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苦労したのはグレーな部分 話がわかるクラウドサービス:Gozal

起業家・全士業支援バックオフィスに求められたのは地味な物作り作業

連載
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「人間の感情を考慮した設計」はどうしても残る

 とことん自動化する、というウェブサービスの特徴と反するようだが、人の部分は残す、という明確な姿勢が印象的だ。士業では、人間の感情を考慮して設計しなければならない部分がまだまだたくさんあるという。

 たとえば、従業員と会社の労使間紛争の処理や、相手方がいる契約書のデザイン、特許出願する際の特許出願範囲をどうするかなど。経営者の意思や今後のビジョンで変わってくるところも、人に依頼した方が効率はいい。また、創造性が要求される特許の範囲や、交渉の要素が強い資金調達作業もシステムには落とし込みづらいと高谷氏は説明してくれた。

 Gozalの開発で一番苦労したところは、適法に運用する必要はあるが、盲目的に則ればいいというわけでもないところだったそうだ。

 「ひとつひとつ、さまざまな法律を解釈し、ツールを作りあげる。会社設立に関する全フローを洗い出すのも、会社によっていろいろな分岐がある。法律上は正しいように見えるけど実務では無視されているようなところもある。バックオフィスは答えがあるように見えて、ないことも多く、経営者判断によることも多い。たとえば、社会保険は絶対に入らなければならないが、入ってない企業もたくさんある。いろんな抜け道だったりグレーだったりする部分をどこまで許容するのかバランスを考慮しておかないと、結局クラウドサービスとしては使ってもらえなくなってしまう」(高谷氏)

 これはとてもユーザー目線に立ったコンセプトで、うれしいところ。あまりに自由度が高いとこちらとしてもどうしていいのかわからなくなるが、ガチガチでも活用できなくなってしまう。「今までにないバックオフィスの統合支援ツール!」というと洗練したイメージを受けるが、意外と地味な物作り作業が求められるようだ。

 「専門家スタッフが法律をかみ砕いてエンジニアに伝えて理解してもらうところが大変。教えるところから始まるので、地道な作業がひたすら続く。日々開発ミーティングをやっており、新しい機能を作って、ユーザーに試してもらってフィードバックをもらって、直してっていうのをひたすら回しているという形。それ故に、物作りをする人間としてはすごく楽しい。地味だけど」(高谷氏)

単一でバックオフィス全業務を済ませられるのが価値

画像提供:BEC

 Gozalのターゲットは起業家・中小企業。その理由も明確だ。

 「従業員10人以下の会社と、従業員50人以上の会社ではバックオフィスの体制が異なる。大きい会社だと労務部や法務部があって、労務部に必要な労務ツールが欲しいとか、法務部に必要なクラウドツールが欲しいといったニーズがある。しかし、10人以下の会社だと、誰かが法務も労務も兼任するので、ツールが散らばっているというのがノイズになる。比較的小規模な会社には、一つのサービスでバックオフィス業務をすべて済ませられるのはバリューになる。ここを外さず、全方位で支援していきたいと考えている」と高谷氏。

 バックオフィス業務の支援サービスというと、freee(フリー)やマネーフォワードといった有名スタートアップのサービスのほか、クラウド士業のBizer(バイザー)、労務管理ではSmartHRなどがある。Gozalとしては、どうやって勝負していくのだろうか。

 「すでにあるサービスは業務を効率化するためのもので、利用によって会計や労務がこれまでのやり方よりも楽になる。しかし、創業して間もない会社にヒアリングすると、給与計算や会計ツールをそもそも使えないというケースが多く、『楽になりたい』というニーズは実は本質的ではない。初めてチャレンジする人にとっては、基本的なこともわからないので設定さえ難しく、日々の運用などもできない。そこで我々は、はじめて使うバックオフィスの業務でも『安心して使える』ツールを目指した。もちろん専門家に相談もできるが、勤怠管理や給与計算、給与明細の発行など会社全体の業務を行う場所としても機能しており、すべての従業員を招待してチームで使うサービス。差別化以前に、そもそもポジションやターゲットが異なる」と高谷氏。

画像提供:BEC

 デジタルには詳しくても会計にうとく、会計サービスの導入に失敗したことがある個人事業主もなどはよく理解できる話だ。知識のない人でも利用できるなら、確実にニーズはあるだろう。ただし、どうやって集客するのか。Gozal自体の知名度はまだまだだ。

 「起業したばかりで経験が浅い場合、問題やタスクが発生したときに、場当たり的に調べるケースが多いので、ウェブ検索と相性がいい。そのため、SEOに注力して集客していく。現在、自然流入で月間110~120社ずつユーザー企業が増えているので、そこがベースとなる。そしてもうひとつ、我々は250の弁護士や税理士事務所の登録があるため、彼らのクライアントを招待してもらうというプロセスを今後開発していく」

 また、Gozalが入居している新宿のオフィスで、週に1度セミナーも行っているとのこと。連携している弁護士などの専門家に講師を務めてもらい、起業家に40~50人参加してもらう。地道ではあるが幅広いジャンルの経営者にアプローチでき、物作り工場や飲食業の経営者に利用してもらえるようになったという。

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