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Windows情報局ななふぉ出張所 第38回

消費者庁がマイクロソフトを「指導」したという理解は間違っている

2016年06月24日 15時00分更新

文● 山口健太 編集●KONOSU

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 先週取り上げた、Windows 10の無償アップグレード問題には、大きな反響がありました。

 6月22日には、消費者庁もアップグレードに関する情報提供に加わったことで、再びマスメディアでも報じられ、騒ぎが広まっています。

 しかし重要なのは、消費者庁がマイクロソフトを「指導」したわけではないという点です。

消費者庁による「行政指導」ではない

 公開された文書(PDF)を読めば分かるように、消費者庁は無償アップグレードをやめるよう、ユーザーやマイクロソフトに呼びかけているわけではありません。

 むしろ「OSを最新にアップグレードすることで、セキュリティ向上などのメリットもあると考えている」(消費者庁担当者)として、アップグレード自体は否定していないのです。

消費者庁が公開した文書は「指導」ではなく、アップグレード前の確認事項という位置付けだ。

 その上で、「事前に確認すべき点や、通知やキャンセルの方法について、Windows 7と8.1のユーザー向けに情報を提供した」というのが消費者庁の立場です。

 わかりづらいとの指摘が多いアップグレードの画面についても、「具体的な画面内の文言などについて、法律に照らして問題があるかどうかまでは確認できていない」と、現段階では判断を保留しています。

 逆に日本マイクロソフト側は、消費者庁に対して技術的な資料や画面写真などを提供。「消費者庁から行政指導を受けたわけではなく、ただちに何らかの対応をする必要があるとは考えていない」(日本マイクロソフト広報部)との見解です。

消費者庁に取り上げられたこと自体が大きな失点

 一連の無償アップグレード施策を快く思っていない人は、「ようやく消費者庁がマイクロソフトを指導してくれた。今後は改善されるに違いない」と感じたかもしれませんが、実際にはそうではないのです。

 かといって、これが何の影響も及ぼさないわけではありません。「消費者庁が取り上げたこと」自体が、Windows 10のイメージダウンにつながる恐れがあります。

 これまで、消費者庁が注意を喚起してきたのは、明らかに「悪徳商法」といえるレベルの問題や、リコールされた製品についてです。Windows 10の無償アップグレードを取り上げたことは、異例の事態といえます。

 その背景として、「広く報道されて社会的な影響が大きいことや、国会で質問主意書が提出されたことなどを受けたもの」と消費者庁は説明しています。

 しかし一連の報道を見た人の記憶に残るのは、「消費者庁」「注意」「Windows 10」といったキーワードです。これでは「Windows 10が何か悪いことをやらかした」という印象ばかりが先行することになります。

 6月10日の説明会で事態を収束できず、消費者庁に取り上げられたことが大きく報じられ、全国的なイメージダウンを招いたことは、日本マイクロソフトにとって大きな失点と言わざるを得ません。

もし、アップグレードの画面がこれくらい分かりやすければ、ここまで騒ぎは大きくならなかったのではないか(画面は筆者作成)

Windows 10のイメージ回復はできるか

 消費者庁の発表に対する反応を見ても、「対応が遅すぎる」とか、「なぜ行政指導に踏み切らないのか」といった声が目立ちます。無償アップグレードにより、多くのユーザーがセキュリティ向上などの恩恵を受けられる一方、意図せず騒動に巻き込まれた人の多さも感じるところです。

 果たしてWindows 10は、このイメージダウンから回復できるのでしょうか。これまでのWindowsならば、「次のバージョンで取り戻せばいい」という考え方もあったでしょう。しかし10は最後のバージョンと言ってしまった以上、その手は使えません。

 次の「Windows 10の日」である7月10日は日曜日ということもあり、日本マイクロソフトは特に報道関係者向けのイベントは予定していないとのこと。しかし何らかの形で、Windows 10のイメージを大きく回復する施策を準備していることに期待したいものです。

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