の平サイズで防水、約5万円のカメラで、十分放送用にも使える4K映像が撮影できるというのは、とても画期的なのかもしれません。

OSMO Pocketを使いこなす香川照之さんの「香川スタイル」

 これはテレビ番組ではないのですが、最近テレビコマーシャルを見ていて気になったのが、「トヨタイムズ」の映像でした。

 俳優の香川照之さんが編集長を務めるトヨタ自動車のオウンドメディアで、CMではDJI OSMO Pocketを持って、トヨタの開発現場などさまざまな場所をインタビューしながら取材する様子が映し出されるのです。

 OSMO Pocket(https://www.dji.com/jp/osmo-pocket)は手の平にもすっぽりと収まる、スタビライザー内蔵のカメラです。1/2.3インチセンサーとF2.0の明るいレンズの組み合わせで、物理的にカメラを固定することから生まれる、ビシッと止まった安定した映像を撮影することができます。

 このテストコースを訪問するこのビデオは、香川さんのOSMO Pocketを使ったVlog(ビデオブログ)撮影テクが炸裂しています。

 個人的にですが、この撮影スタイルを、勝手に「香川スタイル」と呼んでいます。

 最初のシーンは香川さんが五平餅を持って話し始めるのですが、OSMO Pocketを遠く構えに、五平餅を逆の手で手前に持ってきて、映り込むよう工夫しています。しかも、上半身はビシッとまっすぐですが、足を開いて体勢を低くして、お店が背景に映り込むように工夫しています。

 またテストコースの前に入る際には、いっぱいに伸ばした左腕を体のやや後方に固定しながら歩き、OSMO Pocketで出迎えてくれた二人を収めながら、画面の右端に自分の体も映り込ませる、という高等テクニックを披露しています。

 香川さんを写しているもう1台のカメラもありそうですが、ほとんど全編、香川さんが自撮りしているカメラの映像をつないで作られており、「香川スタイル」と名付けるべきだと思った次第です。

誰にでもできるが、誰にでもはできない

 DJI OSMO PocketはGoPro Hero 7などと同じく、5万円以下の価格帯で販売されています。

 しかし香川さんのようにスタイルを確立して使いこなすことで、ここまで「コンテンツとして楽しめる映像」を作ることができるのだという発見に満ちあふれた映像を、トヨタイムズの随所で見ることができます。

 同じ機材を5万円で手に入れることができ、そうすれば誰にでも作ることができる映像、ということになります。OSMO Pocketは4K/60fpsの映像まで記録することができますから、さらに高い品質のビデオも撮影できる、と言うわけです。

 これは、GoProやドローンが、最近の日本のテレビ番組で多用されている様子と同じような感覚を覚えます。肩に担ぐ大きなビデオカメラでなくても、テレビ放送で流れてくる映像は撮影されていて、それが実は手元にあるデバイスだった、ということです。

 その一方で、香川スタイルで成立する映像を、誰もが撮影できるわけではない、と言う事実もまた突きつけられます。出演者としての香川さんの実力とキャラクターが、こうした道具と結びついて実現しているのであって、そのあたりの人が同じ面白いコンテンツを作れるわけではないのです。

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