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変わる企業の情報収集 大企業のDX化を契機に成長したストックマーク

AIを武器に適切な情報を届ける「Anews」はどのように生まれたか

連載
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ビジネスがAI/自然言語処理の技術を磨く場に

 大企業向けビジネスは収益以外にも大きな効果をもたらした。

 「ビジネスを進めていくことそのものが、ストックマークのAIのアルゴリズムを強化する素晴らしい経験になった。AIを強化していくためには、データが不可欠になる。大企業の中には多くのデータがある一方でなかなかそれを出すのが容易ではなく、AIスタートアップはデータが足りないという悩みを抱えがち。しかし、弊社はお客様と一緒にビジネスを作っていくこと、企業のデジタルトランスフォーメーションを進めていくことが、AIを強化していくことにつながっていた」(林氏)

 Anewsは、主に大企業の新規事業開発部門、経営企画部門、リサーチ部門、広報部門で利用されている。利用者の声を受け、自然言語処理技術に則った情報検索機能によって、その企業が求めている情報を探し出す。さらに情報を社内の掲示板のような場所にためる。それに対して上司がコメントすることで、情報をためるにとどまらない、活用フェーズが生まれるのだという。

 「単に情報を貯めるだけでなく、活用するための仕掛けについても、お客様と接する中で学んだ。たとえば有効なのは、企業における情報収集・発信のキーマンを決めて、数人が持ち回りで記事にコメントしてもらう方法。1日あたり、3記事程度でいいからコメントしてもらう。そしてもう少し長いスパンで良いので、社長にコメントを入れてもらうと定着率が変ってくる。大企業出身者が多いため、こういう仕掛けは得意だった」

 情報収集についても、検索ツールで特定企業の情報を集めるだけにとどまらず、例えばソフトバンクに興味を持っている人は、競合するモバイルキャリアの動向、さらにキャリアではないトヨタ、パナソニックといった一見すると関連していると思われていない企業の情報も収集する。これは情報を蓄積する過程で、記事に関連する情報を紐付けていった成果によって実現している。現在、約1億の記事に約1000社が紐付いているという。情報選択段階では気がつかない、関連する情報を探し出すことにつながる。

 AIのみで情報収集を行うと、関連するものだけに目が行って、遠い分野の情報は見過ごすといったことも起こりがちだ。そうしたリスクを減らすために、幅広く情報収集をするようなアルゴリズムを設計。利用する企業の声を活かしながら、さらにその先ともいえる情報まで収集するAIならではの、情報収集力だ。

 「新たに取引を行うお客様に対しても、事前学習モデルが出来てきているので、早いタイミングでその会社に合致した情報収集が行えるようになってきている」

 このAnewsを顧客に提供したことで得た、顧客ごとに合わせたニュースを収集するアルゴリズム、自然言語処理技術などが新しいサービス開発にもつながっていこうとしている。

 2019年8月にリリース予定で、現在は一部ユーザーで試験運用中の「Astrategy」は、AIを活用することで、戦略的な意思決定につなげていくためのツールだ。

 「Anewsで情報を収集するだけにとどまらず、これまではアナリストなどが出していた情報分析を即時に行っていくというもの。例えば、ある企業が米国のベンチャーに投資を行ったら、その意味を説明するような、企業マップを秒単位で作成できる。調査会社が出す業界分析レポートよりも早いスピードで状況分析が行えるようになる」

 また、営業パーソンが意思決定につながるように、ターゲット業界の情報収集、日々のやり取りを分析する「Asales」も開発している。

 「クラウドベースの営業強化ツールは色々と登場しているが、我々が提供するのはAI時代の営業強化のためのツール。AIネイティブなサービスによって、これまではできなかったことを実現したい」

 既存の営業支援ツール市場を奪い取っていくことにも意欲的だ。設立から3期目となり、新しいビジネスを進めていく。

AI技術をベースとした次世代のoffice 365を目指す

 大企業向けビジネスでAIビジネスを展開してきた企業として様々な経験を積んできた実績、そしてそこで磨いた技術は、さらにビジネスを拡大しようとする意欲となっている。

 「既存のビジネスツールは一世代古い技術をベースに開発されており、必ずしも現状のビジネスシーンにマッチしていない。シンプルに、欲しい時に欲しい情報が使える形で提供される、最高のレコメンデーションシステムを搭載した、次世代のOffice365のようなプラットフォームを目指している。Anews、Astrategy、Asalesはそのプラットフォームを構成する機能群であり、今後も順次ラインナップを拡大していく」(林氏)

 現在、AIは特定企業のみが使っている技術だが、時間経過と共にさまざまなソフトウェア、サービスにAIが組み込まれ、意識せずにAIを活用する時代が来ると言われている。林氏はそういった変化が起こる可能性をどう考えているのか。

 「AIによっていかにデータとヒトの関係性をスムーズにできるか、そしてヒトにとって心地良さといった定量化できない指標が重視されるようになる。そして、最も大事なのは、信頼感。どのアルゴリズムに身を任せるのか、ユーザーが判断するようになる。弊社は日々ビジネスパーソンの行動・思考に寄り添い、ヒトとデータ、ビジネスの新しい関係性をデザインしたいと考えている」

 ストックマークの場合、インテリジェントなワークプレイス提供のきっかけが、たまたまAIやニュースであるだけで、情報を探索するのはストレージやファイル検索でもいいのだという。集まった情報を活用して、ビジネス向けのキラーアプリを作るのが狙いにある。

 時が進んでAIが当たり前のものとなる時代になっても、むしろ日本だけでなく、海外にもビジネスを拡大していくと意欲的だ。「日本発で世界で活躍するソフトウェア会社はほとんどない。他社に先駆けて世界で活躍できるように」と大きな目標に向かって同社はビジネスを進める。

 

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