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ASCII STARTUP 今週のイチオシ! 第41回

無力感を打破する「あきらめない」社会を目指す仙台発ベンチャー

脊髄反射で足が動く!奇跡の車いすCOGY

2016年10月21日 10時00分更新

文● 松本佳代子 聞き手・編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●愛甲武司

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GoogleMap連動などの取り組みも

Googleマップと連動して街中を進めるデモ。ストリートビュー利用も可能

 車いすだけに寄らない展開も進めている。現在、プレ販売だけで展開しているのが「COGY」とGoogleMapを連動したVRシステムだ。

 脳梗塞などで倒れて空間把握能力がなくなった人がいきなり外に出ると危ない。その訓練にCOGYとGoogleMapを使おうという試みだ。

 また、認知機能が低下した人は現在のことは忘れるが、昔のことや当時の場所は覚えている。その人の"知っている空間"をVRで映し出して、COGYを使ってVR空間を一緒に移動しながらコミュニケーションをはかるという目的もある。

 「ずっと寝たきりで動かなかった方が、『COGY』で自走するのが最初は怖いので、VRシステムで練習をする足こぎシミュレーターを作りたいと思っている。教習所の運転シミュレーターのようなもの。それと、東北エリアはそろそろ雪が降る時期、冬の間に日本全国的にCOGY利用者の方の体調は重度化してしまう。家から出られないため、COGYの練習不足になる。冬の間は家の中でもトレーニングできるように、このVRシステムのプレ販売をしている」

 「VRシステム」と聞くとヘッドセットを活用した3D空間を想像するが、「COGY」ではプロジェクターなどで投影する方式を採用。ヘッドセットを使うと3D酔いになるという点と、壁に大きく映し出せばみんなで同じものを見られるためコミュニケーションを取りやすい点から、投影型に軍配が上がった。

 「すでに使用している施設では、例えば京都の清水寺を映し出して『COGY』で移動すると、『こっちに行くとおいしいお水が湧く場所があるんだよ』と高齢者の間で盛り上がる。そのようなコミュニケーションが大事。あるいは、東北エリアでは震災前の地図を映し出しながら街を散策できる。食べたばかりの食事内容も忘れてしまうような高齢者の方も昔のことなら覚えているので、施設の職員の方と過去の話をしながら『COGY』で移動してもらっている」

家庭内で使えるように考案された台座


今後「COGY」はどう広がるのか

ハンドル操作は手もとのレバーで。軽量化のためにゼロ戦の操縦桿を参考にして作られている

 高齢化したとき、誰もが足腰の劣化は避けられない。インタビューもそこそこに実際に体験もしてみたが、仮に自分の足腰が弱っていてCOGYに乗れたなら、おそらく初めて自転車に乗れた感動のようなものがあるのではないか。しばらく乗った後は、足腰の内側の普段動かしていない筋肉が刺激され、実際軽い疲労感が最初はあるという。

 TESSについていえば、鈴木代表の話からは、ビジネス的なスケール以上に、いかにCOGYを普及させるのかについての、強く具体的なビジョンを感じた。一方通行な技術だけで起業をしたが、ビジネスに傾斜をかけたやり方での失敗を目の前で見た経験も大きく、鈴木氏自身が決して諦めていない。

 そもそも、COGYの技術自体は25年前から見つけられていたものだった。10年以上前に実用化されても、当時は医療的には裏付けがなく、医療や介護に携われる関係者からはかなり否定的な意見もあったという。難しい話ではあるが、当時は既存の市場だけを見たやり方ではなかなか攻略できなかったのかもしれない。現在では、理解を示す関係者もだいぶ増えてきたという。

 たとえVRが発達しても、身体的な体験はまだまだ代替がきかない。個人的には、Googleマップとの連携はさらなる可能性を感じたので、そのような既存技術を利用した発展に期待したい。


 直近では、10月8日からスイスで開幕されているサイバー義体を持つアスリートたちによる世界大会「第1回Cybathlon (サイバスロン)大会」のFESバイクレース(Functional Electrical Stimulation Bike Race)の部でCOGYが日本代表チームに採用されたばかり。

 この先、アスリート向けのスポーツタイプでCOGYの需要は増える見込みだ。サイバスロン大会は次回が4年後の東京で開催される。もしもCOGYに乗った強い選手が出れば話題になるに違いない。脚光を浴びる絶好のチャンスだ。

 現在COGYは、高齢者や障害者アスリートのトレーニングとして使われているが、今後、資金を調達して挑戦したいのは小児用モデルだという。鈴木氏の当初からやりたいと思っていた念願のジャンルだ。

 さらに将来の新型としては、要望が多いのが坂道でも平地と同じ一定のトルクで上り下りができるタイプもすでに研究段階として作られているという。

 「自動車が馬に取って代わるまでに約50年かかっているから、『COGY』も50年かければ普通に使われる世界になっていると思う。出資者の方に50年後の話をすると申し訳ないが」

 50年後、長命だけでなく、COGYのおかげで健康な人の多い社会が訪れていると想像するとそれは壮大な試みだろう。

●株式会社TESS
2008年11月5日設立。東北大学発、研究開発型ベンチャー企業として、「あきらめない足こぎ車いす」COGYの販売やレンタル・リースを手がける。
起業直後に、挑戦支援融資制度の第1号案件として数百万を調達。直近では2015年10月、東日本大震災中小企業復興ファンドを運営する大和企業投資株式会社から総額1億5000万円の資金調達を実施。
社員数は2016年10月時点で11名。今後の展開にあたっては営業人材を検討。

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