ソフトバンクの5G実験からわかるスマホ以外の活用
4.7GHz帯を使用した東京・芝大門での実験環境を公開
ソフトバンクは、報道関係者に東京・芝大門で、5Gの実験環境を公開した。
オフィス街という条件で、汐留のソフトバンク本社に近いため、芝大門で実験となったという。縦500メートル、横200メートルのエリアに基地局を4ヵ所、設置。メディアに公開した際には、そのうち3つが電波を飛ばしていた。この実験で使われたのは、4.7GHz帯となる。
アンテナはオフィスビルの屋上などに設置され、すぐ近くに隣のビルが立っていたが、電波的にはビルを回り込み、向かいの道路まで届いていた。担当者によれば「芝大門ではなく、赤坂の実験では、ビルの中でも電波が届き、利用できる状態だった」という。
実験では、2台のクルマを走らせ、片方のクルマには360度カメラを設置し、VR用の映像を配信。もう片方のクルマで映像を受信するというデモを行なった。もちろん、両方のクルマには5Gの端末が搭載されており、データのやり取りは5Gだ。
走行実験では、基地局の真横や、やや背後に走行していたが、そこでもきちんと動画を流せていた。また、基地局から700メートル離れたところからでも、映像が途切れることなく、流すことも可能となっていた。さらに基地局と基地局をまたぐ際に「ハンドオーバー」という処理が行なわれるのが、これもまったく問題なかった。
5Gでは、さまざまな周波数帯を利用しようと計画されている。特にキャリアなどが熱心に研究開発しているのが28GHz帯だ。大きな帯域を確保できるため、かなりの大容量・高速通信が可能とされているが、端末の前に人が立ってしまったりするとすぐに圏外になるといった弱点も存在する。
そんななか、モバイル用途でれば、6GHz帯以下の帯域が望ましいという考えがある。そんななかでの、ソフトバンクによる4.7GHzでの実験だったというわけだ。
4.7GHzであれば、クルマで移動している際にも、5Gによるデータ通信を安定して行なうことができることが証明されたわけだ。
担当者は「5Gによって、移動中に動画を上げられることにより、遠隔医療などでの活用が期待できる。たとえば、救急車に5G通信と高解像度のカメラを載せることにより、病院に搬送している途中でも患者の様子を病院に送り、医師の指示を仰ぐこともできるようになるのではないか」という。
これまでの4G回線でも、実用できなくもないが、医療がともなうとなれば、4Kや8Kといった超高解像度の映像が求められる。そうしたデータを安定して移動しながら流すには5Gの回線が不可欠というわけだ。
実は医療現場だけでなく、スポーツ中継などでも5Gの回線活用が期待されている。マラソンや駅伝の中継では、先頭集団の前に中継車が走り、レースの様子を伝えているが、中継車が5Gに対応し、マラソンの沿道をエリア化すれば、5Gでレースを伝えることが可能だ。
また、自動車レースが行なわれるサーキットでは、広大な範囲にカメラを設置しなくてはいけないが、すべてのカメラに対して、ケーブルをつながなくてならない。国際レースが行なわれるサーキットは1周5キロ以上のコースも多いが、テレビ局はさまざまなコーナーにカメラを設置し、すべてのカメラにケーブルを這わせてつなぐという途方もない作業をレース前に行なっているのだ。これが、5G回線を使うことができれば、4K動画であっても、ケーブル無しで、カメラから直接、中継車に映像を送るといったことも可能になる。
4Gまでの通信回線は、どちらかといえばスマホなど一般ユーザーがメインに使われることが多かった。しかし、5Gとなると、キャリアはさまざまな企業と組んで、ビジネス用途に使われることが増えていくと見られている。
そのため、3キャリアは多様な業種の会社と協力しながら、実験を繰り返して、5Gnoサービスを作り上げていくことに注力しているのだ。
街中でも移動しているクルマから、5Gで大容量の動画が流せるということが、実証できたことで、医療現場やテレビの世界において、5Gの活用を検討する企業が増えていきそうだ。