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パナソニック、米と水を自動で入れる炊飯器 40年かけてついに完成

2023年06月19日 10時15分更新

文● 盛田 諒(RyoMorita) 編集● ASCII

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自動計量IH炊飯器 SR-AX1
想定実売価格 4万6000円前後
発売日 7月上旬発売予定
パナソニック

https://panasonic.jp/suihan/products/ax1.html

 食器洗い乾燥機、ドラム式洗濯乾燥機、ロボット掃除機。そしてついに炊飯器までが「全自動」の時代になりました。

 パナソニックが6月19日に発表したのは、あらかじめセットしておいた米と水を自動で入れる炊飯器「自動計量IH炊飯器 SR-AX1」。スマホから「炊飯」ボタンを押すだけでごはんが炊けます。昨年11月から数量限定で先行体験プログラムの応募を受け付けていた製品が正式に発表されました。

自動計量IH炊飯器 SR-AX1

米と水をセットしておけば、いつでもスマホでごはんが炊ける

 自動計量IH炊飯器はその名の通り、米と水の計量・投入から炊飯まで全自動。スマホアプリから遠隔炊飯できる炊飯器です。タイマー機能を使って炊きあがりの時間は自由に変更可能。内釜がおひつの形になっていて、炊きたてをそのまま食卓まで持っていけるのも特徴です。

スマホアプリから「炊飯」ボタンを押せば炊飯開始

内釜は本体下部の「おひつ」に入っている

機械が水を測るので内釜には水位線がない

 米びつに2kgまでの無洗米、600mlまでの水をタンクに貯めておき、0.5〜2合までの炊飯が可能。無洗米なので当然ですが、あらかじめお米を洗う必要はありません。

米びつに無洗米を入れておける(2kgまで)。虫が気になるなら「米唐番」もOK

タンクには600ml(2合分)の水をセットできる。水は毎回交換を推奨

 本体下部にある内釜の下に重量センサーを搭載。チューブを通じて内釜に水を入れた後、内部のスクリューで米を少しずつ投入しながら加水比を把握します。

内釜(おひつ)の下にある重量センサーで米と水を計量している

スクリューが回転し、米が巻き込まれるように内釜へ送られていく

センサーで計量した水と米はそれぞれチューブで内釜に送られていく

 毎回お手入れが必要なのは内釜とフタ。メニューやタイマーなどはスマホアプリで設定するようになっていて、本体天面にあるのは炊きたいごはんの量とスタートを選ぶタッチキーのみ。フラットなのでお手入れも乾いた布で拭くだけと簡単です。

天面にあるのは「炊きたい量」と「スタート」のみ。液晶画面はない

 アプリでは「カレー用」「全がゆ」「5分がゆ」などのメニューが選べるほか、硬さを「かたい」から「やわらかい」までの7段階から指定可能。通常の炊飯時間は約55分で、約45分の「早炊き」にも対応しています。

 「メモリー」としてお気に入りを3パターン登録可能。タイマーで決まった時間を指定したり、離乳食用の全がゆを指定すると便利です。

炊き方、硬さ、炊飯量、炊きあがり時間をアプリから設定できる

 なお炊けるのは2合までの小容量で、対応しているのは無洗米のみ。「炊きたて、食べきり」をコンセプトに開発していて、保温機能もありません。

粒立ちが良く、あっさりした味わい

 炊飯プログラムは無洗米に合わせた専用設計。一般的に無洗米は中まで均一に吸水させるのが難しいため、前炊き時の温度を低め、時間を長めにすることで、中まで吸水させるように設定しているそうです。

一般的には酵素のはたらきを促すため60℃で前炊きするが、より低めに設定している

 狙いとした30〜40代はごはんの粒感やすっきりした味わいを好むことから、粒立ちが良く、雑味の少ないごはんを目指して設計したということ。

 また、一般的な炊飯器は、吸水から沸騰までの時間から炊飯量を推測して火力を調整する必要がありますが、あらかじめ炊飯量がわかっているため、最適な火力で加熱できるというメリットもあるそうです。

 実際に自動計量IH炊飯器で炊いた「つや姫」を試食したところ、粒立ちが良くあっさりした味わいになっていました。一般的な圧力IH炊飯器は甘みが強いぶん米粒がつぶれがちなので、対照的な出来になっています。

発表会場で無洗米の「つや姫」を試食した

粒立ちが良く、粒のつぶれがない。味も香りもあっさりしているが、うまみはある

 本体は炊飯器というよりコーヒーメーカーのような形で、幅が17.6cmと狭くキッチンカウンターやちょっとした隙間に設置可能。インテリアの中で浮かないデザインを目指し、すっきりした外観になっています。

幅17.6cmのコンパクト設計。一般的な炊飯器と比べるとタテに長い

 蒸気口は水タンクの脇。一般的な炊飯器は内釜近くに蒸気口がありますが、本体内側にチューブを通して蒸気を抜けさせるよう設計しています。

蒸気口は本体後部の水タンク脇についている

40年前からの構想がついに実現

 開発の背景にあるのは共働き世帯の増加です。

 夫婦で就労時間も帰宅時間もバラバラなので、ごはんを一緒に食べることが難しく、保温機能を使ったり、冷凍ごはんをレンジであたためて食べるのが一般的。本当は炊きたてごはんを食べたいという思いにこたえるため開発を始めました。

 開発当初、社内からは「自動で米と水を計量する意味があるのか」「2合だけなら手で測れるんじゃないか」といった意見も出たそうですが、便利にごはんを炊けることにこだわって開発を続けてきたということでした。

 実は、自動計量の構想自体は40年前からあったもの。当時は無洗米が主流ではなく、遠隔操作も実現していませんでした。「いかに洗米を自動化するか」に焦点が当てられ、今とはまったく別の形になっていたそうです。

 余談ですが、シャープ「ヘルシオ ホットクック」で具材をかきまぜるユニットは、「ヘルシオ炊飯器」の洗米ユニット「かいてんユニット」を応用したもの。自動洗米機能には各社が心をくだいてきた歴史があります。

技術上のポイント。内釜が垂直方向ではなく水平方向に入るのが特徴

細かい技術的なこだわりの数々。おひつ天面の孔はお米を内釜に落とすとき、円錐状にせず分散させるよう形状が工夫されている

先行体験に約1万件の応募が殺到

 パナソニックでは製品の発表に先立って、先行体験プログラム「Future Star Program」を実施しています。

 これは自社製クラウドファンディングのようなもの。他社のプラットフォームを使うと消費者に対して直接つながりが持てず判断が難しくなるということで、あえて自社でマーケティング用プログラムを設計したそうです。

 募集直後からSNSなどで大きな反響があり、11月15日から12月25日にかけて、200台の定数に対して約1万件の応募があったということ。

 先行体験プラグラムの参加者からは「米と水さえ入れればスマホで簡単に炊けるのがすごい」「おひつを洗う以外の手間がほぼないため、家でごはんを食べることが増えた」といった声が寄せられたということ。

 「水を入れ替えるだけであとはやってくれるので時短になっている」といった手間を省けることに対する感想や、「子どもをあやしながら炊飯を準備する必要がない」といった切実な感想も寄せられたそうです。

 当初は「外から炊飯ができる」ことをメリットに掲げていましたが、リビングのソファに座っていても、ベッドの中からでも炊飯ができるということも魅力につながることがこうした調査からわかったということでした。調査結果は製品のキャッチコピーなどに反映していくということ。

 また当初はDINKs世帯をターゲットに考えていましたが、応募者の傾向から新たな想定ターゲットとして単身のシングル層をサブターゲットに設定することになったそうです。

「スマホで米が炊ける」「誰が炊いてもうまい」

 パナソニックが打ち出した新しいコンセプトの炊飯器。一番の特長は、やはり「スマホで米が炊ける」という便利さだなと感じました。

 自分自身の子育てを振り返ってみても、泣いている赤ちゃんを抱っこしているときはソファに座ってスマホを見る以外本当に何もできなかったので、「とりあえず米だけは炊ける」というのは本当に救いになりそうです。

 もうひとつ大きいのは、誰でもおいしく炊けること。コーヒーと同じでお米を炊くときの水の量は意外とシビアなんですよね。そこにセンサーを入れることで、好きな硬さのごはんがおいしく炊けるというのは斬新です。

 食器洗い機やロボット掃除機を使っているときも感じたことですが、機械は人間よりはるかに正確に仕事をしてくれます。味わいが安定しているというのは、他の炊飯器と比べても大きな強みになるのではないかと感じます。

 とても魅力的な製品に見える一方、様々な制約はあります。2合までしか炊けない、無洗米しか使えない、保温ができない、圧力を使わないぶんあっさりした味わいになるなど、かなり使う人を選ぶ仕様になっています。

 そういうものと割り切って使う、炊飯器の2台目として使う、自動調理なべと併用するなど、家庭事情によって導入の仕方も異なりそうです。

 今後このコンセプトに刺激を受けて、他社からもファミリー向け、保温機能付き、味わいをよりリッチにしたモデルなどが展開されると面白そうですね。まずは初代機を自分の生活に取り入れてみて、どんな風に暮らしが変わるのかを実感してみたいと感じました。エポックメイキングと言っても過言ではない、とても面白い1台です。

 

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