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OpenFlow/SDNの波が来た 第5回

通信事業者ならではを追求した「グローバルクラウドビジョン」第一弾

OpenFlowを最大活用!NTT Comのグローバルクラウド始動

2012年06月12日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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6月11日、NTTコミュニケーションズはOpenFlowによるネットワーク仮想化技術を採用した新クラウドサービス「Bizホスティング Enterprise Cloud」を発表した。グローバルネットワーク「Arcstar Universal ONE」と直結し、2012年度内には全世界8箇所で展開される予定となっている。

OpenFlowをデータセンター間でも利用

 Bizホスティング Enterprise Cloudは、「通信事業者ならではのクラウドサービス」を目指すべく昨年11月に発表した「グローバルクラウドビジョン」に基づいた初の商用サービス。3月に発表された「Cloud n(クラウドエヌ)」が開発・検証用途やスモールビジネスに向けたパブリッククラウドサービスなのに対し、Bizホスティング Enterprise Cloudは名称の通り、基幹・情報システムの基盤として利用できるプライベートクラウドを前提とする。

Bizホスティング Enterprise CloudとCloud nの関係

 発表会では、NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部 ホスティング&プラットフォームサービス部門長 関 洋介氏が、グローバルクラウドビジョンの発表から半年を経たことを受けて「ようやくこの日が来た」と述べ、サービスの概要を説明した。

NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部 ホスティング&プラットフォームサービス部門長 関 洋介氏

 Bizホスティング Enterprise Cloudの最大の特徴は、サーバーだけではなく、ネットワークにおいても仮想化技術を全面的に導入した点。昨今、大きな潮流となりつつあるOpenFlowをベースに、コントローラー側からスイッチを制御することで、システム変更に迅速に対応できる。OpenFlowのスイッチ、コントローラーはNEC製品をベースにカスタマイズを加えたものを採用。また、クラウドインフラに関しては、VMwareのvCloud Directorをベースにしているという。

OpenFlowによるネットワーク仮想化を全面的に採用する

ネットワーク仮想化のメリット

 今回NTTコミュニケーションズでは、データセンター内にとどまらず、世界で初めてデータセンター間においてOpenFlowを用いた帯域制御の仕組みを導入したという。これにより「グローバルデータバックアップ」というオプションサービスにおいて、バックアップの実行の際に一時的に帯域を拡張することが可能になる。段階的に帯域を拡張でき、最大500Mbpsまでの増速を実現する。

グローバルデータバックアップにおけるネットワーク仮想化の活用

エンドユーザー向けのカスタマポータルを新開発

 また、課金単位も仮想マシン単位ではなく、コネクティビティ(インターネット/イントラネット)、ネットワークリソース(ファイアウォール/ロードバランサー)、そしてコンピュート(CPU、メモリ、ディスク)などのリソース単位になる。たとえば、仮想マシンの場合、1GHz単位のCPUで0.092円/分、1GB単位のメモリで0.073円/分。インターネット接続は10Mbpsで1.094円/分、vファイアウォールが40Mbps相当で1.021円/分となる。これらを組み合わせて、時間単位の従量制で利用することになる。月額上限料金設定が用意されており、使いすぎという問題も解消される。関氏は、「柔軟なリソース利用で、コストやデリバリ時間を短縮し、無駄を解消してもらいたい」と話す。

契約単位とデリバリ時間を極限まで最小化。月額上限料金設定も用意される

 こうした仮想サーバーの作成やリソース変更、ファイアウォールの設定、ステータス表示、グローバルデータバックアップの設定などは、新開発のカスタマポータルから行なえる。GUIはシステムのトポロジを模式化した特徴的なもので、仮想サーバーやネットワーク、ロードバランサー、ファイアウォールなど対象となる要素を選択することで、設定変更やステータス表示が行なえる、

特徴的なイメージのカスタマポータル

 マネージドサービスを中心に展開してきた同社としては、エンドユーザーにここまで踏み込んだ操作パネルを開放するのは初めてとのこと。デモを見る限り、かなり意欲的なものに仕上がっているようだ。

全8カ国で展開!グローバルで利用できる

 グローバルリーチも大きな特徴。サービスが開始される6月29日には、香港でもサービス開始。2012年12月までに米国(2カ所)、イギリス、シンガポール、2013年3月までにマレーシア、タイ、オーストラリアなど全8カ国で展開予定。拠点間はグローバルネットワーク「Arcstar Universal ONE」と直結され、グローバルで共通仕様で用意される。

サービスはグローバル共通仕様で全8カ国で展開予定

 その他、OS管理やセキュリティなどのマネージドサービス、コンサルティング、オンプレミスからのマイグレーションなど各種サービスも用意される。特にクラウド導入で懸念となるセキュリティに関しては、IDS/IPS、DDoS対策、Webアクセスセキュリティ、メールセキュリティ、アプリケーション/DBセキュリティ、仮想サーバーセキュリティ、プロファイリングなど幅広く提供される予定となっている。

 同社ではオンプレミスからクラウドでサーバーやストレージ統合を行なった場合、約40%のコスト削減効果が見込まれると試算。また、5~10日間かかっていた構成変更時のリードタイムも、セルフマネジメント化により数分で実現するという。こうした自動化により、NTTコミュニケーションズ側もコストやリードタイムの削減が図れるため、「既存のサービスよりもこちらを勧めたい」(関氏)と説明された。コモディティ製品と先進技術を巧妙にパッケージングした、キャリアならではのサービスといえよう。

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