1980年代の中頃に、ヤマハの名シンセ・DX-7の対抗馬として登場したのが、カシオ計算機のCZシリーズ。PD(Phase Distortion)音源という、既にある波形の位相の歪みやズレを利用して異なる波形を作り出す、独創的な音源を搭載した個性豊かなシンセです。このシンセをアプリとして再現したのが、1月22日にリリースされたばかりの「CZ App for iPad(以下、CZ)」。
カシオのキーボードというと、個人的にはミニキーボードのカシオトーンやスピーカーつきのモデルなどが思い浮かんでしまうところ。ですが、国産デジタルシンセ黎明期を切り開いてきたというCZのトーンとはどんなものなのか、試してみました。
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CZ App for iPad ![]() |
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価格 | 2000円 | 作者 | CASIO COMPUTER CO., LTD. |
バージョン | 1.0.2 | ファイル容量 | 24.9 MB |
カテゴリー | ミュージック | 評価 | (無し) |
対応デバイス | iPad | 対応OS | iOS 8.0以降 |
実機に限りなく近い音の作りとプリセット数
基本画面はSYNTHモードで、画面上部が音作りに使う音源のコントロール、画面下部が24鍵(2オクターブ)のキーボードという配置になっています。
キーボードは画面右隅のボタンで24鍵と30鍵を選択可能。キーボード部分が延長されるのではなく、鍵盤の幅が狭くなるので、ピッチベンダーやモジュレーションコントローラーなど画面左端のコントロールはそのまま使えます。
プリセット音色はピアノやブラスなど全部で33種類。使い切れないほど音色数が充実した現代的なシンセと比べると物足りなさは否めませんが、PD音源の扱い方の参考にするためのサンプルとしては充分なパターン数です。
実機も基本的なプリセット音色数は多くなく、追加のメモリーパックなどで音色を増やしていたことを思い返すと、この辺りも実機の再現といえます。音の質感は、現在のサンプリング音を加工して作ったリアルな音源とはまったく異なります。楽器の音を電気的に再現しようとしていた頃の、硬めながらハイ(高音域)が自然に落ちたレトロなトーンです。
特にレトロさを感じられるのは、フルートやクラリネットなど、管楽器のブレスを再現するためにホワイトノイズを足していたり、細かいエンベロープの設定でリアリティーを演出している点。1980年代当時の空気が感じられるような雰囲気のある音色が楽しめます。
(次ページでは、「音の作り方を解説」)

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