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新データセンターの計画やクラウドサービスの拡充を披露

次のステージに進むNTT Comの「Global Cloud Vision」

2013年04月19日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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4月18日、NTTコミュニケーションズは「Global Cloud Vision」の取り組みと今後の展開について説明する発表会を行なった。NTTコミュニケーションズ代表取締役社長の有馬彰氏により、クラウドとグローバル展開に注力する同社の戦略が解説された。

クラウド化によりおおむね3割のコスト削減

 NTTコミュニケーションズの「Global Cloud Vision」は、文字通りクラウド/データセンターのグローバル展開を軸にした同社の企業向けサービス戦略。2011年10月の発表以降、おもにAPAC(アジア・太平洋地域)でのデータセンターやネットワークの構築、インフラからアプリケーションまで含めた幅広いクラウドサービスの拡充を積極的に進めてきた。主力サービスとなるクラウドに関しては、「Bizホスティング Enterprise Cloud」と「Cloud(n)」の2枚看板を用意し、顧客がグローバルで利用できるよう整備を進めている状態だ。

 発表会に登壇したNTTコミュニケーションズ代表取締役社長の有馬彰氏は、まずこうしたGlobal Cloud Vision策定の背景として、音声やネットワーク収入が年々下がってきているという事業者側の課題と、スピード経営やグローバル展開、リスク対応などの顧客側の課題があると説明。こうした課題を背景としたGlobal Cloud Visionでは、「グローバルトータルICTアウトソーシングの提供を通じて顧客の経営改革に貢献すること」を目的とし、顧客のICT環境のクラウド化を支援していく戦略になっている。

NTTコミュニケーションズ代表取締役社長 有馬彰氏

 続いて有馬氏は顧客の事例を例に、「Bizホスティング Enterprise」を中心にしたクラウド化の効果を説明。「グローバルから」、「国内から」、「全拠点で」といったさまざまなパターンでクラウド化を進めた結果、おおむね3割程度のICTコスト削減を図られているという。

データセンターは好調につき増設へ

 Global Cloud Visionでは、インフラやネットワーク、サービスなどの分野で9つの特徴を持っており、発表会ではそれぞれの現状やサービス展開が説明された。

 好調なデータセンター事業に関しては、もとより国内に展開しているものに加え、買収したイギリスのGyron、インドのNetmagic、オーストリアのFrontlineなどデータセンターも含め、現在の138拠点15.8万㎡を展開している。今後は、新統一ブランドとして「Nexcenter」を展開し、144拠点17.7万㎡にまで拡張する予定だという。

2013年4月以降に提供される新データセンター

 4月には、まず「東京第6データセンター」が竣工するほか、5月には香港で3番目のファイナンシャルデータセンター、イギリスのSlough2データセンターが開設。また、2014年にはマレーシアのサイバージャヤに4棟目のデータセンターを建設される。これは2012年4月提供開始のデータセンターが完売したことを受けたもので、低廉な価格が顧客にアピールしているようだ。さらに今後は上海やタイにおいてもデータセンターの建設を計画しているという。これらを接続する大容量・低遅延なネットワークに関しても、香港やシンガポール、マレーシア、フィリピンなどへの海底ケーブルが拡充されている。

クラウド拠点を拡大でAWSにも対抗

 クラウドサービスに関しては、仮想ネットワークを導入した「Bizホスティング Enterprise Cloud」を2013年末までに9箇所11拠点にまで拡大する。この結果、APAC地域での優位性に加え、拠点数においてもベライゾンやAmazonに比べて引けをとらない規模を実現するとのこと。特に強調されたのが、SDN(Software Defined Network)の仮想ネットワークを活用した設定/変更の自動化やグローバルでのデータバックアップ。「手間もかからないし、人手が減らせるので安くできる。発表当時も世界初を謳っていたが、現在でもほかにない」(有馬氏)というユニークなサービスだという。

クラウド拠点の展開数

 同日、Bizホスティング Enterprise Cloudにおいては大幅な機能強化が図られた。従来比で3倍高速なストレージである「Premium Plus」や仮想サーバー全体のイメージバックアップ機能が追加されたほか、Oracle DBとMicrosoft SQL Serverのライセンスの月額課金を開始する。また、セキュリティオプションとして、不正アクセスやウイルスを検知する「ネットワークプロファイリング」や未知のウイルスを検知する「リアルタイムマルウェア検知」が新たに提供される。有馬氏は、今後の計画として「ファイアウォールやロードバランサーをソフトウェア化して提供しようと進めている」と述べ、より包括的なクラウドコンポーネントの拡充を進めていくとした。

Bizホスティング Enterprise Cloudの機能拡充

 その他、発表会ではカスタマーポータル経由でのクラウドとネットワークの接続自動化、各サービスを一元的に扱える「統合カスタマーポータル」の提供、仮想ネットワークを用いたクラウドマイグレーションなど、近々に発表されるサービスの内容も明らかにされた。強みとなっているSDNやネットワーク仮想化の技術の導入に関しては、かなりスピーディに進めており、「世界初」を謳うサービスが続々と登場するようだ。有馬氏も「ネットワーク事業者のクラウドなので……」とたびたび語っていたが、ここらへんはキャリアとしての自負がうかがえた。

クラウドとネットワーク接続の自動化

世界初の新マイグレーションサービス

 有馬氏は、こうした一連の同社の取り組みに対して、日経コンピュータの「第6回クラウドランキング」やMMRIの「第1回ビジネスクラウド総合評価調査」のほか、海外の「Telecom Asia Award 2013」でアワードを獲得していることを披露した。有馬氏は、2011年840億円だったクラウド/データセンター事業の収益を、2015年には2000億円以上に高めるという目標を明らかにした。

 音声と通信と異なる収益源の確保という課題を解決すべく、クラウドとグローバル展開に先行投資を行なってきた同社だが、いよいよリターンを得る正念場にさしかかってきたようだ。

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