むかしの家電には家具のような風格があった。1958年にナショナル(当時)が製造したエアコン1号機のなんと上品でかっこよかったことよ。
色は涼しげなアイスブルー、スピーカーのような外観は丸っこく親しみやすい。当時のエアコンはまだ室外機の概念がなく、後ろ半分を窓から外に出して使っていたそうだ。リモコンもまだなく風量はつまみで調節した。風向きは4つあるルーバーの向きを手で変えていた。これなら家にあってほしいと思える1台だ。
月日は流れ、来年にはパナソニックがエアコン事業を始めてからもう60年になるという。いまやエアコンのテクノロジーも驚くほどに進化している。
パナソニックのエアコン「エオリア」WXシリーズは「ダブル温度熱交換機」を搭載。熱交換機に流れる冷媒(ガス)の温度を可変圧力弁で上下2つに分け、2つの温度の風を同時に出せるようになった。温度差は暖房時最大約10℃。
可動式のセンサーが部屋と人の温度をとらえ、人の表面温度と周囲温度の温度差を推定。寒がっている人と暑がっている人を見分け、それぞれの人に合わせた温度の風を上下に動くフラップ、左右に動くルーバーで吹き分けられる。
コンプレッサーを改良したり、冬場の霜とりに室外機の熱を使うといった細かい工夫によって省エネ性能も向上させている。エオリアWXシリーズの想定価格は畳数別に31万円~42万円前後。安くはないが、性能はたしかに未来的だ。
ちなみにエオリアの由来はギリシャ神話に登場する風の神アイオロス。じつは1988年、ナショナルは同名のエアコンシリーズを作っていたこともあった。徳永英明のCMソング「風のエオリア」は聞きおぼえがある人もいるのでは。
時代が変わり、テクノロジーが刷新しても、いいものはいつも変わらない。温故知新、メーカーには普遍的な“いいモノ”を継承するようなものづくりをしてほしい。願わくは最新式のエアコンを、あの1号機のデザインで。
盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ、記者自由型。戦う人が好き。一緒にいいことしましょう。Facebookでおたより募集中。
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