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中期経営計画に入る「オープンイノベーション実践」が危うい理由

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アスキーエキスパート

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ステップとしては絶対に欠かせないものとは?

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 ときに「オープンイノベーション」というマジックワードは、経営幹部たちに「いま現在、会社にはないもので、とってもキラキラした大きなお金を生む金の卵、素敵なイノベーションの種を外から発見する」という夢を見せることがある。

 その夢は、戦略なきパートナー探しへ企業を駆り立てるケースとなる。果たして「自社にはない飛び地のキラキラした事業シーズ」が無数に転がっているか? 当然、実際転がってはいない。いくら会えどもしっくりこない。冷静に考えればわかることも、「オープンイノベーション」という言葉が惑わす。

 このような場合は、目的がなく、ふわっとした理想のみで会い続けていることがほとんどだ。オープンイノベーションは、あくまで新規事業を推進する上での手法の1つ。会社の行く末を見据えた企業全体の成長戦略から各事業部に戦略が落とされ、その過程で新規事業が考えられていく。そこで、「オープンイノベーション」という手法を「目的」を明確にして取り入れる。それは、「外部にパートナーを求めた方が事業推進する上で筋がいいもの」(社内でゼロから開発する上でのコストや時間軸、市場)を明確にすることでもある。

 また逆に、すべてをオープンイノベーションでやる必要もない。

 クローズドイノベーション、社内新規事業でできるならそれは社内のみでやると決める。オープンイノベーションという手法を取り入れる際には、「飛び地のキラキラした事業シーズ」をまず探しに行くという見切り発車のやり方ではなく、この、『対外的にリソースを求める目的・ターゲットの絞り込み』がステップとしては絶対に欠かせない。

 前提となる「外部と連携する目的・期待成果」がないと、外部パートナー候補と会う際に「連携によって期待する成果」を明確化することはほぼ不可能であり、「お互いに共有できる目的や、期待成果」がないままの会議は両者にとってストレスフルな場となる。

 とりわけ外側となるスタートアップにとって、時間は非常に大切だ。ただの「挨拶・紹介」をするだけの場は、極端な話、彼らの時間を泥棒している感覚を持つべきなのだ。

 またスタートアップはその戦略にオープンイノベーションという言葉を用いていないだけで、既存の拡大戦略にオープンイノベーションの要素をふんだんに含んでいることが多い。他社の基盤やリソースを活かした拡張・路線拡大などはまさにそれだ。

 「オープンイノベーション」で騒ぐ必要があるのは大企業だけであり、それこそ「クローズド」で拡大してきた歴史を持つためなのである。今、「オープンイノベーション」という方法論を取り入れるのであれば、まずは「外部と連携する目的・期待成果」を設定することを強くオススメする。

アスキーエキスパート筆者紹介─中村 亜由子(なかむら あゆこ)

著者近影 中村 亜由子

2008年東京学芸大学卒業。同年株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)入社。以来、doda編集部、人材紹介事業部法人営業など、HR転職領域に従事。2015年「eiicon」事業を起案・推進。現在は日本最大級の企業検索・マッチングプラットフォーム「eiicon」を運営するeiicon companyの代表/founderを務める。全国各地の4000社を超えるさまざまな法人(大企業・スタートアップ・中小企業・地方自治体)が登録し、オープンイノベーション実践をアシストするプラットフォーム「eiicon」はオープンイノベーションを実践する企業の活動を紹介するメディアとしても注目されている。著書に、「オープンイノベーション成功の法則」(クロスメディア・パブリッシング 2019)

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