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品質と価格のバランスでシンガポールとは異なる強みを提供

NTT Com現地法人社長に聞いたICT途上国マレーシアの魅力

2013年08月15日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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「Nexcenter(ネクスセンター)」ブランドをひっさげ、アジア諸国、特にマレーシアに積極的にデータセンターを建築しているのが、NTTコミュニケーションズだ。マレーシア現地法人社長にデータセンタービジネスのほか、通信動向などについて聞いた。

インフラ面ではシンガポールに限りなく近い

 NTTコミュニケーションズとマレーシアとの関わりは古く、電信電話公社時代の1990年代にさかのぼる。マハティール政権下、天然ゴムのプランテーションやスズの産出を中心にした一次産業から、知的労働産業立国へと舵を大きく切りつつあったマレーシアが立ち上げたのが、「MSC(Multimedia Super Corridor) Malaysia」と呼ばれる国家プロジェクトである。MSCでは電力や通信、交通などのインフラを整備すると共に、「サイバージャヤ」と呼ばれるIT特区を各地に設け、海外の企業を積極的に誘致。アウトソーシングを中心に雇用を創出すると共に、アジアのICTハブとしてシンガポールや香港に追いつき、追い越そうというものだ。すでにMSCエリアは国内20カ所以上に展開されている。

 このサイバージャヤへの進出をいち早く進めたのが、当時のNTTだ。当初は、現地に即したアプリケーションを開発するR&Dセンターとしてスタートしたが、2000年代にプロフィットセンターに軸足を移し、NTTコミュニケーションズのアジア戦略と歩調を合わせるように投資を行ない、データセンターやオフィス設備を建設。こうした一連の流れの中、2008年から現地法人(NTT MSC Sdn. Bhd.)のCEOを務めているのが、今泉文利氏だ。

NTT MSC Sdn. Bhd. 今泉文利氏

 今泉氏は、初めてマレーシアに行ったときは、事前に抱いていたイメージと大きなギャップがあったと語る。「行く前は東南アジアの途上国の1つだと思っていたが、電力、通信、交通などのインフラが充実していた。ベトナムやタイではなく、シンガポールに限りなく近く、けっこう驚いた」。昔はマレー半島自体で大きな停電などもあったが、日本企業のコンサルティングなどもあり、電力設備もグリッド化され、非常に安定しているという。特にIT特区であるサイバージャヤは2つの発電所から2系統で送電されているので、万が一片系統が落ちても、すぐに切り替わる設計になっているとのこと。「すでに現地に来て5年ですが、電圧降下はともかく、停電は一度もありませんでした」(今泉氏)。

 以前、掲出したMSCに関する記事(アジア期待の星!「データセンターならマレーシア」の理由)を読んでいただければわかるが、実際マレーシアはデータセンターの立地場所として非常に優れている。電力や交通などのインフラ面での充実に加え、自然災害も少ない。政情も安定しており、法制度も整備されており、知的資産を重視する姿勢も打ち出している。

 他のアジア諸国との比較について今泉氏は、「人口の多いインドネシアは市場としてのポテンシャルが高く、タイは製造業の誘致にフォーカスしています。一方、シンガポールはIT立国としてプレミアムとしての顔を持っており、金融系の顧客は高くてもシンガポールに入ります」と語る。こうした中、マレーシアは品質と価格のバランスがとれた選択肢として、金融機関を含め多くの一般企業にアピールできるという。

 一方、課題になるのは、人材だ。今泉氏は、「今まで成長してきた国が踊り場にさしかかる“中進国の罠”と呼ばれる通り、マレーシアも他のアジア諸国と同じく高所得国に成長しつつあり、労働賃金の安さだけでの勝負は難しくなりつつあります」と語る。MSC Malaysiaのプロジェクトも着実に成果を伸ばしてきたが、よりGDPや成長率を上げるには、ICTアウトソーシングの需要に耐えうる優秀な人材を数多く排出するシステムが必要になるという。

ASEの完成で課題の通信環境は大幅に改善

 同じく、課題となることの多い通信環境に関しては、マレーシアやシンガポール、その他アジア諸国の通信事情を少し理解しておく必要がある。

 現状マレーシアでは、テレコムマレーシアを中心に、マキシスやセルコムなどのローカルキャリア、シングテルやタタ・コミュニケーションズ、そしてNTTコミュニケーションズなど外資系キャリアが入り乱れて市場を形成している。とはいえ、かつての国営通信会社であったテレコムマレーシアの市場シェアは現在も大きく、マレーシア4カ所に陸揚げされる海底ケーブルを独占していた。そのため、コストが高く、品質にも課題があった。マレーシアに拠点を置くグローバル企業はテレコムマレーシアに高いフィーを支払って国際回線を調達するか、外資系キャリアを利用してシンガポールを経由して他国に抜けるしかなかったという。

マレー半島の4カ所に陸揚げされている海底ケーブルは独占状態でした

 一方、IT立国であるシンガポールは数多くのデータセンターがあり、大手のコンテンツホルダーがピアリングを行なっている。数多くの海底ケーブルも陸揚げされており、品質も高い。そのため、タイのような成長国は陸路でマレーシアを素通りして、シンガポール国内にホストされているコンテンツにアクセスするトラフィックになるようだ。

 しかし、シンガポール沖の海域は貨物船の往来が多すぎて、海底ケーブルのアンカーカットが後を絶たない。「しかもシンガポール、マレーシア、インドネシアなどで、海上の国境線も入り組んでいるので、ケーブルが切れる場所によっては、リカバリが大変。先日は、インドネシア側で切断が起こったため、復旧まで1ヶ月かかりました」といった事情もある。

 こうした現状を鑑みると、2012年8月に運用開始したNTTコミュニケーションズのプライベートケーブルである「ASE(Asia Submarine-cable Express)」の存在はきわめて大きい。高信頼・低遅延で、総延長約7800kmを誇るASEの光海底ケーブルの完成によって、日本や他のアジア諸国との接続性がきわめて改善されたという。今泉氏は、「ASEがマレーシアに陸揚げできたおかげで安全で、遅延の少ない通信が可能になりました。マレーシア経由でASEを使いたいというシンガポールのお客様も現れています」とアピールする。来年にはAPG(Asia Pacific Gateway)というコンソーシアムケーブルも陸揚げされる予定なので、マレーシアの国際通信環境はますますよくなるという。

(次ページ、マレーシアでの顧客の2/3は実は日系企業以外)


 

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