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部活動から事業へ 北からVRで攻めるインフィニットループ

連載
ASCII STARTUP 業界ポジトーク

 札幌でウェブマーケティングのコンサルティングを提供しているマーケティストの赤沼です。札幌のIT・ゲーム開発会社として著名なインフィニットループが最近、VRサービスをリリースしました。本記事ではインフィニットループがどうしてVRサービスをリリースしたのか。どのようなVRサービスなのか。サービスのリリースに至った経緯を特集します。

インフィニットループとは?

 インフィニットループは、代表取締役である松井健太郎氏が2003年9月に個人事業主として開始。2007年6月に法人化した会社だ。設立当初は携帯サイトやシステムの作成・構築が主力事業だったが、ソーシャルゲームの流行と共に、主力事業はソーシャルゲーム開発に移行していく。開発難易度が高いソーシャルゲームだが、インフィニットループの提供する安定した開発と高い運用力は評判を呼び、全国から仕事が相次ぐ。インフィニットループの名前を一躍知らしめたのはmixiで大流行した「ブラウザ三国志」であった。

 仕事の増加と共に、社員は急激に増加。2015年4月には札幌では有名な商業施設、サッポロファクトリーにオフィスを移転。現在はアルバイト、協力会社のメンバーを含めると、人員は140名を超える。

部活動から事業部へ

 インフィニットループ社内には多くの部活がある。カラオケ部、ダーツ部といった一般的な会社でもありそうな部活から、ゲーム会社らしさを感じる、ボドゲ部、麻雀部、スマブラ部、戦車部といった部活もある。そのような部活の中で、VR部というのがある。

 VR部は、昼食休憩中にランチミーティングとしてVR情報、技術の共有を行なうところから始まり、活動の活発化や世間のVR熱の高まりから、2016年4月からは正式にVR事業部が発足した。

 インフィニットループで、部活動が事業部になったのはVR事業部が初めてだという。代表取締役の松井健太郎氏に、部活がVR事業部となった経緯を聞いたところ、「現場からの強い要望と、市場ができあがりつつあって事業化の目処が見えてきたためです。会社としても機材などは提供するものの、それでも有志の活動である部活動に頼りっぱなしにするわけにもいきませんので、一定期間で事業にする、しないのジャッジは必要かなと思っております」とのことだった。

ランチミーティングの様子

VRのイベントへの出展

 VRの研究を続けていたVR事業部が対外的な活動として始めたのがイベントへの出展だった。

 2016年11月には、札幌で開催した映画・音楽・インタラクティブの国際コンベンション「No Maps」内のVR体験イベント“没入祭”に出展。ゲーム世界の中に入ったような感覚を味わえるVRや、ヘッドマウントディスプレーを通して、離れた場所の映像を見る体験ができるザッピング+リアルタイムVRを出展した。

 2017年1月に東京で開催した「みんなの札幌移住計画2017」では、来場者に対して、今の札幌、札幌の懐かしい景色や新しく変わった街並みをリアルで視覚体験できる“VRコーナー”を設置。

 2017年4月に神奈川県横須賀市で開催された「World of Warships×ハイスクール・フリート コラボ展」では、期間中の4月8日(土)、4月9日(日)の2日間にインフィニットループが開発協力したVRが出展。戦艦三笠艦内にて機銃を撃ったり、マストに登ったりという特別試遊体験ができる“World of Warships VR 体験コーナー”を展示した。

戦艦三笠を船内を体験できるVR体験の様子

部活動がきっかけで仕事が生まれる

 実はこの「World of Warships×ハイスクール・フリート コラボ展」も、部活動がきっかけでインフィニットループが手がけることになったとのこと。

 手がけた経緯はこうだ。ウォーゲーミング社が開発した『World of Tanks』を好きな社員が多く、社内で部活動の“戦車部”が発足。当初は社内で活動していた戦車部だったが、さらなる同士を求め、社外の方も参加可能なオフ会を開催することとなった。

 オフ会の開催は非公式ではあったが、Twitterでオフ会の告知をしたところ、World of Tanksの公式Twitterアカウントがオフ会の告知を発見。開催を喜んだウォーゲーミングジャパン株式会社の広報は、オフ会に公式ノベルティーグッズを提供した。これを機に両社の交流が生まれ、それから約3年後に「World of Warships×ハイスクール・フリート コラボ展」を開催することになったという。部活動がきっかけで仕事に結びついた貴重な一例だ。

新サービス、Grooonのリリース

 VR事業部発足からちょうど1年後の2017年4月、インフィニットループはVRの新サービスをリリースした。Thetaなどの全天球カメラで撮影した360度パノラマ写真を使って、屋内・屋外を案内するバーチャルツアーを作成できるサービス「Grooon」だ。

 Grooonについては百聞は一見にしかず、ということで、まずはデモを観ていただきたい。このデモでは、実際に歩いているようにインフィニットループ社内を見ることができる。自社ウェブサイトの訪問者に対して、Google社が提供するストリートビューの自社版を提供できるサービスだ。

 今までこのようなツアーを作成するには、専門的なソフトウェアや知識が必要だったが、発表によると、約10分でツアーが作成できるという。作成したツアーはサービスから発行されたHTMLタグを貼り付けるだけで、自社ウェブサイトに「VRパノラマツアー」を公開できる。

 インフィニットループの取締役でもあるGrooonの担当者の吉田博紀氏に反響について話を聞くと、「反応がいい業界はホテル、観光、不動産です。現時点では定山渓のふる川さまに導入することが決まっています。またJTB商事北海道様との連携が進んでおり、観光業界への導入が今後加速していきそうです」と、リリース後1ヵ月未満ながら、すでに導入を決めている会社があり、幸先が良いスタートとなったようだ。

VRのビジネス化

 日本には多くのVRサービスが存在する。ソニーからはPlayStation VRのリリースを機に一気に注目が集まり、ASCIIにもVRカテゴリーが存在するぐらい数多くのサービスがリリースされている。VRサービスの大きな課題のひとつは「ビジネス化できるかどうか」という点にあるだろう。

 企業がVRサービスを利用しようにも一般的にはハードルが高いが、インフィニットループのGrooonは月額7000円~という低価格での提供を実現した。このVRサービスがどうなっていくか。今後のGrooonとインフィニットループに注目し続けたい。

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赤沼俊幸(マーケティスト)

著者近影 赤沼俊幸

札幌を中心にWebマーケティングコンサルティング・サポートを提供するマーケティスト代表。2011年から2013年にかけて北海道初のコワーキングスペースGarage labsの運営を行う。2014年、マーケティストを創業。札幌IT業界の環境向上を使命として、2015年、起業家を作るイベント、Startup Weekend Sapporoを共同主催。2016年1月には札幌移住計画として、札幌移住を促進するイベントを東京で開催。北海道のITを届けるキタゴエにも記事提供を行なう。Twitterは@toshiyuki83

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