このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

最新パーツ性能チェック 第155回

1Wあたりの性能が格段に向上した「GeForce GTX 750 Ti」

2014年02月19日 20時00分更新

文● 加藤 勝明

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 2月18日、NVIDIAは新アーキテクチャー“Maxwell”をベースにしたGPUの第1弾として「GeForce GTX 750Ti」と「GeForce GTX 750」(以下、GTX750Ti/GTX750と略)を発表した

 FermiやKeplerでは、コアゲーマーの度肝を抜く性能のフラッグシップモデルから投入が始まったが、Maxwellの製品第1弾はゲーマー向けのエントリーモデルである。GTX750Tiは1万8000円前後、GTX750は1万5000円前後で販売が開始されている

GeForce GTX 750 Tiのリファレンスカード

 今回はその新CPUの中でも上位にあたるGTX750Tiのリファレンスカードをテストできる機会に恵まれた。Fermi→Keplerで改善されたワットパフォーマンスを、Maxwellでさらに強化したという噂のGPUの性能をチェックしてみたい。

NVIDIAの意図する“ゲーム体験”を満たすスペック

 Maxwellを解説する前に、まずはGTX750TiおよびGTX750のスペックを比較することにする。

各ビデオカードの比較表
GPU GeForce
GTX 750 Ti
GeForce
GTX 750
GeForce
GTX 660
GeForce
GTX 650 Ti
BOOST
GeForce GTX 650 Ti GeForce GTX 550 Ti
コードネーム GM107
(Maxwell)
GM107
(Maxwell)
GK106
(Kepler)
GK106
(Kepler)
GK106
(Kepler)
GF116
(Femi)
製造プロセス 28nm 28nm 28nm 28nm 28nm 40nm
ストリーミングプロセッサー数 640 512 960 768 768 192
コアクロック 1020MHz 1020MHz 980MHz 980MHz 925MHz 900MHz
ブーストクロック 1085MHz 1085MHz 1033MHz 1033MHz - -
テクスチャーユニット数 40 32 80 64 64 32
ROP数 16 16 24 24 16 24
メモリー転送レート(相当) 5.4GHz 5.0GHz 6.0GHz 6.0GHz 5.4GHz 4.1GHz
メモリータイプ GDDR5 GDDR5 GDDR5 GDDR5 GDDR5 GDDR5
メモリーバス幅 128bit 128bit 192bit 128bit 128bit 128bit
メモリー搭載量 2GB 1GB 2GB 1GB 1GB 1GB
TDP 60W 55W 140W 110W 140W 116W
外部電源 なし なし 6ピン 6ピン 6ピン 6ピン

 ストリーミングプロセッサー(CUDAコア)数が640基と、1世代前のGTX650Ti/GTX650TiBよりも若干減少しているが、GPU Boostに対応すること。ベース/ブーストクロックともに1GHz以上に設定されている一方、メモリークロックは控えめ。そしてTDPはGTX750Tiでわずか60Wと低く抑えられているという3点に注目しておきたい。さらに消費電力が低いため、補助電源は基本的に必要としない。

GTX750Tiの情報を「GPU-Z」で確認したところ

 NVIDIAはGTX750TiとGTX750でGTX650Tiのポジションを置換し、GTX660とGTX650の中間に位置する製品と定義している(GTX650Ti BOOSTというGPUもあるが、これは数ヵ月前に終息しているのでマーケティング上は問題ないようだ)。

当面GTX660とGTX650は存続させ、そのギャップをMaxwellベースのGTX750TiとGTX750で埋める戦略のようだ

 だがGTX750Tiはクロックが上がったとはいえ、3D描画のキモであるCUDAコア数を減らし、さらにメモリークロックは据置きにした。果たしてこれでGTX650Tiの代役が勤まるのか? しかしMaxwellなら大丈夫、というのがNVIDIAの主張だ。

 ここ数世代のGeForceでは、一定数のCUDAコアとコントロールロジックやL1キャッシュなどをまとめた「SM」(Streaming Multiprocessor)をGPU内部に複数用意する、という設計手法をとっている。1世代前のKeplerでは192基のCUDAコアが1基の「SMX」(SM eXtreme)を構成する。

KeplerとMaxwellのSM構成。NVIDIAによると、CUDAコアあたりの性能が35%向上、SMM全体では2倍の性能アップという

 ところがMaxwellではCUDAコア32個を小さなコントロールロジックでまとめ、これを4つまとめたものを「SMM」(SM Maxwell))と呼んでいる。SMM1個あたりのCUDAコア数は192基から128基へ大幅に減ったが、CUDAコアの利用効率を上げている。そしてCUDAコアが少なくて済むので消費電力も下がる→ワットパフォーマンス最高! という論法なのだ。

GTX660のブロック図。192基のCUDAコアがSMXを構成し、さらにSMX2基でGPC(Graphics Processing Clusters)を構成、それを束ねるようにL2キャッシュやメモリーコントローラーがある

GTX750TiではSMMの内部に32基のCUDAコアのクラスターが4つあること、GPCはSMM5基で構成されるなど、構造も大きく変化した

 また、GTX750Tiはメモリークロックや帯域が据え置かれたが、MaxwellではL2キャッシュを2MB(GTX660では384KB)に増やすことでボトルネックを改善させている。これらの改善により、少ないハードウェアリソースでTDPが2倍近いGTX650Tiを置換しようというのだ。

 Maxwell第1弾をエントリークラスのミドルレンジGPUで投入してきたのは、ミドルレンジGPUのユーザーの買い替えを促し、NVIDIAの独自ゲームテクノロジーを体験させよう、といいう考えがあるようだ。ここで言う独自テクノロジーとはゲームの録画/配信をつかさどる「SHADOWPLAY」や液晶のカクつきなどを抑える「G-Sync」、日本では未発売の携帯ゲーム機「SHIELD」との連携といったものがある。

GTX750Ti/GTX750は低予算でNVIDIAの考えるゲーム体験のために生まれたGPUといっていいだろう

 NVIDIAはGeForceの400~500番台のミドルレンジGPUからの買い替えはもとより、今まで電源容量の不足や補助電源確保の面で難しかった小型PCの強化用としてもとらえているようだ。

 今回入手したリファレンスボードは補助電源不要の設計だったが、実際に各メーカーからリリースされる製品では、6ピンの補助電源を必要とするものもある。またクーラーの仕様や出力端子の構成なども、今回入手したリファレンスカードと大きく異なる。

補助電源コネクタのパターンはあるので、メーカーが必要と考えれば補助電源を使う仕様にも変更できる

GTX750TiのリファレンスカードではDVI×2とMini HDMIという構成だが、G-Syncが使えるようDisplayPortを装備することもできる。このあたりはメーカーの裁量任せだ

GTX750Tiのリファレンスクーラーは最近のGeForce用クーラーとしてはどうしようもなくチープだ。実際の製品では各ベンダーオリジナルの大型クーラーが装備されている

※お詫びと訂正:記事初出時、表内のGeForce GTX 750 TiのTDP記載に誤りがありました。記事を訂正してお詫びします。(2016年3月15日)

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

ピックアップ

ASCII.jpメール アキバマガジン

ASCII.jp RSS2.0 配信中