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中堅・中小企業やSIerをクラウドにいざなう日本流の新商材

サーバー感覚でクラウドを導入できるExpress5800/CloudModel

2015年03月17日 11時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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初めての販売パートナーにもクラウドを扱いやすく

 Express5800/CloudModelのプロジェクトは、オンプレミスとクラウドを両方提案したいという営業部門からの要望に、Express5800シリーズを手がけるハードウェア部門だけではきちんと応えられなかったという現場の課題から生まれたという。プラットフォームビジネス本部の濱岡真由氏は、「クラウド商材としてNEC Cloud IaaSがあるのに、なぜ上手く提案できていないのだろうと考えた時に、持って行きやすい仕組みや形になっていないんじゃないかという疑問がありました」と振り返る。

NEC プラットフォームビジネス本部 プラットフォーム商品企画グループ 濱岡真由氏

 一方で、NEC Cloud IaaSを手がけるサービスデリバリ事業部はこれまで手掛けてきた直販に加えて、パートナー販売を積極的に展開していきたいという思いがあった。この結果として、プラットフォームビジネス本部とサービスデリバリ事業部で共同プロジェクトを立ち上げた。今から半年前の2014年7月のことだという。

 “クラウドでありながらモノっぽい商材”を作るべく、始まったプロジェクト。まずハードウェア部門側が、 Express5800シリーズの売れ筋に当たるスペックをベースに選定。逆にネットワークやファイアウォール、監視サービスなどはサービス部門の意見を取り入れた。

 とはいえ、パートナー販売が主体のハードウェア部門と直販をメインとするサービス部門とでは、商材や販売形態に対する考え方が異なり、調整に苦労したのも事実。また、スケールアウトや従量制課金などクラウドらしさを封印した商品の作り方も両者で壁だったという。サービスデリバリ事業部の上埜友子氏は「クラウドをやっている側からすると、構成変更が柔軟にできないという点は、メリットを奪うのではと、当初はかなりとまどいました」と語る。

NEC サービスデリバリ事業部 主任 上埜友子氏

 これに対して、濱岡氏は「正直、柔軟性がもっとあればいいのにという声はあると思います。ただ、今回はクラウドを初めて提案する方向けというターゲットが 明確に決まっていました。そして、そういったお客様はたとえば500GBのディスクでRAID1を組んで、以降一度も増設しないというパターンも多く、むしろ選択肢がありすぎると選びづらいという声もありました。だったら、クラウドでも増設できない仕様にした方が、使ってくれるお客様が一定数いるのではないかと考えました」と語る。

 さまざまな議論の末、50種類のオススメ構成に必要十分なサービスを同梱し、3年間の利用権として販売するという現在のExpress5800/CloudModelのパッケージ案に落ち着いた。上埜氏も「両者のいいところを融合した、NECらしい新たな商品をリリースするために、今回のプロジェクトでは、いったんこれまでのオンプレやクラウドの概念にとらわれるのをやめて、自由な発想で、お客様にとって使いやすい形を追求しようと考えました。(クラウドらしからぬサービス仕様に関しても)今では納得しています」と語る。

 オンプレミスと同じ感覚でクラウドが利用できるExpress5800/CloudModel。確かに利用権が設定されたパッケージ製品のため、作成済みのテナントやサーバーの削除、インターネット接続やファイアウォールの増強は行なえないといった制限はある。しかし、物理サーバーのサーバーキッティングと同じように扱えるので、オンプレミスをメインに展開してきた既存のSIerや顧客が扱いやすいというメリットも大きい。濱岡氏は、「エンドユーザー様が直接設定や運用することも容易ですが、販売パートナー様がキッティングしてお客様に納品するという形で、お使いいただくことも多いと考えています」と語る。

製品からハイブリッドクラウドのソリューションへ

 Express5800/CloudModelは製品単体ではなく、ハイブリッドクラウドを実現するソリューション展開も進めている。その第一弾となるのが、オンプレミスからクラウドへのデータ移行を実現する「ファイルサーバ移行ソリューション」だ。

  これは2015年7月15日のWindows Server 2003のサポート切れを見越したソリューション。オンプレミスの老朽化したファイルサーバーのデータを「NEC Easy Data Migration for File Server(NEDAM)」というNECのソフトウェアを用いて、クラウド上のWindows Server 2012に移行するというもので、Express5800/CloudModelとともにNEDAMの購入が必要。移行元と移行先のライセンスが添付するため、手間なくクラウドへの移行が行なえる。

 NEDAMではファイル単位ではなく、ディスク丸ごとデータをコピーするため、データ移行に関する時間を大幅に短縮できる。また、データ転送に関してはVPNツールと組み合わせて、セキュアにデータをクラウドに移行できるという。

 こちらは実際にNEDAMのデモを見せてもらったが、簡単設定でデータ移行ができ、コピー状況や残り時間も一目で把握できる。ネットワーク経由のファイル転送は時間がかかるため、状況をきちんと把握できるのは大きなメリットだ。移行作業もホワイトペーパー化されているため、ユーザー自身も直接作業を実施できる。

 ハイブリッドクラウド向けのソリューションは、今後災害対策やデータ消失などに対する「バックアップソリューション」やオンプレミスとクラウド側のサーバーを同期する「BC・DRソリューション」などが提供される予定。こうしたソリューションにおいて、ツールやリファレンスが拡充されていけば、ハイブリッドクラウドはますます現実味を帯びたものになるだろう。

オンプレミスとクラウドを連携させるさまざまなソリューション

CloudModelはクラウド導入の敷居を下げるか?

 クラウドファーストの時代が一気に訪れた感のある昨今だが、日本の大多数を占める中堅・中小企業はこの潮流に乗り切れず、戸惑っているのもまた事実だ。IT部門のガバナンスが強いエンタープライズやフットワークの軽いスモールビジネスに比べて、SIerへの依存率が高い中堅・中小企業はビジネスモデルの見えにくいクラウドに移行しづらい状況がある。

 一方で、こうした企業が運用管理のコストを下げ、戦略的なITの投資を推進するために、クラウドは有力な選択肢となりうる。インフラのお守りに大きな負荷をかけてきたSIerにとっても、クラウドは新しいビジネスのチャンスを切り開く商材と言えるだろう。

 こうした中、オンプレミスのサーバーとクラウドサービスの両方を手掛けるNECが新たに投入したExpress5800/CloudModelは、注目すべき存在だ。クラウドへの移行に悩 む中堅・中小企業、ビジネスモデルの構築に課題を抱えるSIerを救う存在となるか、長い目で見守っていきたい。

(提供:NEC)

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