最近、日本政府と米国企業パランティア・テクノロジーズが関係を深めている。
2026年5月23日の日本経済新聞に掲載されたコラムによれば、同社が提供する軍事作戦の立案を支援するシステムについて、防衛省の幹部らが「一刻も早く日本に導入すべきだ」と述べているという。実際、2026年3月には、同社のピーター・ティール会長が高市早苗首相と面会するなど、日本政府はパランティアのシステムの本格導入に近づいているようにみえる。
しかし、消費者向けのビジネスを展開していない同社の姿については、筆者としても正直に言って、データ分析に強い会社とか、米国のイランやベネズエラへの攻撃で使われているシステムといったあいまいなイメージにとどまる。
調べてみると、パランティアの日本進出は7年前にさかのぼり、防災分野や民間企業へのシステム提供で具体的な実績もある。英語環境のネットで確認できる情報からは「謎に包まれた企業」というよりも、日本では一般への認知が広まっていない企業だと考えられる。
能登半島地震では石川県にシステム提供
同社が、日本に進出したのは、2019年11月のことだ。パランティア・テクノロジーズと損害保険大手SOMPOホールディングスが合弁会社パランティア・テクノロジーズ・ジャパンを設立している。日本法人においては、米パランティアとSOMPOが50%ずつの株を持つ、対等な関係の合弁だった。SOMPO自身はおそらく、保険契約のリスク分析などにパランティアのシステムを活用しているのだろう。当時は、パランティアは、ビッグデータの解析プラットフォームを展開する企業として紹介されている。
およそ半年後の2020年6月には、富士通との提携を発表している。富士通はおもに、パランティアが提供するソフトウェアを日本の民間企業や地方自治体に導入する役割を担っているようだ。
2021年の元旦に発生した能登半島地震では、パランティアは石川県に対し、県庁の災害対応を支援する被災者情報のデータベースを提供している。大災害の発生時、被災者を取り巻く状況は刻一刻と変化する。ひとりの被災者の動きを考えてみると、災害発生直後は自宅に近い避難所を利用するが、その後は別の自治体にある親戚宅に身を寄せたり、仮設住宅に入居したりと、避難先も変化していく。
こうした場合、窓口となる基礎自治体も変わるし、被災者自身が必要とする支援のニーズも変化していく。パランティアは、こうした状況を想定し、一時的な引っ越しで自治体を移動したからといって、必要な支援が届かない「空白」を生じさせないシステムを目指したという。このプロジェクトについては、パランティア自身が日本語で、事例紹介のサイトを公開している。
被災者の避難先をめぐっては、避難先の自治体が変われば、自治体側がアクセスできる個人情報も変化する。たとえば、B町からA市に移動した場合、B町がアクセスする必要のある個人情報は少なくなるが、A市は全面的なアクセスが必要になるかもしれない。このため、パランティアは、被災者の位置に対応して、個人情報へのアクセス権を調整する機能を実装したとしている。
パランティアが得意とするのは、形式の異なる雑多な情報の統合、管理、分析だと言われている。例えば、能登半島地震のケースで考えると、おそらく以下のような情報が混在している。がけ崩れなどに関する被災状況の衛星画像、倒壊家屋の地理情報、住民票に掲載されているような世帯の構成員に関する情報、避難場所や仮設住宅の位置情報、自治体が提供する支援メニューに関する情報──。こうした形式の異なる情報をつなぎ合わせ、分析し、ユーザーが必要とする情報を提供する。同社は、民間企業や自治体向けには、Foundry(ファウンドリー)という名称のプラットフォームを提供している。政府の軍事部門や情報部門向けのサービスとしては、Gotham(ゴッサム)が知られている。
軍事・情報部門への導入を想定か
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