■新しい店舗デザインとその変化の理由
現在、日本ではApple Store渋谷が改装中です。また、1号店の銀座店と、最新の店舗となる新宿店では、雰囲気や設備が異なっていることに気づくでしょう。
新装オープンの店舗や改装中の店舗は、「タウンスクエア型」というコンセプトで作られています。アップルというブランドと人々のコミュニティがつながる街の中の拠点という位置づけです。
この新しいスタイルの店舗は、サンフランシスコに移転オープンした「アップル・ユニオンスクエア」や、シカゴの河岸に作られた「アップル・ミシガンアベニュー」が象徴的です。
街のランドマークになるようなデザインと、開放的でオープンな「プラザ」と呼ばれるスペースを用意し、電源やWi-Fiが利用できるようにしています。冬寒く、雪が多いシカゴでは、河岸の階段の床が凍結しないように川の水を使った床暖房を張りめぐらせるほどのホスピタリティが垣間見られます。
店内では、イベントを行える大画面を備えた「フォーラム」を生かし、毎日異なるテーマでアップル製品の使い方を紹介する「Today at Apple」プログラムを展開しています。
季節ごとにアクセサリのセレクションを変化させる「アベニュー」、これまでサポートカウンターとなっていた「ジーニアスバー」は、モバイルデバイスの気軽なサポートを実現する「ジーニアスグローブ」へと変貌を遂げました。開発者や地元のビジネス客とのミーティングを行う「ボードルーム」もあります。
Apple Storeは単なる小売店、ブランドショップから、自然と人が集まり、最新製品に触れたり学び、生活の中でアップルブランドを身近に深く活用して行くコミュニケーション拠点へと変化させようとしています。
iPhoneが世界中で使われるようになる過程で、いずれ飽和を迎えます。その中でも、iPhoneを使い続け手もらえるようにするために、新しいApple Storeは重要なピースと位置づけられているのです。
テクノロジー専門ショップだったApple Storeは、テクノロジー、スマートフォンの生活への深い融合によって、ライフスタイルの大きな部分を占める拠点へと変化が求められています。
昨今世界中で進行する既存店の改装と新装開店の背景は、ブランドとしてのアップルの変化を反映したものといえるでしょう。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
この連載の記事
-
第317回
Apple
アップル初のApple Parkでの開発者イベント、初公開の「Loop Building」とは -
第316回
Apple
「Mac Studio」アップルの多様すぎる接尾語について考える -
第315回
Apple
アップル「Mac Studio」登場で生じる、ラインアップへの疑問 -
第152回
Apple
アップル「MacBook Pro」ポート増加は敗北なのか -
第151回
Apple
iPhone分解アートと、Appleが目指す未来 -
第150回
Apple
アップル新型「MacBook Pro」どの構成で買うべきか -
第149回
iPhone
アップル「iPhone 13」4つの魅力 -
第148回
iPhone
アップルiPhoneラインナップから浮かび上がる2つのこと -
第147回
iPhone
アップル製品ラッシュふたたび? -
第146回
iPhone
アップルはiOS 15で「時間の支配権」をユーザーの手に取り戻させようとしている -
第145回
Apple
アップル新型「iMac」驚きの電源 - この連載の一覧へ