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5Gビジネスのカギは異業種コラボ

「CES」にて取り上げられた5Gの活用方法

特集
石川温の「動き出している5Gビジネス」

 2019年は、世界的に「5G元年」になりそうだ。

 今後の展開を予想する上で注目されたのが、今年年初にラスベガスで開催された世界最大のテクノロジー展示会「CES」だ。CESでは、クアルコムが記者会見で「今年、30機種以上の5Gスマホが登場する」と明言。ブースでは、OPPOやXiaomiなどの5Gスマホのプロトタイプが展示されていた。

 アメリカでは、今年前半にベライゾンとAT&Tが5Gサービスを本格展開させる。CESの基調講演に登壇したベライゾンCEOである、ハンス・ベストベリ氏は、5Gは4Gに比べて高速大容量、超低遅延、IoTに最適なネットワークであることをアピールした。

 基調講演で、5Gの活用方法として取り上げられたが、メディアでの展開だ。ニューヨーク・タイムズやウォルト・ディズニーの関係者が登壇。ニューヨーク・タイムズでは「ジャーナリズム5Gラボ」を設立し、今後、ウェブ向けの記事がどのように進化していくかの研究を始めたという。将来的には5Gスマホでは、VRやARなどの技術と組みあわせ、事件現場から大量の映像や音声を直接、配信し、さらにリアリティのあるニュース報道を目指していくとした。

 また、ベライゾンでは、商業ドローン事業を手がけるスカイワードという会社を持っている。基調講演では、5Gに対応したドローンをロサンゼルスに配備。ラスベガスから5G回線を経由して、ロサンゼルスのドローンを遠隔で操作するというデモが行なわれた。5Gの特徴として、高速大容量、超低遅延というメリットがある。ドローンから配信される高精細な映像を見つつ、遠隔で操作する際は超低遅延なので、ストレスを感じることなく、俊敏に操作できるというのが5G対応する利点というわけだ。

 さらに基調講演では、マイクロソフト・ホロレンズを使っての外科手術の様子が紹介された。患者のMRIによる画像データを、手術台に寝ている患者の頭部に表示。頭のなかの様子を画像で確認しながら手術を進める手法がすでに実施されているというのだ。将来的には、5G回線と組み合わせることで、遠隔で外科手術を実施したいという。

 5Gは、これまでのようにキャリアが独自にサービスやコンテンツを提供するだけの世界観ではない。キャリアが異業種とコラボレーションし、産業構造を変革していくことが求められている。ここ最近、「デジタルトランスフォーメーション」という言葉がもてはやされているが、さまざまなものに通信を載せ、IT化させていくことで、生活やビジネスをより良い方向にシフトさせていく考え方だ。

 まさに5Gはさまざまな業界と組むことにより、生かされるネットワークだといわれている。アメリカのベライゾンがドローンや遠隔医療、VRやARとの組み合わせでメディアを、いろんなプレイヤーと一緒になって変えていこうという発想は、まさに5Gの導入に求められているのだ。

 日本でも、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクなど、5G開始に向けて準備を進めている。いずれも遠隔医療やドローンなどで実証実験を始めており、この点においては世界をリードしている感がある。ただし、アメリカと中国が今年から5Gを本格スタートさせるのに対し、日本では今年9月ごろのラグビーワールドカップでプレサービス、来年夏の東京オリンピック・パラリンピックのタイミングで、商用サービス開始という計画だ。

 日本はアメリカ、中国に比べて1年近く遅れて商用サービスが始まるだけに、他の国でどんな5Gサービスが始まるのか、産業構造を変えるようなソリューションは出てくるのかなどをじっくりと見極め、大手キャリアは日本で5Gが成功するようなビジネスモデルを考えていく必要がありそうだ。

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