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松村太郎の「"it"トレンド」 第314回

アップル「iPhone SE(第3世代)」隠れた最大のイノベーション

2022年03月28日 12時00分更新

文● 松村太郎 編集● ASCII

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 iPhone SEは、日本だけでなく世界で最も人気のあるスマートフォンと言っても良いでしょう。最も安い価格でiPhoneプラットホームに参加できるデバイスとして人気があるだけではありません。ホームボタンというiPhone登場の2007年から用いられてきた伝統を引き継いでおり、価格が安いにもかかわらず半年前の最上位機種と同じチップを搭載し、処理性能と省電力性に優れています。

 今回、その価格についてのアドバンテージは、弱まってしまいました。残念ながらというべきか、価値の向上を反映したと言うべきか、米国の価格で399ドルから429ドルに値上げ。また日本での価格は、アップルによる精密な経済予測に基づく為替レートの円安想定を反映し、4万4800円から5万2020円(税抜き)へと値上げされたのです。

 iPhone SE(第2世代)が登場した2020年当時のiPhone SEにおける為替レート(筆者は「Appleレート」と呼んでいます)は112円28銭でしたが、2022年は121円25銭に設定されています。ちょうどこの原稿を入稿しようとしているときに円相場は急激に円安に振れており、122円台にまで落ち込みました。日本円で生活していると、つらいところです。

 日本円での価格の大幅な上昇は為替要因としても、米国での価格引き上げについて、アップルは顧客に説明できると自信を持っているようです。5G対応、A15 Bionicチップの搭載、主にチップ性能向上を反映するカメラ品質の向上、丈夫なガラス素材の利用、そしてバッテリー拡大とチップの省電力性によるバッテリー持続時間の向上。

 いずれもスマートフォンユーザーにとってニーズの高いポイントを押さえており、その点はiPhone 13シリーズの取り組みと同様といえます。裏を返せば、最新の上位モデルで実現している顧客ニーズへの対応を、iPhone SEでも踏襲しており、「顧客にとってのiPhoneの価値」をラインアップ全体で共有している、と見ることができます。

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