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経産省「始動」にも選抜 東北大の学生起業家

「東北大学学生起業部VEX」所属の2名をご紹介

連載
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 こんにちは、一般社団法人MAKOTOの竹井です。現在東北大学が推し進める大学発ベンチャー創出事業として、2017年から本格的にスタートした活動に「東北大学学生起業部VEX」があります。今回このVEX所属の学生起業家2名が経済産業省主催のイノベーター育成プログラム「始動」に選抜されるという快挙がありましたので、2名の学生起業家についてご紹介したいと思います。

 学生起業部VEXは「東北の未来のリーダーとなる人材の集積地に」というビジョンのもと、「東北発イノベーターを1000人輩出する」を目標に活動しており、東北大学の在学生が起業家を目指すためのコミュニティーです。2017年度は10名いた部員のうち2名が実際に起業、さらに2018年新メンバーが10名入って、現在学部1年生から、大学院生までののべ20名の部員が所属し、それぞれが活動しています。

 VEXは一般的なサークルや部活動とは異なり、「全部員が起業家を目指す」ことをモットーにしており、学年の違いによる上下関係は一切ありません。また、部内でのリクルーティング活動は原則禁止されています。これはVEXがあくまで「起業家を生み出すための組織」であって、部活動の一貫としてビジネス活動を行ない、それをもって擬似的な「ベンチャー起業」を経験してもらう場ではない、というポリシーに基づいています。

 活動は各人の自由に任せられていますが、毎週実施する定例MTGへの参加は義務付けられています。定例MTGは東北大学スタートアップガレージで開催し、メンバーはオンラインのシステムを利用してこのMTGに参加できます。

 さて、今回このVEXの所属メンバーで2名の学生起業家が経済産業省主催のイノベーター育成プログラム「始動 Next Innovator 2018」に選抜されました。「始動」についてご説明すると、2015年4月30日、歴代首相として初めてシリコンバレーを訪問した安倍首相は、人材の架け橋、企業の架け橋、機会(チャンス)の架け橋の3つから成る「シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト」を発表しました。

 始動 Next Innovatorは、その第1弾(人材の架け橋)として2015年に動き出したプロジェクトで、日本の次世代のイノベーションを担うキーパーソンを育成するために、若手起業家や、大企業で新事業開発を担う人材などを公募・選抜して、実践的な研修を実施し、イノベーション創出の基礎能力を体得してもらいます。その中で、優秀な人材をさらに選考してシリコンバレーに派遣、現地のベンチャーエコシステムの中で武者修行してもらうというものです。

 大企業の新規事業担当者や既に実績のあるベンチャー経営者などもエントリーするなか、選抜されたのは東北大学経済学部3年生の高橋佑熙さんと、東北大学工学部3年生石井晴揮さんです。

 「地方の雇用問題を解決する事業を自らの手でやりたい」

 高橋さんは東北大学経済学部3年生。自身の父親が経営者であったという背景から、ビジネスに早くから関心を持ち、約100名を超える地方の起業家と交流する中でいつも感じていたのは、ほとんどの経営者が働き手の不足を訴えていることでした。

 既存採用媒体ではコストが合わず、またハローワークなどでは若い働き手がなかなか集まらない現状に対して、何かアプローチすることができないかと半年前から構想し、現在開発中なのが社名と同じサービス名でもある「prezy」です。

 一般的な求人情報との違いは、会社の情報ではなく、社長自身のパーソナルの情報と求職者を結びつけるという視点です。現在プロトタイプを開発中で、2018年夏にはクローズドベータが開始予定です。

高橋佑熙さん

 「東北大学の知財をベンチャーのスピードで社会に展開したい」

 石井さんは現在東北大学工学部3年生で材料系の研究の道を志しています。昨今日本の研究分野に投下される研究費が他国に比べて削減されたり、論文数の伸びなどが大きく劣っていくなかで何かできることがないかと学内を巡り、大学の知財をまさに「ベンチャー起業」のようなスピードで社会実装していくことを構想。複数の研究室をドアノックすることで知り合った大学教授や研究者と株式会社TUPを創業し、代表取締役に就任しています。

 2025年までに40シーズを事業化することを目標にしているTUPでは4つのプロジェクトがスタートしており、すでに顧客も見込めています。

石井晴揮さん

 2人の事業はまだまだ始まったばかりですが、いずれの事業も社会的な意義があり、マーケットも大きな分野です。今回彼らが「始動」という機会を通じて、自分たちのビジネスを大きくする知恵やネットワーク、そして何より志を共にできる仲間に出会えることを期待したいと思います。

 VEXでは彼ら以外のメンバーも全国さまざまなビジネスコンテストに参加したり、事業モデルをテストしているメンバーもいます。「東北発イノベーターを1000人輩出する」まだまだこのチャレンジは始まったばかりですが、VEXのメンバーは着実に起業家の道を歩み出しています。

「東北大学学生起業部VEX」

設立:1999年
部員数:20名
代表者:高橋佑熙(東北大学経済学部3年生)
活動場所:東北大学スタートアップガレージ:http://tusg.jp URL:http://vex.strikingly.com/

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竹井智宏(一般社団法人MAKOTO代表理事)

著者近影 竹井智宏

1974年生まれ。東北大学生命科学研究科博士課程卒。2011年7月東日本大震災を契機に一般社団法人MAKOTOを設立。同月、米国カウフマン財団のカウフマンフェローに選出される。東北の起業家支援に力を入れ、日本初の再チャレンジ特化型ファンド「福活ファンド」を組成し、起業家の投資育成活動を展開。起業環境作りとしては、世界の若手起業家約12000人でつくる「EO(アントレプレナーズ・オーガニゼーション)」の東北支部「EO東北」の立上げに尽力。2015年、日本ベンチャーキャピタル協会より「地方創生賞」を受賞。2016年、日本財団より、日本で10人の「ソーシャルイノベーター」に選出。東北大学特任准教授(客員)。

●お知らせ

「TOHOKU GROWTH Accelerator」
 東北から世界に通じるスタートアップ育成のための「TOHOKU GROWTH Accelerator」を、MAKOTOがともに推進しています。
 当プログラムでは、東北から世界に通じるイノベーション創出を目指し、事業を急成長させていくスタートアップまたは新規事業に挑戦する中小企業のうち、「大学研究シーズ」「ICT」「既存産業でのイノベーション」「東北の強みを活かした事業」の4テーマに挑戦するスタートアップまたは中小企業を募集します。MAKOTOや特別メンターによるレクチャーとメンタリングを実施し、2019年2月のDEMO DAYでの発表にて、資金調達・事業連携の獲得を目指します。

プログラムURL:http://tohoku-growth-ap.jp

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