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スマホで始める「音楽アプリ部」 第17回

音色? 見た目? 操作性? 今アツいシンセを試す!

海外発! ちょっとマニアックなシンセアプリ5つの実力は?

2013年10月13日 12時00分更新

文● 藤村亮

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アナログシンセらしいサウンドと演奏のしやすさは抜群
NLogSynth PRO

ヴィンテージのような風格さえ漂うデザイン。青い2点スイッチが泣けてきます

 「NLogSynth PRO」はアナログシンセ晩年の名機「Sequencial Circuits Prophet-5」を彷彿させるようなウッドと無骨なメタルパネルを組み合わせた、古き良きデザインが懐かしさと風格を感じさせます。

NLogSynth PRO App
価格850円 作者tempo rubato
バージョン5.2.1 ファイル容量9.6 MB
カテゴリーミュージック 評価(4.5)
対応デバイスiPad 対応OSiOS 5.0以降

 基本プリセットは「PRO Sounds」「Keys&Pads」「7 Skies」「ARP:xy」「2.0 XTD」「Old Factory」「NLogMini」の7カテゴリーに各30ずつ、全部で210種。別途用意されたユーザープリセットに3バンク90種が保存可能です。音色は明るく派手な感じで、とても現代的な印象があります。項目ごとに無駄なくキレイにまとまったパネルデザインは秀逸。画面下部3分の2に鍵盤と基本的な機能を配置し、上部だけが切り替わっていくので、いじりたい項目にすぐアクセスできるのがとても扱いやすいです。

 今回弾いた5つのアプリの中では唯一、画面上部にも鍵盤を追加できるので、演奏面では最も使いやすく感じました。

 「Tape」と名づけられたシーケンサーは、WAVEデータとMIDIデータをそれぞれ独立して録音することが可能。トラック数は2つですが、MIDI録音を使って擬似的にサウンドのオーディション機能のように使うこともできます。

 難点はディレイ以外の、エフェクター周辺コントロールが数値として把握できないこと。目分量になり、厳密なレベルでは作り込めないときがあります。またアルペジエーターには特に重きを置いていないためか、比較的簡素でパターンも少ないです。

外部鍵盤がなくても幅広いレンジで演奏可能。録音内容も波形表示されるのがうれしいです

 4つのオシレーターと8つのフィルターから生み出される、いかにもアナログシンセらしい図太いサウンドは、他の追随を許さないNLogSynth PRO。充実したエフェクターをうまく使って、さらに個性的な音にしたいですね。フジムライチオシの音色は「Art」。キレのあるアタック音とエレキギター顔負けの迫力あるシンセリードサウンドがお気に入りです。

見た目のインパクトが大きい
Synthtronica

何とも妖しげな雰囲気がプンプンするデザイン。唯一無二とはまさにこのこと

 サイケデリックな色調と見た目に違わぬ奇妙な音色が詰め込まれていて、独特な印象を与えてくれる「Synthtronica」。

SynthTronica App
価格450円 作者Leisuresonic
バージョン1.0.3 ファイル容量217.9 MB
カテゴリーミュージック 評価(無し)
対応デバイスiPad 対応OSiOS 3.2以降

 基本プリセットは「Advanced」「Analogue」「Groove」「Sonic Stash」「Vocal」の5カテゴリーに分かれた全92種。ユーザープリセットバンクをひとつ作成できます。音色は輪郭のはっきりしており、有機的なうねりを含んだものが多いです。iPad内蔵のマイクで外部音を取り込み、その波形の動きをフィルターでトレースする「Formants」機能はとてもユニークで、人の話し声や生活音など、何気ない要素から新しいサウンドを生み出す楽しさがあります。

 個性に満ち満ちたコントロール系のデザインは、音作りに必要な要素がシンプルにまとめられています。ツマミひとつとっても大きめなので操作性も良好。「Dynamic Multitouch Filter」と名付けられたフィルターも大ぶり。かつ指を放せば元の音色に戻るので、あくまで音楽的な範囲で、極端な音色変化を楽しめます。

 設定したスケールによって、弾く音、弾かない音を2色で表示してくれるのも便利。 鍵盤のデザインも3パターンから選択でき、ソロバン球や計算機のようなデザインの鍵盤も用意されているので、とにかく遊び心が満載です。

 難点としては音色プリセットのメニューが使いづらい点と、外部MIDI入力機器が使用できないところでしょうか。込み入った演奏ではなく、フィルタリングなどに特化した、飛び道具的な使い方が向いていると思います。

鍵盤のカタチから離れたコントローラーデザインも用意。どこまでも個性的

 ThumbJamとはまた趣の異なる特殊なデザインのSynthtronica。普通には弾かないようなラインのフレーズが生まれてくるかもしれませんね。フジムライチオシの音色は「Technopolis Lost」。ヴォコーダーのようなフィルタリングが、80年代のスチームパンク的な雰囲気でお気に入りです。

ヴァーチャルアナログシンセアプリには魅力的なものが多数存在

 各メーカーともに、個性に富んだユニークなアプリばかりでした。どれも基本的な性能は高いレベルでまとまっており、音色の仕上がりも良好。個人的にはNLogSynth PROが最も好みでしたが、他の4つも代えがきかない面白さを感じるアプリたちです。各アプリが持つ多彩なプリセットからお気に入りをひとつだけ選ぶというのはかなり困難でした(笑)。

 そもそもアナログシンセ自体が器用な楽器ではなく、汎用は難しい代物でしたが、アプリとしてのヴァーチャルアナログシンセも、それぞれに尖った魅力を振りまいているようです。今後アプリケーションに見合った小型のコントローラーなどがリリースされると、さらに面白くなるのではないか、と期待しています。



藤村 亮(ふじむら りょう)

photo by Shin Kobayashi

 1981年生まれ、Ibanez製7弦ギターを手に世界を渡り歩くロックミュージシャン。2006年にバンド"AciD FLavoR"の7弦ギタリストとしてメジャーデビュー。2008年よりベルギーのインディーズレーベルと契約し、"Ryo Fujimura"としてソロ活動を開始。ヨーロッパ最大の日本文化イベント"JapanExpo"や各国のJ-Musicイベントにゲスト参加した。2012年からは活動の幅をメキシコにも広げ、3度のライブツアーを敢行。2013年4月にロックバンド"流天"を結成し、作詞作曲を担当する。2013年11月には2年半ぶりのヨーロッパツアーが決定している。

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