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技術の寄せ集めでは、社会課題は解決できない、NTTデータが世界のスタートアップを探す理由

第9回 豊洲の港から presents グローバルオープンイノベーションコンテストの応募開始

特集
「NTTデータ 豊洲の港から」イベントレポート

提供: NTTデータ

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社会課題の解決のため、成果も実現しつつある

 2014年から実施してきたこのコンテストについては、その成果の萌芽も見られる。「AIを活用して市民の声を分析し、それを元に地域課題を解決した市民に対して報酬を与える」地域課題解決プラットフォームを提案したスペインのスタートアップ企業ソーシャルコインとの協業はそのひとつだ。

 ソーシャルコインは「第5回豊洲の港から presents グローバルオープンイノベーションコンテスト」で世界10都市の代表の中から最優秀に選ばれたチャンピオン企業で、よりよい社会を作る公共インフラとして、社会に新しい価値を届ける可能性があるとされた。

 NTTデータは、ソーシャルコインと共同で、地域分析コンサルティングサービスを国内でも開始した。インターネット上の消費者の声を分析して、地域固有の課題発見をおこない、その解決につなげようとしている。

 このサービスでは、ソーシャルコインが持つ「AIを活用した独自クラスタリング技術」と、NTTデータがもともと開発していた「Twitterデータの解析技術」や「言語解析技術」、Twitterの全世界全言語データを組み合わせている。2018年3月には、推進母体として「地域課題発見ラボ」を立ち上げた。最近では、特に国連が提唱している持続可能な開発目標(SDGs)にフォーカスし、ロンドン、バルセロナ、ニューヨーク等の主要都市におけるSDGsに関する定量・定性比較を行うプラットフォームを立ち上げている。

独自の辞書が、SDGsの各ゴールに対する市民の関心や感情を把握

 2018年度内に国内10クライアント、海外20クライアントの受注獲得を目標とし、5年で100億円の売上を目指す中、日本、欧州、アフリカで官民からの受注が始まっている。

技術はあくまでも最後のピースだ

 この取り組みが今どういう状況にあるのか。そしてどんな手ごたえを感じているのか。NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 ライフデジタル事業部 ソーシャルビジネス推進担当 高野恭一氏は協業で得たことについて以下のように語る。

ソーシャルビジネス推進担当の高野恭一氏

高野 「もちろん技術的な連携にも魅力はあります。ただ、より興味深いのは、グローバルでどういうトレンドがあるかに気付け、それに対して明確なビジョンを持った人たちと協業することです。グローバルの動きに対応した将来市場を開拓できる点がメリットだと思っています」

 もともと高野氏が所属するライフデジタル事業部では、Twitterデータを全数解析して、様々な意見をくみ上げる技術を開発してきた。ソーシャルコインが手掛けるビジネスもSNSから「都市やコミュニティの課題を見つける」ことが根底にある。両社の協業においては、データ解析への知見がないと始まらない。そこでTwitter解析のプロジェクトを進めてきた高野氏に白羽の矢が立ったのだ。

高野 「現在は、日本向けのプロダクトを一緒に開発・機能改善しているフェーズです。『社会課題を特定』して、その課題をどう解決していくか。まずは『その課題』自体の発見が大事なのです。そこで課題を抽出するソリューションの開発を実施しています」

 ソーシャルコインの企業理念は、善い行いをしたらほかの人へも広げようという「ペイフォワードの概念」に基づいている。高野氏の言葉を借りるなら、社会貢献活動といっても、参加者に何らかのインセンティブがないと持続させることは困難であり、そこに報酬の仕組みを取り入れ、市民を動かして、よりよい社会づくりに生かす。いわば、市民を巻き込んでコミュニティや社会を良くする仕組みが必要だ。

 高野氏はソーシャルコインとの協業で、改めて気付けたことがあるとする。

高野 「日本と海外での価値観の違いに気づけたことは日本で新しいビジネスアイディアを着想する上で非常に重要でした。日本では『ボランティアは無償でやるべき』という観念にとらわれがちです。海外では無償奉仕もありますが、報酬を付けて社会貢献活動を持続可能にする考え方もあると気付けました。社会貢献によって消費が回る『感謝の経済』ですね。

 結局のところ、技術は最後のピースなのです。逆に言えば、よくできた技術を持ち寄って組み合わせるところからスタートしてしまうと、オープンイノベーション的な試みでは失敗すると思います」

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