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NTT Comが描くクラウドとグローバルITの現実解

クラウドプレイヤーとしてのNTT Com、KDDI、IIJを斬る!

ガートナーが語った「キャリアクラウドを選択肢に入れる理由」

2013年10月28日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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10月24日、「NTT Communications Forum 2013」において、ガートナー ジャパンの田崎堅志氏がクラウドサービス選びについて特別講演を行なった。講演の中で田崎氏はAWSやGoogleなどのクラウドネイティブだけではなく、通信事業者によるクラウドサービスも選択肢に入れるべきと提言した。

クラウドプレイヤーはどれも同じではない

 「キャリアのクラウド・サービス:企業が見落としてはいけないプロバイダーの特性」と題した特別講演で登壇したガートナー ジャパンのバイスプレジデント ITインフラストラクチャ&セキュリティの田崎堅志氏は、まずIT業界のさまざまなプレイヤーがクラウド事業に参入し、サービス選びが難しくなっている点を指摘した。日本ではIaaS事業者だけでも60社以上が乱立している現状。そのため、「機能を横並びで比較するのは、とても大変。結局、付き合いのあるSIerに提案を依頼したり、勢いのあるAWSを前提に考える企業は多い」(田崎氏)のが現状だという。

ガートナー ジャパンのバイスプレジデント ITインフラストラクチャ&セキュリティ 田崎堅志氏

 こうしたクラウドプレイヤー乱立の中、選定のヒントとして同氏が挙げたのが、「キャリアクラウドを選択肢に加える」ことだ。キャリアクラウドは文字通り「キャリア(通信事業者)が提供するIaaS」と定義されており、日本ではNTTコミュニケーションズ、KDDI、ソフトバンク、IIJなど、海外ではAT&T、ベライゾン、BT、Tシステムズなどから提供されている。

キャリアクラウドとはなにか?

 田崎氏によると、同じクラウドサービスでも提供するプレイヤーでも、実際は大きく「クラウドネイティブ」「テクノロジープロバイダー」「キャリア」「データセンター事業者」の4つに分類でき、それぞれ特性が戦略が異なっているという。

クラウドプレイヤーの特性と戦略

 まずAmazonやGoogleなどのクラウドネイティブは規模の経済とクラウド技術の先進性を軸にビジネスを進めており、最近では一般企業にも浸透しつつある。また、IBMや富士通、マイクロソフトなどのテクノロジープロバイダーも、クラウドネイティブと同じく最新のテクノロジーを持っているが、クラウドビジネスの伸張により、既存の顧客基盤やビジネスを脅かされるというジレンマを抱えている。また、エクイニクスやビットアイルなどのデータセンター事業者は、ファシリティを提供することがサービスの中心で、いわゆるクラウドサービスとはややレイヤーが異なっているという。

 では、キャリアクラウドはどのような特性を持っているのか? 他のプレイヤーに比して、キャリアは広域ネットワークという規模の経済や財務基盤の安定性、人的リソースの充実などの特性を持つ。一方で、ネットワーク以外の技術力は必ずしも強くないという弱点を抱えていると指摘する。田崎氏は、「機能比較して比べるより、分類することによって違いが見えてくる。これが非常に重要なポイント」と述べ、プレイヤーの分類によるサービス選びを推奨した。

キャリアクラウドはなぜ注目すべきか?

 では、なぜキャリアに着目するか? 田崎氏が最初に挙げたのは、ネットワークサービスとクラウドサービスに存在するスケールビジネスという類似点だ。田崎氏によると、従来のITビジネスは「熟練の大工が一件一件造る注文住宅のようなもの」だという。個々の顧客にカスタマイズする個別構築がメインで、ベンダーにとってみれば、人的リソースを消費する分、利益率も高い。しかし、一度導入したら、変更は難しく、多くは従量課金ではない。一方のクラウドビジネスは、マンションと同じく標準化されたサービスを提供するもので、利益率の低い薄利多売ビジネスだ。その一方でユーザーにとって見れば、従量課金で、すぐ使え、すぐ辞められるという特徴を持つ。

キャリアビジネスはスケールビジネスと親和性が高い

 実はキャリアのビジネスは、このクラウドのビジネスとかなり近いというのが田崎氏の指摘だ。キャリアは、もともと先行投資で大規模なインフラを構築し、標準化サービスを提供する。そして、キャリアでは、こうしたスケールビジネスのために組織形態や料金体系、販売方法、サポートなどが構成されている。「熟練した大工さんでもマンションは造れないし、マンションの施工会社が建て売り住宅を造るのも難しい」(田崎氏)とのことで、キャリアはクラウドビジネスを提供しやすい組織になっているというわけだ。

 2つめは、大量のユーザーに対してユーティリティサービスを提供できる能力がある点だ。ユーティリティサービスとは、365日安定して提供する電気やガス、水道のようなもので、通信も同じジャンルと位置づけられる。災害の際も、前述した電気、ガス、水道のほか、通信はライフラインとして最優先して普及される。こうしたサービスを提供してきたキャリアであれば、大量のユーザーに標準化されたサービスを使った分だけ支払う形で提供するクラウドサービスは親しみやすいもの。「しかも、キャリアはすでに自社設備としてネットワークのインフラを保有しているので有利」とのことで、キャリアクラウドのユーザーは、高い性能やコスト効果を得られる可能性がある。

大量ユーザーへのユーテリティサービスの提供能力

 田崎氏が最後に挙げたのが、既存のビジネスではキャリアは生き残れないという点がある。通信事業者のサービスに関して、田崎氏は「無料の音声サービスやIP電話の普及により、日本でも音声サービスの収益が減っている。その分、データ通信は伸びているが、利益が確保しにくくなっている」と語る。一方、クラウドの分野は新興ベンダーのほとんどで、過去のしがらみがない市場。おのずと通信事業者がクラウドサービスを展開するという状況になる。田崎氏は「テクノロジープロバイダーにとっては、クラウドは既存のビジネスへの破壊的な意味合いを持つ。しかし、キャリアはクラウドビジネスが伸張しても、既存のビジネスを壊さない。その分、本来あるべきクラウドIaaSを提供できる可能性がある」と語る。

新たな成長へのフォーカス

 しかし、キャリアクラウドにも懸念はある。田崎氏は「クラウド自体が発展途上で、テクノロジーの開発力が必要。アプリケーションやシステム開発に関しても経験が乏しい」と指摘する。また、強みがあることと、強みを活かすことはあくまで別。総じてキャリアのクラウドに関しては「過度に期待しない。しかし、過小評価もすべきではない」(田崎氏)と述べ、選択肢に加えつつ、動きや成熟度を見極める必要があると提言した。

キャリアクラウドへの懸念

(次ページ、NTT Com、KDDI、IIJの3社のクラウドを比較)


 

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